小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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豪宴客船編

それぞれの夜その2

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そんな風に言われて、すごく戸惑ってしまった。


「あなたが僕の側にいてくれたらどんなに幸せだろうって、情けないけど考えてしまうんです。困らせてしまって…ごめんなさい。でも、僕は彩葉先生のことが本当に好きだから、諦められないんです」


苦しい胸の内を明かしてくれた理久先生。


思わず、慶都さんと一緒にいられなかった3年間が蘇ってきた。


私には雪都がいて、すぐ近くに慶都さんを感じることが出来て、だから幸せだった。


でも、本当は…


心の奥でいつも慶都さんを求めていたのかもしれない。


好きな人と結ばれない苦しさ、それは…痛いほどわかった。


理久先生とは、その会話を最後に、仕事以外のことでは何も話せていない。


幸せになって欲しいと心から願ってるのに、慶都さんを選んだ私には、どうしてあげればいいのかわからなかった。


『雪都は?眠った?』


『はい。今、やっと眠りました』


『お疲れ様』


『慶都さんこそ。今日はいろいろ大変だったんじゃないですか?』


慶都さんお気に入りのフカフカのソファに座り、2人の会話が始まる。


お互いに1日の仕事を終えて、ゆっくりとこんな風に過ごせる時間を持てることが、まだまだ夢見心地で不思議な感覚だった。


『今日は、副社長になる準備でずっと社長とあちこち企業回りをしていたから…父さんの方が張り切っているようだったな』


『お父様、慶都さんが副社長になることを心から喜んでおられますからね。本当にお元気で何よりです。まあ、うちもですけど』


『ああ、一堂社長もお元気だな。いつもエネルギッシュでパワーをもらう。本当にみんなが元気だと安心だ。今は、父さんも母さんも雪都を可愛がってる時が1番幸せそうなんだ。きっと雪都からパワーをもらってるんだろう。あんな小さいのに、雪都には計り知れない力があるんだな』


慶都さんは優しく微笑んでくれた。
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