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第3章
震える手
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地下へと続く階段を下りていく。
長い。
ずっとずっと階段が続く。
こんなに下へと続いてるの?
……ううん……違う……これは何か術が掛けられてある……家の外にもそうされてあったから、同じように惑わせる術を掛けてあるんだろう。
この場所が分からないように、かなり慎重に隠してるんだな。手慣れた感じも見てとれて、この場所は長く使われているんだと予測が出来る。
長い階段を下りて行って、それからまた長く暗い廊下をずっと歩く。周りは石で出来た通路のようで、あの洞窟を思い出してゾクリとする。
暫く立ち止まる事なく歩き続ける。薄暗い廊下には等間隔に魔道具と思われる灯りが点いてあって、けれど音は何も聞こえなくて、自分達の足音と啜り泣く声が聞こえるのみだった。
やっと先に灯りが溢れるように足元を照らす。灯りの元まで行くと、その先には何人もの人がいた。
思わず息を飲んで立ち止まる……
目の前には私達以外にも子供がいて、檻に入れられて泣いていた。
けどそれよりも気になったのは、首輪を付けられて、動物のように四つん這いでいる、全裸で土汚れにまみれてボロボロな状態の女の人が何人も……
なに……
なにこれ……
なんでこんな……
知らずに涙が溢れていた。女の人の感情がビリビリ伝わってくる。
帰りたい 助けて 死にたい 殺したい 助けて 殺して 会いたい 助けて 戻りたい 戻れない 会えない 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて
頭の中にそんな感情がいくつも入り込んできて、私の全てがその思考に占領されていく……
ダメだ!怖くなって動けなくなる……!こんな感情に飲まれてはいけないっ!
震える胸に手をやって、何とか自分を保とうとする……!
すると先頭を歩いていた男が、そこにいた女の人を「邪魔だ」と言って脚で思いっきり頭を蹴った。女の人は勢いで後ろに倒れて転げていくけど、首輪に付いた鎖で引き止められて、それが首を締めるような感じになって咳き込んでしまう。
咳をした時に唾が男の靴に飛び散ってしまって、怒った男は「汚ったねぇなぁ!」って言いながら、またその女の人の腹を思いっきり蹴った。
女の人は咳をしながら口から血を吐き出す。
酷い……!
酷いよ!
エリアスは言ってた!女の人は男の人より体も力も弱いから、優しくしてやんなきゃダメなんだって!それは子供もそうだし、自分より弱い者は守る存在だって、それが男の役目だって、そう言ってた!なのに、なんでこんな事をするの?!可哀想とか思わないの?!
有り得ない!有り得ないよっ!
恐怖よりも、段々と怒りの方が勝ってくる……
さっき恐怖で震えてたこの手は、今は怒りでワナワナと震えている。許せない!同じ人間同士なのに、なんでこんな酷い事ができるの?!
こんな光景が許せなくて、その場で立ち止まってしまった私を、男が上から髪を鷲掴みにする。
「ボサッとするな!」
「おい!乱暴に扱うな!ソイツは高く売れるんだ!これ以上怪我を増やすな!」
「分かったよ……おいお前!早くこっちへ来い!」
男は髪を離して、私の手首を掴む。それから引き摺るようにして奥の方へと連れていく。そこには十人程の男がいて、檻に入れられた裸の女の人も数人いて、外にも女の人が……
なに、してるの……?
女の人は泣いてるのに、男は笑いながら……
なに……なんで……そんなこと……!
「ハハハ!今日は大量だな!」
「平和ボケしてる子供は楽で良い!仕事がやり易くって助かるぜ!」
「女もキレイどころは売るけどよ、そうじゃねぇのは俺達で楽しめばいいしな。」
「さっきの女!俺に唾つけたんだぜ?!アイツもういらねぇよ!代わりもいっぱいいるしよ、殺そうぜ!」
「そうだな!けど俺はやっぱ幼女が良いなぁ。一人俺にくんねぇか?」
「このロリコンが!けどまぁ、こんだけいるんなら一人くらい良いだろ。キレイなのはダメだぞ?」
「分かってるって!俺、コイツにするわ!」
男が胸ぐらを掴んで引き寄せたのは、私が助けようとした子供……!なに?!何するの?!
