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レバノン杉騒動
ウルク国到着 その3
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「えっ!?」
扉をくぐって壁の中に入った勇男は、そこに拡がる光景に目を丸くした。
「えええええ~!」
思わず叫んでしまう勇男。
それもそのはず。壁の中に築かれていた街並みは、勇男にも既視感のあるビル郡だったのだ。
もちろん現代地球のビルとは材質や造形は違っている。
石に粘土に木材、あとはコンクリートに近いものが使われているように見える。
高層ビルとはいえないものの、六、七階立てのテナントビルくらいの建物がそこかしこにあり、道も整備され、人々は普通に往来し、ビルに出たり入ったりしていた。
「えっ!? えっ!? 何だコレ!?」
「へぇ~、これが行商人の言ってたウルク国の街並みかぁ。確かにミケナイ国よりずっと進んでるな」
「ど、どういうこと!? エーラ……」
動揺している勇男とは逆に、エーラは街並みを見渡して感心していた。
「ウルク国はこのデッカい壁を作って、どんな敵が攻めてきても守れるようにしたんだけど、代わりに壁の外に土地を拡げるのが難しくなったらしくってさ。だからああやって何層もある高い建物が主流になったんだと」
「そーそー。みんなが困ってたら『聖塔と同じようにしたらいいんじゃない?』って言ったらこうなったんだー」
「へぇ~」
エーラの説明とビーの補足に、勇男は納得の声を上げた。が、同時に小骨のようなちょっとした疑問が脳裏に浮かんだ。
(いま、『言ったらこうなった』ってビーは言わなかったか? ビーが発案者なのか?)
「さぁ! さぁ! 早く行こ! 小グガルアンナ届けたら美味しいお店紹介するから!」
小グガルアンナを掲げたビーが、待ちきれないといった感じでその場で飛び跳ねる。
「そういえば獲ってきた小グガルアンナ、どこに届けるんだ?」
「聖塔だよ。ほら、あそこ」
ビーが向いた先を勇男も見つめる。街の中心部、ビル郡の中でも一際高くそびえる建物があった。
「あそこに小グガルアンナ届けるんだー。あっ、通りは荷馬車とかも多いから気をつけてね」
ビーは足取りも軽やかに、小グガルアンナを担いで往来に歩いていった。
勇男とエーラも、人通りに注意しながらその後を追っていった。
「よぉ、ビー。来てたのか」
「こんにちはー!」
「あっ、ビー。後で店に寄っとくれ。昨日の売れ残りの果物包んどくから」
「ありがとー!」
「ビー、今度スパルターク国から入ってくる荷物がなかなか重そうなんだ。手伝ってくれないか? 運び賃はずむからよ」
「わかったー!」
街の中心部へ向かう中、ビーは道行く様々な人々から声をかけられていた。誰もがビーに対して好意的で、むしろ人気者といっても差し支えないほどだ。
「よぉ、兄ちゃんに姉ちゃん! ビーの知り合いかい?」
ウルク国でのビーの人気に驚いていたところ、勇男は軒先の店の男に声をかけられた。
「へ? ああ、その、さっき知り合ったばかりっていうか――――――」
「二人ともビーの友達だよ、ファジバおじちゃん!」
道を戻ってきたビーが、店の男に嬉しそうに言う。
「そうかい、珍しいな。ビーが外で友達つくってくるたぁ。ほれ、コレ持ってけ」
ファジバから陶製の瓶を三本差し出され、ビーは手が塞がっているので、勇男が二本、エーラが一本を受け取った。
「今日はイチジクのジュースの売れ行きが良くねぇからな。腐らすのもなんだから飲んでくれよ」
「わ~! ありがと、ファジバおじちゃん!」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとな、おっちゃん」
「いいってことよ」
ファジバにお礼を言った三人は、再び往来をかき分けて進んでいく。
それからもビーは街の人たちに声をかけられ、その誰もがビーを慕っているように見えた。
だからこそ勇男は余計に疑問が浮かんでくる。
ビーの話していたことが本当なら、ビーはウルク国、この壁の中には住んでいないということになる。
これだけ街の人たちに認知され、親しまれているはずなのに、『外で暮らしている』とはどういう事情なのだろうか。
「着いたよ! イサオ! エーラ!」
考え事をしている間に、どうやら街の中心、聖塔に着いていたらしい。
