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第4章
秘密主義
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翌日、俺はシアレパス国のムスティス公爵邸へと赴いた。三つ目のダンジョンの中を改善させる為だ。
「エリアス殿!朝早くから申し訳ない!」
「いやいや、全然問題ねぇぞ?で、他のダンジョンの調子はどうだ?」
「凄い事になっておるぞ!こんなに冒険者がいたのか?!って程に集まってきておる!しかも、今回のダンジョンはどちらも初級から、下に行く程に中級、上級へとなっておるからな。エリアス殿の施してくれた施術も良かった!ある程度元の状態を残しているから攻略のしがいがあるし、各階に休憩所も作ってくれていたしな。そこでは一定時間いると回復する効果も施してくれただろう?皆、有り難がっていたぞ!」
「そうか。まぁ、俺は冒険者の端くれとして、駆け出しの頃にあればいいな、と思っていた事をしたまでだ。あ、魔物のレベル分けはこっちでしておいたんだ。特に洞窟の方は、入口近辺に強い魔物がいてたからな。ソイツらを下層階へまとめて、弱い奴らを上層階に来させたからな。」
「そんな事をしてくれていたのか?!凄いとしか言いようがないな……!いや、本当にエリアス殿がいてくれて良かった!」
「これで近隣の街やらも繁栄するだろ?人が集まりゃ経済は動くからな。シアレパスも安泰か?」
「そうだな。しかし、今日行くダンジョンは解放する時期を考えるつもりだ。近くには村や街がないのでな。大きな森があるだけだから、そこを開拓しようと思っているのだが、そうしても問題がないかも出来れば確認して欲しいのだ。」
「分かった。あ、それとな、ちょっと聞きたい事があってな。」
「ん?なんだ?」
「ゲルヴァイン王国についてだ。」
「ゲルヴァイン王国か……隣国ではあるが、思うように交流の出来ん国でな……」
「そんな感じはするけどな。」
「出入国の規制が厳しくてな。キチンと申請すれば問題はないが、自由に出入りするのが難しい国だ。こちらから輸出してる物はあるが……その事に詳しいのは……」
「ノエリアか!」
「そうだ。今は結婚してノエリア・レイグラフ伯爵夫人となっておるがな。」
「そうだな。俺も式に呼ばれた。幸せそうだったな。」
「伯爵夫人となっても、変わらず商売をしていてな。今も影の実力者として貢献しておるぞ?」
「またノエリアにも話を聞きに行くか……」
「しかし、なぜゲルヴァイン王国の事を知りたいのだ?」
「あ、いや、俺にゲルヴァイン王国から依頼が来てるんだ。けど、俺はあの国に良い印象がないからな。まずは情報を得ようと思ったって訳だ。」
「成る程な……何度か行った事があるが、いまいちよく分からん国だ。とにかく秘密主義でな。人も何を考えているか分からんのだ。」
「まぁ、その点は問題ねぇか……」
「何がだ?」
「なんでもねぇ。ありがとな。とりあえず行ってくる。」
ムスティス公爵邸を出てから空間移動で三つ目のダンジョンまでやって来た。中を整備するのだが、その側にある森も確認する。森は魔物も少なく毒がある場所もなく、開拓しても問題なさそうだ。
ダンジョンはあまり大きくは無かったが、魔物のレベルが高いから、ここは上級者向けのダンジョンとなるだろうな。
整備も終わって、それからムスティス公爵邸へと戻る。そこにはノエリアがいた。
「エリアスさん!お久し振りです!」
「ノエリア、久し振りだな!元気だったか?!」
「もちろん!私はいつも元気よ!」
「ハハハ、相変わらずだな。ムスティス公爵、呼んでくれていたんだな。ありがとな。」
「たまたま用事もあったのだ。」
「聞いたわよ。ゲルヴァイン王国から依頼が来ているんですってね。」
「そうなんだ。で、取引してるノエリアに話しを聞きたくてな。」
「そうね、一筋縄ではいかないわ。契約に持ち込めた、と思ったら、次の瞬間に態度を変えてくる、なんて事はザラにあるのよ。あの国では裏を読みまくらないと商談は成立しないの。」
「厄介だな……」
「本当に!それと、実は……」
