211 / 378
豪宴客船編
幕間・千夏と桂三郎
しおりを挟む
結城たちがクイーン・アグリッピーナ号に乗船した頃、金毛稲荷神宮の奥の一室にて。
「キュ、キュウ様もう例の船に乗ったかな?」
「多分な。毎年楽しみにしてたから、乗り過ごすなんて絶対ないだろ。それより腰の勢いなくなってきてるぞ」
「む、無茶言わないでよ、 千夏姉ちゃん。お休みもらったからって朝からずっとじゃ、いくら鬼でも疲れてくるよ」
「……ふん!」
「わっ!」
千夏は覆い被さっていた桂三郎を蹴って仰向けに倒すと、そのまま追いすがって馬乗りになった。
「じゃあお前動かなくていいから、そのまま棒だけおっ勃てとけ。あたしが勝手に使うから」
憮然としながら言う千夏は、布団の横に並べていた一升瓶から一本を取ってラッパ飲みした。
「ちょ、ちょっと待って! せめて休憩させて―――おぶっ!」
「友宮のトコから連れ出してやった上に匿ってやってるんだ。このくらいはヤッてのけろ」
意見しようといた桂三郎の口に、千夏は一升瓶を押し入れて酒を流し込んだ。
「んぐ……んぐ……んぐ……ぷはぁ! はあ、はあ……もうヒドいよ、千夏姉ちゃん。ボクだって神社のお務めは手伝ってるし、キュウ様には毎晩搾り取られてるし、けっこう頑張ってるのに~」
「そんなことはどうでもいい。キュウ様がいないんだから、今はあたしのオモチャになれ。最近溜まってんだよ」
「だったら別にボクじゃなくても、街に出て適当な男をいくらでも誘って食べればいいじゃないか」
「どうでもいい奴だと数ヤらないとあたしが満足できないんだよ。大抵はあたしが満足するまでに干乾びるし。だったら普通の人間より頑丈なお前の方がいくらかマシだ」
「それならどうでもよくない人とヤッてくればいいじゃないか」
「……」
「? 千夏姉ちゃ―――ぶぐっ!」
なぜか桂三郎の鼻っ柱に、千夏の拳が落とされた。
「ぐう~……は、鼻ズレたよ」
「うっさい。お前は棒だけ勃てとけばいいんだよ」
「うぅ、理不尽すぎるよ。千夏姉ちゃんの鬼~」
「お前もあたしも鬼だろ……チッ、本当にへばってきてる。こうなったら桜一郎と千冬千冬も呼ぶか」
千夏は枕元に置いてあったスマートフォンを取り、アドレス帳を検索し始めた。
「え? 桜一郎兄さんの連絡先知ってるの?」
「ん? 何だ、お前知らなかったのか?」
「百年くらい前にどこかの家に仕えることになったって手紙もらって、それっきり」
「いまあいつ『祀凰寺』って家にいるぞ。千冬も一緒だ」
「え、千冬姉ちゃんと? うわぁ……」
「そういえばもう一人はどうしたんだよ? お前の兄貴で、桜一郎の弟の」
「楠二郎兄さん? さぁ? 関ヶ原の戦いで西軍に付くって行ったっきりだけど」
「そういえば千春姉も西軍に手を貸すって言ってたな。島津に縁があるとかで」
「結局西軍は負けちゃったし、楠二郎兄さんとはそれっきり会ってないなぁ。たぶん死んでないと思うけど、今頃どうしてるんだろ。千春姉ちゃんも」
「千春姉なら学校経営してるぞ」
「え!? 嘘!?」
「七十年くらい前に学校作ったって手紙よこしてきた。今でもちょくちょく連絡が来るし、楽しくやってるらしい」
「へえ~、あの千春姉ちゃんが」
「……チッ、出ない。この分だと向こうもお愉しみ中だな。じゃあ―――」
千夏はスマートフォンを放り投げると、再び桂三郎に跨った。
「お前の棒だけで我慢するしかないな」
「え!? ちょ!? 僕だってもう疲れて―――」
「休憩しただろ?」
「そ、そんな……あああ~!」
夕暮れ時の金毛稲荷神宮に、誰も聞くことのない桂一郎の悲鳴だけが響き渡った。
「キュ、キュウ様もう例の船に乗ったかな?」