泣きながら逃げようとするその子の頬を殴り付けて、下卑た笑い顔をする男……
もうダメだ!我慢とか出来ない!
『エリアス!エリアスっ!助けてっ!!エリアスっ!!』
ピンクの石をこれでもかって位に強く握りしめて、必死でエリアスに訴える……!
けれどエリアスの声が聞こえない……
エリアス!お願い!気づいて!エリアスっ!
ボロボロ涙が溢れて、目の前が涙で霞んで見えなくなって、けれど霞んで見えた景色が歪みはじめて……
空間が歪んで、見えたのはエリアスと兵達の姿……!
「エリアスっ!」
「リュカ、待たせた……ってなんだ?!怪我してんじゃねぇか?!聞いてねぇぞ!」
「大丈夫っ!それよりお願いっ!!」
「……っ!分かったよ!」
「なんだ?!いきなり現れたぞ?!」
「逃げろっ!」
「いや、コイツらを人質に……!」
男達がエリアスに剣を向けたり、襲いかかろうとしたところで、突然バタバタと倒れていく。雷魔法を放ったんだ!やっぱりエリアスは凄い!
「なんだコイツ……!何をしたっ?!」
「お前らごときが俺のリュカを傷つけるとか有り得ねぇだろ!」
「待てっ!俺らがこういう事を想定していないと思ってるのか?!」
「そうだ!ここにはあちこちに爆薬を仕込んでいる!ここを火の海にすんのは容易いんだぞ?!」
「へぇ?」
「死にたくなけりゃ、大人しく言うこと聞けよ?ここにいる女子供を助けたいんだろ?」
「どこまでも陳腐な奴等だな。お前等はよ。」
「エリアス!ばくやくって?!」
「ハハハ、リュカ、心配すんな。んなもん、どうにでも出来る。」
「大ボラ吹くんじゃねぇよ!」
「おい!今のうちに逃げるぞっ!」
「エリアス!」
「安心しろリュカ。俺があんな奴等逃がす訳ねぇだろ?」
「エリアス様!簡易転送陣の配置が完了致しました!」
「あぁ。じゃあ被害者の保護を頼む。あとは全て俺に任せてくれ。」
「お一人で大丈夫なのでしょうか?!」
「悪いけど、お前達に分けてあげられねぇんだよ。コイツ等全員ノシたくれぇじゃ俺の気が収まる事はねぇけどな!」
「はっ!はいっ!」
エリアスが凄く怒ってる!こんなふうに怒ってる姿を見たことが無かったからビックリした……!
兵達が次々と転送陣から出てきて、捕らえられた人達を解放していく。
エリアスは逃げていく男達を追うこともせず、私の頭に手をやって回復魔法で治癒させた。
それから私を見て、ニッて笑って私を兵に託して、その場から歪みを作って消えて行った。
解放された人達と一緒に、兵達は私を転送陣へと連れて行く。
転送陣が眩しく光って、その眩しさに目をギュッて閉じて、次に目を開けるとそこは帝城の近くにある騎士舎の訓練場だった。
そこにゾランとラリサ王妃、それにウルと金髪の女の人がいた。医療用の簡易テントが設置されてあって、そこに皆一旦入った。
怪我をした人達を回復魔法が使える人達が施していき、治癒させていく。
子供達は安心からか、恐怖心がまだ抜けないのか、殆どの子達が泣いていた。
でも良かった。助かった……
私もホッとして胸を撫で下ろしていると、ゾランが来て、私の頭を優しく撫でた。
「リュカ、よく頑張ったね。」
「ゾラン……」
ゾランが優しく微笑むから、それを見て私は大声で泣いちゃったんだ……
長い。
ずっとずっと階段が続く。
こんなに下へと続いてるの?