「なんだ?」
「私の主人が……ゲルヴァイン王国へ行ってから帰って来ないのよ……」
「え?!なんでだ?!」
「分からないわ!帰って来ないって言っても、まだ二日程だし、こういう事は前にもあった事だから然程気にして無かったんだけど……」
「なぜまたゲルヴァイン王国に行ったんだ?」
「主人のお母様がゲルヴァイン王国出身なのよ。それで比較的出入りしやすい境遇にあるんだけど、お母様のご実家で管理している土地で何か問題があったらしくって……今は主人の従兄弟が管理しているんだけど、要はその従兄弟から救援要請が来たってこと。」
「そうなのか?」
「その従兄弟が不甲斐なくてね。よく悩み相談とかに駆り出されているわ。今回もそうだと思ったんだけど……」
「それは気になるな。」
「あの、ね、もし、その依頼を受けるのなら、私の主人の様子も見てきて欲しいのよ。」
「まぁ、受けるかどうかは俺が決める事じゃねぇからな。けど、受けたら様子ぐれぇは見に行くよ。」
「ありがとう!助かるわ!」
「ノエリアには世話になったからな。」
「もう随分と前の事じゃない。でもそういうところが良いのよね。本当に惜しいわ。今でも私は貴方のファンなのよ?」
「ハハ、やっぱブレねぇな。」
「冗談じゃないのよ?貴方が良いなら、私はいつでも貴方のモノになっちゃうのに。」
「ハハハ!今、旦那が心配だって言ってた口でそれを言うのかよ!」
「もう……そうやってすぐに私を躱わすのね……そんなところもなのよね……まぁいいわ。じゃあ依頼を受けたら、また教えてくれるしら?」
「あぁ、分かった。」
ノエリアの旦那も帰って来ないか……
なんか変な感じがするな。
それからゲルヴァインの物流の事とか最近の事を話したりして、ついでに食事も一緒にしようって事になった。
ノエリアは若くしてシアレパス国の物流の殆どを取り仕切っている程の大商人だ。
そんな彼女に俺は、随分前に命を助けて貰ったという恩がある。その時にもファンだ、付き合って欲しいって何度も言われたが、俺にはアシュリーがいたから悉く断ってきてたんだけど、今日も相変わらずだったな。
色々話して食事が終わったけど、酒が入って機嫌が良くなったノエリアになかなか離してもらえなかった。困っている俺を見てムスティス公爵が間に入ってくれて、俺は何とか解放された。
今後はノエリアにあんまり飲ませないようにしよう。
帝城へ帰ってゾランに今日の報告をする。もちろんノエリアの事もだ。
「やはりゲルヴァイン王国はそんな感じなんですね。僕の方でも色々調べてはいるんですよ。もちろん前から諜報員も派遣しています。ですが、大した情報は得られない事が殆どですし、連絡が取れなくなることも多いんですよ。」
「そうか……で、どうするよ?」
「依頼を受けて、ゲルヴァイン王国に恩を売ることも考えましたが……内情が分からない国とやり取りするのはデメリットが大きいと感じます。」
「そうか?俺が国内も調査すれば良いんじゃねぇか?」
「そうかも知れませんが……」
「恩を売って友好国にする可能性が無いわけじゃないだろ?依頼を受ける前に話しをするだけってのでも良いけどな。」
「そう……ですね。では、もし良ければそうして頂けますか?今回の件に関しては、依頼を受けるのも受けないのも、全てエリアスさんにお任せします。」
「そっか。分かった。心配すんな。悪いようにはしねぇよ。」
「そんな事を心配しているのではありません。エリアスさんを心配しているんですよ。」
「俺をか?」
「エリアスさんは強い。ですが、それが全てに通用するとは限りませんから。それに、エリアスさんにはリュカがいます。大切な人がいる貴方に危険な事はさせたくありませんからね。」
「危険か……そうだな。そういう事も気にしとかねぇとな。分かったよ。けどゾランも心配性だな。」
「エリアスさん程ではありませんけどね!」
「うっせぇよ。」
俺は簡単には死なねぇ。いや、死ぬ事ができねぇ。だから心配すんなって口にしそうになってやめた。きっとそういう事じゃない。ゾランがここまで俺に悩んでいる感じを見せるのは初めてだな。だからこそ慎重にならなきゃいけない。