「ここが聖塔だよ」
見上げるビーに倣って、勇男とエーラもまた目の前に現れた巨大な建築物を見上げた。
扉をくぐって壁の中に入った勇男は、そこに拡がる光景に目を丸くした。
「えええええ~!」
思わず叫んでしまう勇男。
それもそのはず。壁の中に築かれていた街並みは、勇男にも既視感のあるビル郡だったのだ。
もちろん現代地球のビルとは材質や造形は違っている。
石に粘土に木材、あとはコンクリートに近いものが使われているように見える。
高層ビルとはいえないものの、六、七階立てのテナントビルくらいの建物がそこかしこにあり、道も整備され、人々は普通に往来し、ビルに出たり入ったりしていた。
「えっ!? えっ!? 何だコレ!?」
「へぇ~、これが行商人の言ってたウルク国の街並みかぁ。確かにミケナイ国よりずっと進んでるな」
「ど、どういうこと!? エーラ……」
動揺している勇男とは逆に、エーラは街並みを見渡して感心していた。
「ウルク国はこのデッカい壁を作って、どんな敵が攻めてきても守れるようにしたんだけど、代わりに壁の外に土地を拡げるのが難しくなったらしくってさ。だからああやって何層もある高い建物が主流になったんだと」
「そーそー。みんなが困ってたら『聖塔と同じようにしたらいいんじゃない?』って言ったらこうなったんだー」
「へぇ~」
エーラの説明とビーの補足に、勇男は納得の声を上げた。が、同時に小骨のようなちょっとした疑問が脳裏に浮かんだ。
(いま、『言ったらこうなった』ってビーは言わなかったか? ビーが発案者なのか?)
「さぁ! さぁ! 早く行こ! 小グガルアンナ届けたら美味しいお店紹介するから!」
小グガルアンナを掲げたビーが、待ちきれないといった感じでその場で飛び跳ねる。
「そういえば獲ってきた小グガルアンナ、どこに届けるんだ?」
「聖塔だよ。ほら、あそこ」
ビーが向いた先を勇男も見つめる。街の中心部、ビル郡の中でも一際高くそびえる建物があった。
「あそこに小グガルアンナ届けるんだー。あっ、通りは荷馬車とかも多いから気をつけてね」
ビーは足取りも軽やかに、小グガルアンナを担いで往来に歩いていった。
勇男とエーラも、人通りに注意しながらその後を追っていった。
「よぉ、ビー。来てたのか」
「こんにちはー!」
「あっ、ビー。後で店に寄っとくれ。昨日の売れ残りの果物包んどくから」
「ありがとー!」
「ビー、今度スパルターク国から入ってくる荷物がなかなか重そうなんだ。手伝ってくれないか? 運び賃はずむからよ」
「わかったー!」
街の中心部へ向かう中、ビーは道行く様々な人々から声をかけられていた。誰もがビーに対して好意的で、むしろ人気者といっても差し支えないほどだ。
「よぉ、兄ちゃんに姉ちゃん! ビーの知り合いかい?」
ウルク国でのビーの人気に驚いていたところ、勇男は軒先の店の男に声をかけられた。
「へ? ああ、その、さっき知り合ったばかりっていうか――――――」
「二人ともビーの友達だよ、ファジバおじちゃん!」
道を戻ってきたビーが、店の男に嬉しそうに言う。
「そうかい、珍しいな。ビーが外で友達つくってくるたぁ。ほれ、コレ持ってけ」
ファジバから陶製の瓶を三本差し出され、ビーは手が塞がっているので、勇男が二本、エーラが一本を受け取った。
「今日はイチジクのジュースの売れ行きが良くねぇからな。腐らすのもなんだから飲んでくれよ」
「わ~! ありがと、ファジバおじちゃん!」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとな、おっちゃん」
「いいってことよ」
ファジバにお礼を言った三人は、再び往来をかき分けて進んでいく。
それからもビーは街の人たちに声をかけられ、その誰もがビーを慕っているように見えた。
だからこそ勇男は余計に疑問が浮かんでくる。
ビーの話していたことが本当なら、ビーはウルク国、この壁の中には住んでいないということになる。
これだけ街の人たちに認知され、親しまれているはずなのに、『外で暮らしている』とはどういう事情なのだろうか。
「着いたよ! イサオ! エーラ!」
考え事をしている間に、どうやら街の中心、聖塔に着いていたらしい。
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