310 / 419
竜の恩讐編
ラナン・キュラスからの依頼
しおりを挟む【刻狼亭】別館の旅館内部にある『従業員休憩所』。
怒りに拳を震わせて喚いているのは年若い従業員達ばかりだった。
「貴族の奴等、引っ掻いてやりたい!」
「客だからって何でも許されると思うな!」
「俺はお前等の召使じゃねぇーんだっつーの」
「何がチップはずむから相手をしろなのよ!ふざけんなっていうのよ!」
金持ちの上客相手にやり返す事も出来ずにこうして、すごすごと休憩所で愚痴の言い合いをしてストレスを発散させる従業員に交じり、若女将の朱里も交じって休憩所の座布団の上でぺたーんと伸びている。
「若女将、大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫、じゃないです!貴族の態度の悪さなんなのー!」
朱里が座布団を握りしめながら足をバタバタさせて喚いて、従業員が朱里に同情の目を向ける。
「あー、若女将も被害に遭いましたか」
「あの貴族連中早く帰ってほしいですよねー」
「若に媚売りに来てるのはいいけど、私等に横暴な態度を取れば若にも連絡入るのにバカじゃないのって思いますよね」
「他国の重鎮だか何だか知らないけど、うちを他の旅館と同じにみるなっつーの!」
ワッと同じ思いの従業員が喚いては愚痴を募らせる。
ベテランの古株従業員達は仕方がない奴等だと生暖かい視線を送るも、分からなくは無いと頷きもする。
「若女将はどんな目にあったんです?」
「貴族の子供達に、廊下とかで道塞がれたり、わざとぶつかられたりしてるの!スカートはめくられるし、三角巾は取られたりするし、とにかく嫌がらせが酷いの!」
朱里が顔を上げて従業員に話すと、従業員が同情の目を向ける。
小さい体の朱里は貴族の子供の恰好のオモチャなのだ。
一応、従業員の様な立場でうろちょろしている朱里がお客の子供相手に大きな態度をとるわけにもいかず、絡まれたら逃げたり隠れたりで、余計に子供達をヒートアップさせている。
ルーファスに相手にしなくても良いと言われたが、調理場から出ると廊下などで捕まったり、旅館の自分の部屋に戻ると部屋の前で待ち構えられたりしている。
貴族の子供達に目をつけられてからは【刻狼亭】の印字されていない三角巾したりしていても、追い回されてハガネや、何故か朱里を追い回していたはずのイルマール達に助けられたりしている。
「若女将、子供に目をつけられやすいですからね・・・」
「ううっ・・・子供は好きだけど、あの子達は嫌い」
旅館で暇を持て余している子供ほど性質の悪い物は無いのではないかと言うぐらいには朱里の中で貴族の子供は最悪なモノになっている。
ルーファスの叔父ギルよりも性質が悪いのでは?とすら思っている。
ギルは現在【刻狼亭】の料亭の方で癖のある上客相手にルーファスとやりこめている最中らしく、アルビーが「とても静かな屋敷になってるよ」と言っている。
「今日は若女将はジュース作り終わったんですか?」
「終わりましたー。廊下の子供が居なくなったら帰ります」
朱里が貴族の子供に追い回されるようになって体力的にフラフラと危ない足取りの朱里に周りからストップがかかり、今現在は1日限定100本『復興祈願ジュース』として売り出して毎日売り切っている。
よって朱里の働く時間はとても短い。
「アカリ、そろそろ大丈夫そうだぞ」
ハガネが廊下を見回し、朱里が従業員に「お疲れ様です。お先に失礼します」と丁寧にお辞儀をしてからソロソロと廊下に出ていく。
「貴族のガキ共に見つからない様に部屋から出ないようにな?」
「今日は部屋に戻って編み物の続きでもするよ」
「まだやってたのか?」
「ハガネが色々編み方教えてくれたからバリエーション増えて楽しいよ」
何気に朱里の髪の結い紐を結ったり、小手先器用な事が得意なハガネは編み物も色々知っていて、ネルフィームに貰った毛糸で朱里に色々な編み方を教えてくれた。
「まぁアカリが楽しいなら良いけどな。俺は飽き性だから1時間で止めちまうな」
「編み方いっぱい覚えてるのにね」
「俺の前の主君が何も出来ない分、色々覚えたからな。アイツは本当に何やらせても酷かった」
「ハガネの前の主君はどんな人だったの?」
ハガネが片眼を開けて朱里を見ながらフッと笑うと、「じゃあ、茶菓子でも出してくれよ」そう言って朱里の借りている客室を開けて入っていく。
朱里が編み物の準備をし、茶菓子をテーブルに置いて座椅子に腰掛けると、ハガネが朱里にお茶を出して朱里の向かい側の座椅子に腰を掛ける。
「俺の初めての主君は、自信家で堂々として、不器用な変な女だった」
怒りに拳を震わせて喚いているのは年若い従業員達ばかりだった。
「貴族の奴等、引っ掻いてやりたい!」
「客だからって何でも許されると思うな!」
「俺はお前等の召使じゃねぇーんだっつーの」
「何がチップはずむから相手をしろなのよ!ふざけんなっていうのよ!」
金持ちの上客相手にやり返す事も出来ずにこうして、すごすごと休憩所で愚痴の言い合いをしてストレスを発散させる従業員に交じり、若女将の朱里も交じって休憩所の座布団の上でぺたーんと伸びている。
「若女将、大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫、じゃないです!貴族の態度の悪さなんなのー!」
朱里が座布団を握りしめながら足をバタバタさせて喚いて、従業員が朱里に同情の目を向ける。
「あー、若女将も被害に遭いましたか」
「あの貴族連中早く帰ってほしいですよねー」
「若に媚売りに来てるのはいいけど、私等に横暴な態度を取れば若にも連絡入るのにバカじゃないのって思いますよね」
「他国の重鎮だか何だか知らないけど、うちを他の旅館と同じにみるなっつーの!」
ワッと同じ思いの従業員が喚いては愚痴を募らせる。
ベテランの古株従業員達は仕方がない奴等だと生暖かい視線を送るも、分からなくは無いと頷きもする。
「若女将はどんな目にあったんです?」
「貴族の子供達に、廊下とかで道塞がれたり、わざとぶつかられたりしてるの!スカートはめくられるし、三角巾は取られたりするし、とにかく嫌がらせが酷いの!」
朱里が顔を上げて従業員に話すと、従業員が同情の目を向ける。
小さい体の朱里は貴族の子供の恰好のオモチャなのだ。
一応、従業員の様な立場でうろちょろしている朱里がお客の子供相手に大きな態度をとるわけにもいかず、絡まれたら逃げたり隠れたりで、余計に子供達をヒートアップさせている。
ルーファスに相手にしなくても良いと言われたが、調理場から出ると廊下などで捕まったり、旅館の自分の部屋に戻ると部屋の前で待ち構えられたりしている。
貴族の子供達に目をつけられてからは【刻狼亭】の印字されていない三角巾したりしていても、追い回されてハガネや、何故か朱里を追い回していたはずのイルマール達に助けられたりしている。
「若女将、子供に目をつけられやすいですからね・・・」
「ううっ・・・子供は好きだけど、あの子達は嫌い」
旅館で暇を持て余している子供ほど性質の悪い物は無いのではないかと言うぐらいには朱里の中で貴族の子供は最悪なモノになっている。
ルーファスの叔父ギルよりも性質が悪いのでは?とすら思っている。
ギルは現在【刻狼亭】の料亭の方で癖のある上客相手にルーファスとやりこめている最中らしく、アルビーが「とても静かな屋敷になってるよ」と言っている。
「今日は若女将はジュース作り終わったんですか?」
「終わりましたー。廊下の子供が居なくなったら帰ります」
朱里が貴族の子供に追い回されるようになって体力的にフラフラと危ない足取りの朱里に周りからストップがかかり、今現在は1日限定100本『復興祈願ジュース』として売り出して毎日売り切っている。
よって朱里の働く時間はとても短い。
「アカリ、そろそろ大丈夫そうだぞ」
ハガネが廊下を見回し、朱里が従業員に「お疲れ様です。お先に失礼します」と丁寧にお辞儀をしてからソロソロと廊下に出ていく。
「貴族のガキ共に見つからない様に部屋から出ないようにな?」
「今日は部屋に戻って編み物の続きでもするよ」
「まだやってたのか?」
「ハガネが色々編み方教えてくれたからバリエーション増えて楽しいよ」
何気に朱里の髪の結い紐を結ったり、小手先器用な事が得意なハガネは編み物も色々知っていて、ネルフィームに貰った毛糸で朱里に色々な編み方を教えてくれた。
「まぁアカリが楽しいなら良いけどな。俺は飽き性だから1時間で止めちまうな」
「編み方いっぱい覚えてるのにね」
「俺の前の主君が何も出来ない分、色々覚えたからな。アイツは本当に何やらせても酷かった」
「ハガネの前の主君はどんな人だったの?」
ハガネが片眼を開けて朱里を見ながらフッと笑うと、「じゃあ、茶菓子でも出してくれよ」そう言って朱里の借りている客室を開けて入っていく。
朱里が編み物の準備をし、茶菓子をテーブルに置いて座椅子に腰掛けると、ハガネが朱里にお茶を出して朱里の向かい側の座椅子に腰を掛ける。
「俺の初めての主君は、自信家で堂々として、不器用な変な女だった」
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。


【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる