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竜の恩讐編
三年前にて…… その20
しおりを挟む 伏見城のひと部屋を猫部屋にしていた。
秀吉自ら猫の世話をしていた。
秀吉がいないときは、近習が面倒を見た。
2日前、一人の近習が餌をやるために猫部屋に入った。
餌は、鯛の塩焼きをほぐしたもの。
腹を空かせた猫が、近習の足元にどっと押し寄せた。
近習は異変に気がついた。
いつもなら我先にと駆け寄ってくる〝トラ〟がいない。
他の猫も、太閤殿下の寵愛を受ける〝トラ〟に遠慮して、なかなか餌を食べようとしない。
もの欲しそうな顔で、餌をじっと見ている。
近習は猫の数を数えた。
やはり、一匹足りない。
目を擦り、足の指を使ってまでして数えたが、やはりいない。
近習はこれは一大事と、猫たちの頭上に餌をばら撒き、慌てて部屋をでた。
それから、上へ下への大騒ぎである。
伏見城をくまなく捜したが、見つからない。
周辺も捜してみたが、発見できない。
太閤殿下に知れれば打ち首だと、猫捜しを依頼しにきた近習は声を詰まらせていた。
大の大人が、それも武士が、いい年をして今にも泣き出しそうな、あまりにも情けない顔をするので、
「分かった、分かった、何とか捜してみせる」
と、引き受けてしまった。
秀吉自ら猫の世話をしていた。
秀吉がいないときは、近習が面倒を見た。
2日前、一人の近習が餌をやるために猫部屋に入った。
餌は、鯛の塩焼きをほぐしたもの。
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近習は異変に気がついた。
いつもなら我先にと駆け寄ってくる〝トラ〟がいない。
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もの欲しそうな顔で、餌をじっと見ている。
近習は猫の数を数えた。
やはり、一匹足りない。
目を擦り、足の指を使ってまでして数えたが、やはりいない。
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それから、上へ下への大騒ぎである。
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