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亡国の残光
転換点 その2
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クラッススの死後には、生前のクラッススが予見していた通り、三頭政治は完全に崩壊。
ローマ国はカエサルとポンペイウスの二陣営に別れ、国の支配権を巡る内乱へと発展した。
だが、その時にはスパルタクスは何も動かなかった。
スパルタクスが取り引きしたのはあくまでクラッススだけであり、カエサルにもポンペイウスにも、何ら加勢する理由はなかったからだ。
クラッススがスパルタクスたちを匿っている事実を、最小限の人間しか知らなかったというのもあるが。
内乱はカエサルがポンペイウスを圧倒し、エジプラット王国へと逃亡したポンペイウスをカエサルが追撃に出たため、ローマ国内は一時的に静けさを取り戻した。
もはや次代のローマ国を統べるのはカエサルに決まりと目されていた時、ローマ国の元老院は疑問を抱いた。
カエサルにローマ国の将来を託すのは本当に適任なのか、と。
軍人としても政治家としても優れていたカエサルだったが、同時に問題も多い人物であったのは周知の事実だった。
これまではクラッスス、ポンペイウスとともに三頭政治を執りしきっていたが、カエサルが頭目となり、ローマ国の政治体制を掌握したらどうなるのか。
それは元老院の人間たちでは到底想像できなかったが、危機感だけは共通していた。
その危機感が、やがてはカエサルを排除しようという思考へと発展していった。
元老院派の一人、ブルータスは打倒カエサルを完璧なものにするため、対抗できるだけの戦力をローマ国の隅々から掻き集めようとした。
途中ブルータスは、元はクラッススに仕えていたという者から、驚くべき情報を入手した。
ローマ国にさんざん土を付けた反乱軍の指導者、スパルタクスが生きているという話を。
「エダークスの曽祖父、ブルータスはクラッススの息のかかった者を辿り、ついにはスパルタクスと反乱軍の生き残りたちが暮らす辺境の土地にやって来たのです。そして再び取り引きを……いえ、脅迫してきました。『打倒カエサルに協力しなければ、反乱軍の集落を全滅させる』と。集落ではすでに新しい家族を持った者たちも多かった。逆らって女子供まで巻き込めば、これまでの全てが水の泡になる。スパルタクス一世は、カエサル暗殺に協力せざるをえませんでした」
数年後、カエサルはポンペイウスとの戦いに決着をつけ、ローマ国へと凱旋した。
そして戦勝祝賀会の後、元老院から贈呈したい品があると呼び出されたが、これがカエサル最大の不覚だった。
元老院派が集めた精鋭たちがカエサルを囲み、槍や剣を向けてきた。
その中に、信頼していたはずの知己を見つけ、カエサルはこう言い残して没した。
『ブルータス、お前もか』
ローマ国はカエサルとポンペイウスの二陣営に別れ、国の支配権を巡る内乱へと発展した。
だが、その時にはスパルタクスは何も動かなかった。
スパルタクスが取り引きしたのはあくまでクラッススだけであり、カエサルにもポンペイウスにも、何ら加勢する理由はなかったからだ。
クラッススがスパルタクスたちを匿っている事実を、最小限の人間しか知らなかったというのもあるが。
内乱はカエサルがポンペイウスを圧倒し、エジプラット王国へと逃亡したポンペイウスをカエサルが追撃に出たため、ローマ国内は一時的に静けさを取り戻した。
もはや次代のローマ国を統べるのはカエサルに決まりと目されていた時、ローマ国の元老院は疑問を抱いた。
カエサルにローマ国の将来を託すのは本当に適任なのか、と。
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その危機感が、やがてはカエサルを排除しようという思考へと発展していった。
元老院派の一人、ブルータスは打倒カエサルを完璧なものにするため、対抗できるだけの戦力をローマ国の隅々から掻き集めようとした。
途中ブルータスは、元はクラッススに仕えていたという者から、驚くべき情報を入手した。
ローマ国にさんざん土を付けた反乱軍の指導者、スパルタクスが生きているという話を。
「エダークスの曽祖父、ブルータスはクラッススの息のかかった者を辿り、ついにはスパルタクスと反乱軍の生き残りたちが暮らす辺境の土地にやって来たのです。そして再び取り引きを……いえ、脅迫してきました。『打倒カエサルに協力しなければ、反乱軍の集落を全滅させる』と。集落ではすでに新しい家族を持った者たちも多かった。逆らって女子供まで巻き込めば、これまでの全てが水の泡になる。スパルタクス一世は、カエサル暗殺に協力せざるをえませんでした」
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そして戦勝祝賀会の後、元老院から贈呈したい品があると呼び出されたが、これがカエサル最大の不覚だった。
元老院派が集めた精鋭たちがカエサルを囲み、槍や剣を向けてきた。
その中に、信頼していたはずの知己を見つけ、カエサルはこう言い残して没した。
『ブルータス、お前もか』
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