とりあえず話しを聞く事になった。ゾランはすぐに書状を送る手筈を整えた。
ゲルヴァイン王国……
ノエリアが言うように、一筋縄じゃいかねぇかも知んねぇな。
どんな国か、しっかり見極めねぇとな。
「エリアス殿!朝早くから申し訳ない!」
「いやいや、全然問題ねぇぞ?で、他のダンジョンの調子はどうだ?」
「凄い事になっておるぞ!こんなに冒険者がいたのか?!って程に集まってきておる!しかも、今回のダンジョンはどちらも初級から、下に行く程に中級、上級へとなっておるからな。エリアス殿の施してくれた施術も良かった!ある程度元の状態を残しているから攻略のしがいがあるし、各階に休憩所も作ってくれていたしな。そこでは一定時間いると回復する効果も施してくれただろう?皆、有り難がっていたぞ!」
「そうか。まぁ、俺は冒険者の端くれとして、駆け出しの頃にあればいいな、と思っていた事をしたまでだ。あ、魔物のレベル分けはこっちでしておいたんだ。特に洞窟の方は、入口近辺に強い魔物がいてたからな。ソイツらを下層階へまとめて、弱い奴らを上層階に来させたからな。」
「そんな事をしてくれていたのか?!凄いとしか言いようがないな……!いや、本当にエリアス殿がいてくれて良かった!」
「これで近隣の街やらも繁栄するだろ?人が集まりゃ経済は動くからな。シアレパスも安泰か?」
「そうだな。しかし、今日行くダンジョンは解放する時期を考えるつもりだ。近くには村や街がないのでな。大きな森があるだけだから、そこを開拓しようと思っているのだが、そうしても問題がないかも出来れば確認して欲しいのだ。」
「分かった。あ、それとな、ちょっと聞きたい事があってな。」
「ん?なんだ?」
「ゲルヴァイン王国についてだ。」
「ゲルヴァイン王国か……隣国ではあるが、思うように交流の出来ん国でな……」
「そんな感じはするけどな。」
「出入国の規制が厳しくてな。キチンと申請すれば問題はないが、自由に出入りするのが難しい国だ。こちらから輸出してる物はあるが……その事に詳しいのは……」
「ノエリアか!」
「そうだ。今は結婚してノエリア・レイグラフ伯爵夫人となっておるがな。」
「そうだな。俺も式に呼ばれた。幸せそうだったな。」
「伯爵夫人となっても、変わらず商売をしていてな。今も影の実力者として貢献しておるぞ?」
「またノエリアにも話を聞きに行くか……」
「しかし、なぜゲルヴァイン王国の事を知りたいのだ?」
「あ、いや、俺にゲルヴァイン王国から依頼が来てるんだ。けど、俺はあの国に良い印象がないからな。まずは情報を得ようと思ったって訳だ。」
「成る程な……何度か行った事があるが、いまいちよく分からん国だ。とにかく秘密主義でな。人も何を考えているか分からんのだ。」
「まぁ、その点は問題ねぇか……」
「何がだ?」
「なんでもねぇ。ありがとな。とりあえず行ってくる。」
ムスティス公爵邸を出てから空間移動で三つ目のダンジョンまでやって来た。中を整備するのだが、その側にある森も確認する。森は魔物も少なく毒がある場所もなく、開拓しても問題なさそうだ。
ダンジョンはあまり大きくは無かったが、魔物のレベルが高いから、ここは上級者向けのダンジョンとなるだろうな。
整備も終わって、それからムスティス公爵邸へと戻る。そこにはノエリアがいた。
「エリアスさん!お久し振りです!」
「ノエリア、久し振りだな!元気だったか?!」
「もちろん!私はいつも元気よ!」
「ハハハ、相変わらずだな。ムスティス公爵、呼んでくれていたんだな。ありがとな。」
「たまたま用事もあったのだ。」
「聞いたわよ。ゲルヴァイン王国から依頼が来ているんですってね。」
「そうなんだ。で、取引してるノエリアに話しを聞きたくてな。」
「そうね、一筋縄ではいかないわ。契約に持ち込めた、と思ったら、次の瞬間に態度を変えてくる、なんて事はザラにあるのよ。あの国では裏を読みまくらないと商談は成立しないの。」
「厄介だな……」
「本当に!それと、実は……」
「なんだ?」
「私の主人が……ゲルヴァイン王国へ行ってから帰って来ないのよ……」
「え?!なんでだ?!」
「分からないわ!帰って来ないって言っても、まだ二日程だし、こういう事は前にもあった事だから然程気にして無かったんだけど……」
「なぜまたゲルヴァイン王国に行ったんだ?」
「主人のお母様がゲルヴァイン王国出身なのよ。それで比較的出入りしやすい境遇にあるんだけど、お母様のご実家で管理している土地で何か問題があったらしくって……今は主人の従兄弟が管理しているんだけど、要はその従兄弟から救援要請が来たってこと。」
「そうなのか?」
「その従兄弟が不甲斐なくてね。よく悩み相談とかに駆り出されているわ。今回もそうだと思ったんだけど……」
「それは気になるな。」
「あの、ね、もし、その依頼を受けるのなら、私の主人の様子も見てきて欲しいのよ。」
「まぁ、受けるかどうかは俺が決める事じゃねぇからな。けど、受けたら様子ぐれぇは見に行くよ。」
「ありがとう!助かるわ!」
「ノエリアには世話になったからな。」
「もう随分と前の事じゃない。でもそういうところが良いのよね。本当に惜しいわ。今でも私は貴方のファンなのよ?」
「ハハ、やっぱブレねぇな。」
「冗談じゃないのよ?貴方が良いなら、私はいつでも貴方のモノになっちゃうのに。」
「ハハハ!今、旦那が心配だって言ってた口でそれを言うのかよ!」
「もう……そうやってすぐに私を躱わすのね……そんなところもなのよね……まぁいいわ。じゃあ依頼を受けたら、また教えてくれるしら?」
「あぁ、分かった。」
ノエリアの旦那も帰って来ないか……
なんか変な感じがするな。
それからゲルヴァインの物流の事とか最近の事を話したりして、ついでに食事も一緒にしようって事になった。
ノエリアは若くしてシアレパス国の物流の殆どを取り仕切っている程の大商人だ。
そんな彼女に俺は、随分前に命を助けて貰ったという恩がある。その時にもファンだ、付き合って欲しいって何度も言われたが、俺にはアシュリーがいたから悉く断ってきてたんだけど、今日も相変わらずだったな。
色々話して食事が終わったけど、酒が入って機嫌が良くなったノエリアになかなか離してもらえなかった。困っている俺を見てムスティス公爵が間に入ってくれて、俺は何とか解放された。
今後はノエリアにあんまり飲ませないようにしよう。
帝城へ帰ってゾランに今日の報告をする。もちろんノエリアの事もだ。
「やはりゲルヴァイン王国はそんな感じなんですね。僕の方でも色々調べてはいるんですよ。もちろん前から諜報員も派遣しています。ですが、大した情報は得られない事が殆どですし、連絡が取れなくなることも多いんですよ。」
「そうか……で、どうするよ?」
「依頼を受けて、ゲルヴァイン王国に恩を売ることも考えましたが……内情が分からない国とやり取りするのはデメリットが大きいと感じます。」
「そうか?俺が国内も調査すれば良いんじゃねぇか?」
「そうかも知れませんが……」
「恩を売って友好国にする可能性が無いわけじゃないだろ?依頼を受ける前に話しをするだけってのでも良いけどな。」
「そう……ですね。では、もし良ければそうして頂けますか?今回の件に関しては、依頼を受けるのも受けないのも、全てエリアスさんにお任せします。」
「そっか。分かった。心配すんな。悪いようにはしねぇよ。」
「そんな事を心配しているのではありません。エリアスさんを心配しているんですよ。」
「俺をか?」
「エリアスさんは強い。ですが、それが全てに通用するとは限りませんから。それに、エリアスさんにはリュカがいます。大切な人がいる貴方に危険な事はさせたくありませんからね。」
「危険か……そうだな。そういう事も気にしとかねぇとな。分かったよ。けどゾランも心配性だな。」
「エリアスさん程ではありませんけどね!」
「うっせぇよ。」
俺は簡単には死なねぇ。いや、死ぬ事ができねぇ。だから心配すんなって口にしそうになってやめた。きっとそういう事じゃない。ゾランがここまで俺に悩んでいる感じを見せるのは初めてだな。だからこそ慎重にならなきゃいけない。
とりあえず話しを聞く事になった。ゾランはすぐに書状を送る手筈を整えた。
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