「多分な。毎年楽しみにしてたから、乗り過ごすなんて絶対ないだろ。それより腰の勢いなくなってきてるぞ」
「む、無茶言わないでよ、 千夏姉ちゃん。お休みもらったからって朝からずっとじゃ、いくら鬼でも疲れてくるよ」
「……ふん!」
「わっ!」
千夏は覆い被さっていた桂三郎を蹴って仰向けに倒すと、そのまま追いすがって馬乗りになった。
「じゃあお前動かなくていいから、そのまま棒だけおっ勃てとけ。あたしが勝手に使うから」
憮然としながら言う千夏は、布団の横に並べていた一升瓶から一本を取ってラッパ飲みした。
「ちょ、ちょっと待って! せめて休憩させて―――おぶっ!」
「友宮のトコから連れ出してやった上に匿ってやってるんだ。このくらいはヤッてのけろ」
意見しようといた桂三郎の口に、千夏は一升瓶を押し入れて酒を流し込んだ。
「んぐ……んぐ……んぐ……ぷはぁ! はあ、はあ……もうヒドいよ、千夏姉ちゃん。ボクだって神社のお務めは手伝ってるし、キュウ様には毎晩搾り取られてるし、けっこう頑張ってるのに~」
「そんなことはどうでもいい。キュウ様がいないんだから、今はあたしのオモチャになれ。最近溜まってんだよ」
「だったら別にボクじゃなくても、街に出て適当な男をいくらでも誘って食べればいいじゃないか」
「どうでもいい奴だと数ヤらないとあたしが満足できないんだよ。大抵はあたしが満足するまでに干乾びるし。だったら普通の人間より頑丈なお前の方がいくらかマシだ」
「それならどうでもよくない人とヤッてくればいいじゃないか」
「……」
「? 千夏姉ちゃ―――ぶぐっ!」
なぜか桂三郎の鼻っ柱に、千夏の拳が落とされた。
「ぐう~……は、鼻ズレたよ」
「うっさい。お前は棒だけ勃てとけばいいんだよ」
「うぅ、理不尽すぎるよ。千夏姉ちゃんの鬼~」
「お前もあたしも鬼だろ……チッ、本当にへばってきてる。こうなったら桜一郎と千冬千冬も呼ぶか」
千夏は枕元に置いてあったスマートフォンを取り、アドレス帳を検索し始めた。
「え? 桜一郎兄さんの連絡先知ってるの?」
「ん? 何だ、お前知らなかったのか?」
「百年くらい前にどこかの家に仕えることになったって手紙もらって、それっきり」
「いまあいつ『祀凰寺』って家にいるぞ。千冬も一緒だ」
「え、千冬姉ちゃんと? うわぁ……」
「そういえばもう一人はどうしたんだよ? お前の兄貴で、桜一郎の弟の」
「楠二郎兄さん? さぁ? 関ヶ原の戦いで西軍に付くって行ったっきりだけど」
「そういえば千春姉も西軍に手を貸すって言ってたな。島津に縁があるとかで」
「結局西軍は負けちゃったし、楠二郎兄さんとはそれっきり会ってないなぁ。たぶん死んでないと思うけど、今頃どうしてるんだろ。千春姉ちゃんも」
「千春姉なら学校経営してるぞ」
「え!? 嘘!?」
「七十年くらい前に学校作ったって手紙よこしてきた。今でもちょくちょく連絡が来るし、楽しくやってるらしい」
「へえ~、あの千春姉ちゃんが」
「……チッ、出ない。この分だと向こうもお愉しみ中だな。じゃあ―――」
千夏はスマートフォンを放り投げると、再び桂三郎に跨った。
「お前の棒だけで我慢するしかないな」
「え!? ちょ!? 僕だってもう疲れて―――」
「休憩しただろ?」
「そ、そんな……あああ~!」
夕暮れ時の金毛稲荷神宮に、誰も聞くことのない桂一郎の悲鳴だけが響き渡った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
19
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる