黒龍の娘

レクフル

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第3章

奴隷制度

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 リュカに全快祝いをしてもらった。すっげぇ嬉しかった。

 俺の好きな料理も酒もあって、俺は終始ご機嫌だった。やっぱ嬉しいもんだな。こうやって祝って貰うってのは。
 
 リュカに貰ったプレゼントも嬉しかった。邪気を祓う御守りのピアスって言ってたな。外からの邪気だけじゃなくて、俺の邪気も祓ってくれそうだよな。

 ゾランと執事のコルネールも一緒に飲んで楽しく語り合って、つい話し込んでたら時間もかなり経ってて、遅くなってきたからその日はお開きとした。またこうやって飲めたら良いな。

 一旦家に帰って顔を出してから、再び帝城へ戻ってくる。リオの部屋で眠っているリュカを抱き上げて、ミーシャにも静かに礼を言って自室に戻る。

 ベッドに一緒に入って、リュカを抱きよせる。子供って、マジでこんなに可愛いんだな。分かってたつもりでいてたけど、こうしてると実感する。リュカの為ならなんだって出来る。もう絶対に離さねぇ。必ずリュカを幸せにしてやる。何度もそうやって思ってきたけれど、またそうやって再確認してリュカを抱きしめる。

 そんな事を思いながら眠りについた。

 

 それから次の日も、また次の日も、俺は裏組織を撲滅すべく動いていく。まずはアジトを殲滅していく。前にしたように、雷魔法で感電させてから取り押さえるとどちらにも被害が及ばない。これにゾランは喜んで、「今後はこれでお願いします!」って言われてしまった。

 捕らえられている人達も助けて、感情を読み取り忘却させていく。この一連の作業にも段々慣れてきた。最近はずっとこんな感じで仕事をしている。

 ってか、どんだけ人を拐ってきてんだよ?!

 それだけ需要があるって事なのか?

 そう言えば取引先は主にシアレパス国だって言ってたな。そろそろ調べないといけねぇよな。

 今日も仕事が終わってゾランに報告しに行く。


「あ、エリアスさん、今日もお疲れ様でした!」

「マジで疲れる……感情を読むのは精神的にキツイ……」


 言ってからソファーにドカッて座って、背もたれに頭を預ける。マジで頭ン中がどうにかなりそうだ。


「本当にありがとうございます。これでかなり助かっているんです。」

「まぁ、要領が分かってきたから、全部読まなくても掻い摘んで情報を見れるようになったから、これでもかなり楽にはなったけどな。」

「そうですか、それは良かったです!しかし、これだけ多くの人数を収監したのは初めてです。今、牢獄は満員状態ですよ。」

「どんだけ蔓延ってんだって感じだよな。量刑が軽い奴は俺が更正させようか?」

「本当ですか?!」

「あぁ。光魔法で浄化させると悪しき思考が無くなって善良な人間になるぜ?」

「それは助かります!ありがとうございます!僕も光魔法は使えますが、そこまで高度なのは使えませんから助かります!」

「まぁ、更正させた後どうするかは裁判やらで決めてくれりゃあ良いし、あ、裁判が終わってから更正させるか?」

「それは此方で決めます。浄化して欲しい時はお声がけさせて頂きますね。」

「あぁ。で、そろそろ取引先の事を調べてぇんだけど……」

「シアレパス国ですよね。実は今日、クレメンツ公爵とお会いさせて頂いたんです。」

「そうなのか?!」

「はい。シアレパス国で人身売買がされている件について話したんですが、クレメンツ公爵は全く知らない情報だったようで驚かれていました。」

「あれだけ情報網を持ってる人なのに知らなかったんだな……」

「えぇ。北側を統治しているのはカータレット侯爵です。聞くと、クレメンツ公爵と仲があまり良くないようでして……」

「仲が良くないって事は、奴隷制度に賛成派とかなのか?」

「よくお分かりですね!そうなんです。シアレパス国は我が帝国と友好を築けてはいますが、未だ同盟を結べずにいる状態です。それは王族が政治に関与していないからで、全てを統率出来ていないというのが現状ですからね。各土地を統治している貴族が領地での法律を実行していいて、統治する貴族によって他国かと思える程の違いがあります。」

「そう、だな……それでもムスティス公爵は同盟を結んでいる貴族も多いし、幅広く実権を握ってるぞ?」

「そうなんですが、それでも全ての統率は難しいんでしょうね。カータレット侯爵の領地では奴隷制度は普通に存在しますし、扱いも酷いようです。」

「そうなのか……」

「クレメンツ公爵の領地や同盟を結んでいる貴族の領地では、奴隷制度は撤廃しているようですが、同じ国でこれ程の差があるんですよ。」

「マルティノア教国を思い出すな……」

「え?」

「あ、いや……俺が育った孤児院があった国な。今は教国じゃなくなったけど、あの国も酷かったからな。そんな国がまだ存在すんだな……」

「シアレパス国の北側にある国、ゲルヴァイン王国も奴隷制度がありますが、カータレット侯爵はその仲介をしているのではないかと推測出来ます。」

「そうなのか?!」

「確証はありませんけどね。ゲルヴァイン王国は獣人族が比較的に多いのですが、獣人と言うことで差別をされているんです。ですが、獣人の村へ行くと人間の奴隷が多いのも事実です。」

「獣人が腹いせに人間を奴隷にしてるって訳か?」

「それもあるかも知れません。とにかく、奴隷制度が普通にある国なので、人身売買が違法では無いんですよ。」

「違法じゃねぇってのはやりにくいな……」

「はい。属国や同盟国ではありませんしね。」

「まぁ、こっちから違法に拐われたって事で取り返しに行くには問題ねぇだろ。」

「そうですね。ですがそれを証明できなければいけないんですよ。」

「自国の奴隷だって言われればそれまでって事か……」

「奴隷制度のない国の者と証明できる状態で、取引の現場を抑える事が出来ると良いのですが……」

「それなら俺が操った奴等にさせれば……あ、でもそうなりゃ奴隷も用意しねぇとダメなのか……」

「いや……その手は使えます!まだ全てのアジトは撲滅出来ていませんから、そこに潜入させればいいのでは?!」

「そう、か!俺が操れてんのはその仲間だからな!怪しまれねぇで潜入できる!」

「今、他の仲間とは連絡が取れなくなっている状態なので、あちらも困っていると思います!逃走資金も必要ですし、出来るだけ早くに捕らえた人達を売り捌きたいと思っている筈です!」

「だな!」


 奴隷制度の残る国……

 人の尊厳をこれでもかという程に奪い、踏みにじり、虐げる。
 何も悪いことはしてねぇ。けれど物でも扱うように甚振いたぶられ、大人しく言うことを聞いていても、弄ぶようになぶられる。

 リュカが言う通り、俺たちは皆同じ人間なんだ。それを、そんなふうに扱う事自体が間違っている。問題の根本を正す事は出来ねぇかも知れないけれど、少しでも犠牲になる人を助けてやりたい。

 もう誰にも、あんな悲しくて悔しくて虚しい思いはして欲しくねぇからな。

 シアレパス国……

 思ったよりも厄介な国かも知んねぇな。





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