小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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豪宴客船編

それぞれの脱出

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 雷槍ケラウノスが放たれた衝撃は、数km離れた海中にも影響を及ぼしていた。
「監視地点より強力な電磁波の発生を確認!」
 オペレーターが報告内容を叫ぶ中、艦内の機器にノイズが走り、艦体が大きく揺れ動いた。
「各種機器の状況を至急確認しろ! 制御が困難な場合は一時海面へ浮上する!」
 軍服の男が命令を飛ばし、艦内の要員たちはすぐさま担当している機器の動作を確認する。
「どうやらカタ着いたようやな、コバちゃん」
 手摺てすりに掴まって衝撃をやり過ごした男は、満足げに笑みを浮かべた。

「おっ! 合図だ」
 操舵室の窓から様子見していた副船長、もといその身体を乗っ取った管狐くだぎつねは、雷槍ケラウノスの閃きを確認すると、すぐに室内の機器を起動した。
 周りには精気を吸い取られた他の船員たちが死屍累々ししるいるいと横たわっているが、副船長の記憶を全て奪った管狐は、一人で手際よく操船の準備を進めていく。
「あとはこの船を東京湾にブッ込めばいいだけっと」
 操舵輪を握る直前、管狐は思い出したように懐から拳銃を取り出した。
「結局コレ使わなかったな」
 管狐が手に握られた拳銃をつまらなそうに眺めていると、
「あ~、ちょっと」
 操舵室の扉から不意にかけられた声の方に、その銃口を突きつけた。
「待った待った! そーゆーのはヌキで話がしたいんだ」
 扉をくぐってきたのは、怪しげな黄金の仮面を着けた男だった。男は両手を挙げ、攻撃の意思がないことを示しながら、管狐へと歩み寄ってくる。
「キミ、管狐だろ?」
「っ!」
 正体を言い当てられた管狐は、銃を両手持ちで構え直し、男の心臓に狙いを定めた。
「だから待ったって! 別にキミが何しようがボクは邪魔する気ないんだ。ちょっと頼みたいことがあって来たんだ」
「頼み……だと?」
「そうそう。それだけ聞いてくれるんなら、ボクらはすんなりおいとまするから、後は好きにしちゃって構わないから」
 男の風貌と相まってあまりにも胡散臭いが、正体を知った上で頼み事をしに来たあたり、ただの乗客ではないと管狐は目していた。何より、キュウが船内のほぼ全ての人間から精気を集めたはずなので、その中でまともに動けているなら只者ではない。
「その頼みってのは何だ?」
 管狐は銃口を下ろした。一応、聞くだけ聞いてみることにする。
「ボクが言うタイミングで、ちょっとだけ船を止めといてほしいんだ。こっちの用が済んだら、ボクらはこの船をおさらばする」
 男の話を聞いた管狐は、少しの間考えた。
「そのくらいなら別にいいが、そんなことしてもおいらに何の得もないよな?」
「そうだなぁ……じゃあキミが普段棲家すみかにしている場所を言ってくれないかな? もしくはその近く」
「何でそんなこと教えないといけないんだ?」
「出来立てアツアツの『ねずみの天ぷら』――――」
「っ!?」
 それを聞いた管狐は肩を跳ね上がらせた。
「――――を近日中にその場所へ持っていかせよう。もちろん時間指定OKで」
「……本当だな?」
「頼みを聞いてくれるんなら安すぎる買い物だ。なんなら念書を一筆書いてもいい」
 管狐から見ても、男が嘘を言っているようには見えなかった。
 キュウから言い渡されたのは、船を東京湾まで持っていくことなので、最終的に目的地に着くなら途中で一時停止することは命令をたがえていない。
「よし、いいぞ。ここから東京湾までの間なら、どこでも止めてやる」
「おぉ、ありがとう」
「その代わりイイ油を使った鼠の天ぷらだぞ。いいな?」
「もちろん。さて、じゃあ早速念書をしたためようか。場所と時間は?」
「場所は――――」