……ううん……違う……これは何か術が掛けられてある……家の外にもそうされてあったから、同じように惑わせる術を掛けてあるんだろう。
この場所が分からないように、かなり慎重に隠してるんだな。手慣れた感じも見てとれて、この場所は長く使われているんだと予測が出来る。
長い階段を下りて行って、それからまた長く暗い廊下をずっと歩く。周りは石で出来た通路のようで、あの洞窟を思い出してゾクリとする。
暫く立ち止まる事なく歩き続ける。薄暗い廊下には等間隔に魔道具と思われる灯りが点いてあって、けれど音は何も聞こえなくて、自分達の足音と啜り泣く声が聞こえるのみだった。
やっと先に灯りが溢れるように足元を照らす。灯りの元まで行くと、その先には何人もの人がいた。
思わず息を飲んで立ち止まる……
目の前には私達以外にも子供がいて、檻に入れられて泣いていた。
けどそれよりも気になったのは、首輪を付けられて、動物のように四つん這いでいる、全裸で土汚れにまみれてボロボロな状態の女の人が何人も……
なに……
なにこれ……
なんでこんな……
知らずに涙が溢れていた。女の人の感情がビリビリ伝わってくる。
帰りたい 助けて 死にたい 殺したい 助けて 殺して 会いたい 助けて 戻りたい 戻れない 会えない 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて
頭の中にそんな感情がいくつも入り込んできて、私の全てがその思考に占領されていく……
ダメだ!怖くなって動けなくなる……!こんな感情に飲まれてはいけないっ!
震える胸に手をやって、何とか自分を保とうとする……!
すると先頭を歩いていた男が、そこにいた女の人を「邪魔だ」と言って脚で思いっきり頭を蹴った。女の人は勢いで後ろに倒れて転げていくけど、首輪に付いた鎖で引き止められて、それが首を締めるような感じになって咳き込んでしまう。
咳をした時に唾が男の靴に飛び散ってしまって、怒った男は「汚ったねぇなぁ!」って言いながら、またその女の人の腹を思いっきり蹴った。
女の人は咳をしながら口から血を吐き出す。
酷い……!
酷いよ!
エリアスは言ってた!女の人は男の人より体も力も弱いから、優しくしてやんなきゃダメなんだって!それは子供もそうだし、自分より弱い者は守る存在だって、それが男の役目だって、そう言ってた!なのに、なんでこんな事をするの?!可哀想とか思わないの?!
有り得ない!有り得ないよっ!
恐怖よりも、段々と怒りの方が勝ってくる……
さっき恐怖で震えてたこの手は、今は怒りでワナワナと震えている。許せない!同じ人間同士なのに、なんでこんな酷い事ができるの?!
こんな光景が許せなくて、その場で立ち止まってしまった私を、男が上から髪を鷲掴みにする。
「ボサッとするな!」
「おい!乱暴に扱うな!ソイツは高く売れるんだ!これ以上怪我を増やすな!」
「分かったよ……おいお前!早くこっちへ来い!」
男は髪を離して、私の手首を掴む。それから引き摺るようにして奥の方へと連れていく。そこには十人程の男がいて、檻に入れられた裸の女の人も数人いて、外にも女の人が……
なに、してるの……?
女の人は泣いてるのに、男は笑いながら……
なに……なんで……そんなこと……!
「ハハハ!今日は大量だな!」
「平和ボケしてる子供は楽で良い!仕事がやり易くって助かるぜ!」
「女もキレイどころは売るけどよ、そうじゃねぇのは俺達で楽しめばいいしな。」
「さっきの女!俺に唾つけたんだぜ?!アイツもういらねぇよ!代わりもいっぱいいるしよ、殺そうぜ!」
「そうだな!けど俺はやっぱ幼女が良いなぁ。一人俺にくんねぇか?」
「このロリコンが!けどまぁ、こんだけいるんなら一人くらい良いだろ。キレイなのはダメだぞ?」
「分かってるって!俺、コイツにするわ!」
男が胸ぐらを掴んで引き寄せたのは、私が助けようとした子供……!なに?!何するの?!