 目がくらむ程の光の中で、オスタケリオンは天上へ右手を伸ばした。
 すでに視覚は焼き尽くされているはずが、その光だけは鮮明に、魂にまで届き煌々こうこうと感じられた。
 その光の先に通じているであろう誰かに向かって、オスタケリオンは黒い骨と成り果てた手を伸ばす。
「ア……ア……」
 その人物の輪郭すらとらえる前に、オスタケリオンの手は砂のように消えていった。
 手だけでなく、残った部位も端から途絶え、遂には黒い髑髏どくろの頭部だけになった。
「ア……」
 クラーケンと一体化して理性を失ってなお、オスタケリオンはその人物への忠誠だけは忘れていなかった。
 黒髑髏が消失する刹那せつなに抱いたのは、己を作ったあるじに対しての悔恨の念だった。
 与えられた役務を果たせなかったことへの――――

 雷槍ケラウノスの効果が切れる頃には、クラーケンの残骸は跡形もなく消滅していた。
 アテナと融合していた結城ゆうきは、海面に向かって落下していくところ、集まってきた枇杷びわの葉がクッションのようになって受け止められた。
 そのまま枇杷の葉のクッションに運ばれ、結城は媛寿えんじゅたちが待つ船上に帰還した。
 床に立った結城の身体から、金色こんじきの粒子が離れ、それは凛々しい女神の姿を形作った。
 同時に、
「ふお――――――」
「くっ!」
 結城は前のめりに床へ倒れ、アテナはその場に膝をついた。
「わっ! ゆうき~!」
 媛寿が慌てて駆け寄ると、結城はまたも白目をいて意識を失っていた。
「おつかれさまでした~」
 呑気な拍手をしながら歩み寄ってきたキュウは、笑顔で結城とアテナをねぎらった。
はかり……ましたね……キュウ!」
 膝をついたまま動けない様子のアテナは、近寄ってきたキュウをにらみつけた。
「何のことですか~、アテナ様~?」
たわけたことを! 雷槍ケラウノス一回分の力しか渡さずに!」
「誤解ですよ~。過不足なくあの怪物イカとどめをさせるようにってしただけですよ~」
 キュウはしゃがみ込むと、動けないアテナの耳元に顔を寄せ、
「とはいえ、これだけ力を出し切ってしまったら、アテナ様でも二、三日はまともに動けないでしょうね」
 氷のように冷たい声でそうささやいた。
「っ!?」
「その間に結城さんとお楽しみさせていただきますね」
「っ! あなたという狐は!」
「はいは~い皆さ~ん!」
 怒りで赤くなったアテナをよそに、キュウは手を叩いてその場の注目を集めた。
「これからこの船は東京湾に突っ込みま~す。でもその前に私たちは脱出しますので~、荷物をまとめて車両格納庫まで来てくださ~い」
 キュウは船内アナウンスよろしくそう告げると、
「ささっ、早く参りましょ~。媛寿さんは~、結城さんの荷物も一緒に持ってきてあげてくださいね~」
「らじゃー!」
 結城を抱え上げてそそくさとプール施設を去っていった。その後を追って媛寿もぱたぱたと走っていく。
「くっ! どこまでも戯けたことを!」
「KΞ1↓AN(落ち着けよ、アテナ)」
 まだ立ち上がることもままならないアテナに、マスクマンが肩を貸して起こした。
「NΛ→5FI。SΣ2←PS(いまはこの船から脱出するのが先だ。シロガネ、盾の方は頼むぞ)」
「お、重、い」
 マスクマンがアテナと槍を、シロガネが神盾アイギスの分担で運び、三人もまた激戦の爪痕が生々しい、破壊し尽くされた船の最上デッキを後にした。

 クイーン・アグリッピーナ号の船体側面にあるゲートが、警告音と重たい金属音を発して開かれた。
 そこは本来、寄港地にて車両を格納するための、船内ガレージへ通じる扉だった。
 その開かれた扉の奥、暗い船内ガレージから強いヘッドライトが発光した。
「では発進しますわ。全員、くれぐれもシートベルトはしっかりと」
 最終確認をしたカメーリアは、シフトレバーをローに入れ、足をブレーキペダルからアクセルへ移し、深く踏み込んだ。
 マフラーからの排気音ではなく、突風が空気を押しやるような音が鳴り響き、ゲートから一台のスポーツカーが宙へ躍り出た。
 月の光を反射する滑らかなフォルムを持つ赤い車体、アストンマーティン・DB5だった。
 ただし、本来四輪が装着されている箇所には、タイヤではなくを短くしたほうきが取り付けられている。
「すっごいすっごーい! 『ベリー・トッター』や『ワンダーバード』みたーい!」
 まさに小説や映画でしかないような空飛ぶ自動車に乗り、媛寿は大興奮して後部座席で跳ねていた。
「カメーリアに来てもらって正解でした~。脱出の『足』として申し分ありません」
 助手席に座るキュウは、余裕綽綽しゃくしゃくおうぎで自身をあおいでいる。
「気前良くチケットを渡してきたと思ったら、何だかいろいろ仕事させられた気分ですわ。おまけに飛行自動車これまで使う羽目になるなんて」
 カメーリア製作の飛空自動車は、一度飛び立ってしまえば、あとは着地した時点で二度と飛ぶことはできない。
 一回限りの空中ドライブを実現するという、便利なのか不便なのか判断が難しい代物であった。カメーリアは作る労力に効果が見合わないということで、やはりガレージでほこりを被らせていた。
「まあまあ、あなただって楽しんだことですし~。『例の薬』も調整ができましたでしょ~?」
「はあ~、もういいですわ。お店を吹っ飛ばされた分くらいは取り戻せた気がしますし」
 キュウにうまい具合に動かされた気がしないでもないカメーリアは、ぐったりとハンドルにもたれかかった。

 飛空自動車はどんどん高度を上げ、比例してクイーン・アグリッピーナ号の全容が小さく遠ざかっていく。
 空飛ぶ自動車に騒いでいた媛寿だったが、離れていく豪華客船を見て急におとなしくなった。
 サイドウインドウからの景色を見つつ、媛寿は左袖からある物を取り出した。
 掌の中には、8mm程度の小さな薬莢式の弾丸が握られていた。
 百年以上前に友人から渡された、その弾丸を。

『おまんが抜けるとあっちゃあ、さびしい限りぜよ』
『えんじゅ、くろふねみにきただけ。そのついでだった。そろそろかえってゆっくりしたい』
『そぉか~……なぁ、おまんもわしと一緒に海に出てみんか?』
『?』
『おまんにはいろいろ助けられたき。その礼がしたいんじゃ。わしは大政奉還このあと の細かいことが片付いたら、海援隊として世界に出る気でおる。おまんも一緒に世界に繰り出してみんか?』
『……かんがえとく』
『おぉ、そぉか! じゃあコレ持っとくぜよ! それがわしの船に乗る御免之印章パスポートじゃき!』

 結局それから一ヶ月も経たないうちに、その友人は暗殺され、媛寿は大海原に出ることはなかった。
 今の今まで忘れてしまっていたが、媛寿は改めて、大型船で海に出たことを感慨深く思っていた。
 パスポート代わりとして渡された、スミスウェッソンモデル2アーミーの弾丸を握り締めて。

「たぶんアレ……だよな? 小林結城かれはあんなモンまで持ってたのか?」
 クイーン・アグリッピーナ号から遠ざかっていく飛空自動車を眺めながら、稔丸ねんまるは小型無線機を口元に寄せた。
「まっ、それは置いといて……停船よろしく、どうぞ」
『分かった。停船する』
 無線機の向こうから返信が来て数分後、船のエンジンは出力を落とし、何もない海の真ん中でクイーン・アグリッピーナ号は停止した。
「いま停船しましたので、ピックアップよろしくお願いします」
 小型無線機とは別にもう一つ、衛星回線を使用する特殊な携帯電話に、稔丸は静かに声をかけた。
 それを合図に、静まり返ったクイーン・アグリッピーナ号のすぐ横から、海面を掻きき分けて何かが浮上する。
 深海のような闇色に染め上げられた、大型の潜水艦だった。
「シトローネ、グリム、迎えが来た。乗り換え作業をよろしく」

「ありがとう。こっちの用は済んだから、もう出してくれていいよ。どうぞ」
 最後にハッチを通って艦内に入った稔丸は、無線機で相手に終了を伝えた。
『じゃ、例の件は忘れんなよ? どうぞ』
「もちろん。ちゃんと約束した場所に届けるよ」
 それを最後に、稔丸は通信を切った。
「ごくろうさんやったね、ネンちゃん」
 後ろから声をかけてきたその人物に、稔丸はゆっくり振り返った。
「競り落としたたちは全員乗せたんで、もう潜水艦こっちも出してもらっていいですよ、恵比須えびす様」
 潜水艦の中にはあまりにも不釣合いな、麦藁むぎわら帽子にサングラス、アロハシャツという出で立ち、商業神・恵比須がそこにいた。
「オッケーオッケーや。じゃ、毘沙門天ビシャモに出すよううてくるわ」
「あっ、ちょっと待ってくださいよ、恵比須様」
「ん? なんや?」
 発令所へ戻ろうとした恵比須を、稔丸は思い出したように呼び止めた。
「彼らを巻き込んだのって……もしかして恵比須様ですか?」
「せやけど?」
 恵比須は別段取りつくろう様子もなく、あっさりと質問の是非を答えた。それを予想できていたのか、稔丸も特に驚くことなく続ける。
「一応聞きますけど、何で彼らを巻き込んだんですか? あんな方々が乗り込んだら、滅茶苦茶な騒動が起こることは分かってたでしょうに」
「そら簡単や。メッチャクチャに引っかき回して欲しかったからや」
 稔丸の言葉を返すように、恵比須は人差し指を立てた。
「コバちゃんのこっちゃ。あの船の違法の証拠集めて訴え出ようとかおもとったんちゃうか? 甘い。メッチャ甘いわ。そんなんであの船が沈むわけあるかい。けど媛寿ちゃんやアテナちゃんが大暴れしよったら、いやが応でも騒ぎが起こる。それこそ船一隻いっせき簡単に沈めるくらい、な」
「……」
 稔丸は恵比須の言葉を黙って聞いていた。恵比須の口元には、企む者としての笑みが表れている。
「ホンマやったら船が沈みかかっとるところを海保に押さえさせて、客全員から保釈金ガッポリいただいた上で、醜聞スキャンダルでチョイおきゅう据えたろ思とったけど……まっ、東京湾に突っ込ませてもおんなじやし、ええわ」
「相変わらず……商売が絡むと恐い方だ」
 滔々とうとうはかりごとを語る恵比須に、稔丸は内にいた恐れを口にした。
「当たり前や、ネンちゃん。わし商売の神様かみさんやで。八百万の神わしらの国にド汚い商売持ち込みよるんやったら、こっちもそれなりの手ぇ使つこ一泡ひとあわ吹かしたるわ」
 恵比須の目は稔丸に向いていなかったが、敵対者への執念のようなものが満ち満ちており、稔丸はなおさら背筋が冷えるのを感じていた。
喧嘩けんか売ったこと後悔させたる。見とれよ、武器密売組織『火の星マーズ

 一方その頃、セントラルパークが崩れてできた瓦礫がれきの中。
「うわああああ! もうまとわりつくな亡者ども! 納豆の糸が切れるだろおがああああ…………あれ?」
 悪夢に飛び起きた野摩やまは、静寂に包まれた瓦礫だけの風景を見渡した。
「ここって……いてててて!」
 確認のためにほおを引っ張ってみるが、そこにはハッキリとした痛みがあった。
「痛い……ってことは……ああぁ~、神様ありがとうございます~。現世に戻してくれたんですね~」
 瓦礫の上にひざまずいた野摩は、手を合わせて心の底から天へ感謝した。
「これからはもう二度と悪いことしません。清く正しく生きていきます~」
 果たしてどんな神が助けたのか、野摩はそれを知らぬまま滂沱ぼうだの涙を流し続けていた。
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