泣きながら逃げようとするその子の頬を殴り付けて、下卑た笑い顔をする男……
もうダメだ!我慢とか出来ない!
『エリアス!エリアスっ!助けてっ!!エリアスっ!!』
ピンクの石をこれでもかって位に強く握りしめて、必死でエリアスに訴える……!
けれどエリアスの声が聞こえない……
エリアス!お願い!気づいて!エリアスっ!
ボロボロ涙が溢れて、目の前が涙で霞んで見えなくなって、けれど霞んで見えた景色が歪みはじめて……
空間が歪んで、見えたのはエリアスと兵達の姿……!
「エリアスっ!」
「リュカ、待たせた……ってなんだ?!怪我してんじゃねぇか?!聞いてねぇぞ!」
「大丈夫っ!それよりお願いっ!!」
「……っ!分かったよ!」
「なんだ?!いきなり現れたぞ?!」
「逃げろっ!」
「いや、コイツらを人質に……!」
男達がエリアスに剣を向けたり、襲いかかろうとしたところで、突然バタバタと倒れていく。雷魔法を放ったんだ!やっぱりエリアスは凄い!
「なんだコイツ……!何をしたっ?!」
「お前らごときが俺のリュカを傷つけるとか有り得ねぇだろ!」
「待てっ!俺らがこういう事を想定していないと思ってるのか?!」
「そうだ!ここにはあちこちに爆薬を仕込んでいる!ここを火の海にすんのは容易いんだぞ?!」
「へぇ?」
「死にたくなけりゃ、大人しく言うこと聞けよ?ここにいる女子供を助けたいんだろ?」
「どこまでも陳腐な奴等だな。お前等はよ。」
「エリアス!ばくやくって?!」
「ハハハ、リュカ、心配すんな。んなもん、どうにでも出来る。」
「大ボラ吹くんじゃねぇよ!」
「おい!今のうちに逃げるぞっ!」
「エリアス!」
「安心しろリュカ。俺があんな奴等逃がす訳ねぇだろ?」
「エリアス様!簡易転送陣の配置が完了致しました!」
「あぁ。じゃあ被害者の保護を頼む。あとは全て俺に任せてくれ。」
「お一人で大丈夫なのでしょうか?!」
「悪いけど、お前達に分けてあげられねぇんだよ。コイツ等全員ノシたくれぇじゃ俺の気が収まる事はねぇけどな!」
「はっ!はいっ!」
エリアスが凄く怒ってる!こんなふうに怒ってる姿を見たことが無かったからビックリした……!
兵達が次々と転送陣から出てきて、捕らえられた人達を解放していく。
エリアスは逃げていく男達を追うこともせず、私の頭に手をやって回復魔法で治癒させた。
それから私を見て、ニッて笑って私を兵に託して、その場から歪みを作って消えて行った。
解放された人達と一緒に、兵達は私を転送陣へと連れて行く。
転送陣が眩しく光って、その眩しさに目をギュッて閉じて、次に目を開けるとそこは帝城の近くにある騎士舎の訓練場だった。
そこにゾランとラリサ王妃、それにウルと金髪の女の人がいた。医療用の簡易テントが設置されてあって、そこに皆一旦入った。
怪我をした人達を回復魔法が使える人達が施していき、治癒させていく。
子供達は安心からか、恐怖心がまだ抜けないのか、殆どの子達が泣いていた。
でも良かった。助かった……
私もホッとして胸を撫で下ろしていると、ゾランが来て、私の頭を優しく撫でた。
「リュカ、よく頑張ったね。」
「ゾラン……」
ゾランが優しく微笑むから、それを見て私は大声で泣いちゃったんだ……
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