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化生の群編
信頼
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「TΠ1↑……QΞ6(ふ~、スッキリしたぜ……って、何だ?)」
心ゆくまでマッサージチェアを堪能して部屋に戻ってきたマスクマンは、そこに満ちていた異様な空気にたじろいだ。
早くも敷かれた布団には、濡れタオルを額に当て、両の鼻にティッシュを詰めた結城が寝かされている。
その結城の体を背もたれ代わりにして座っている媛寿は、ひどく不機嫌そうな顔で持参した駄菓子を頬張り、売店で買ったラムネを何本も飲み干している。
一方、部屋の隅ではシロガネが愛用の日本刀とツヴァイヘンダーを手入れしながら、傍らに置いたラム酒の瓶を時折ラッパ飲みしている。
その中間では、湯飲みに注いだお茶をのんびりと啜っているアテナがいた。
媛寿とシロガネは明らかに機嫌が悪い。普通の人間がこの部屋に居合わせたならば、あまりの居心地の悪さに入ることさえできなかっただろう。
そんな中で涼しげにしていられるのは、アテナの神格ゆえであり、マスクマンもまた上位精霊であるためだ。ちなみに結城は霊能力が皆無なので、特に影響を受けていないだけである。
「HΣ3→(アテナ、一体どうしたんだよ、コレは)」
室内に入ったマスクマンは、この場で一番話が聞けそうなアテナにまず問い質した。
「あてなさま、ゆうきをみすてた」
問われていたアテナではなく、ヤケ食いしていた媛寿が答えた。
「WΦ4←(はぁ!? なんだそりゃ?)」
「この前来たヤツと、変な約束した」
今度はラム酒を飲み下ろしたシロガネが続けた。
「PΩ9↓(約束って何を?)」
「エンジュ、その言い方は人聞きが良くありませんよ。大したことではありません。あのヒナギという者がユウキに勝てたなら、私が守護神になると言ったまでです」
「Bω7↑(って、おいおい)」
アテナの言葉を聞いて、マスクマンも少なからず驚きと呆れの入り混じった声を出した。
「Bυ5→GG(じゃあ何か? 結城のトコから抜けるってことか?)」
仮面で表情が変わらないが、マスクマンとしては顔をしかめたかった。
「そうなるとは限りません。ユウキが勝てば特に何も変わることはないのですから」
マスクマンから糾されても、アテナは微塵も揺らぐことなくお茶を楽しんでいる。
「Sπ3↓(そりゃ……そうだろうけどなぁ……)」
マスクマンにも、媛寿とシロガネが懸念していることは分かっていた。
いま現在、結城が依頼を受けて、それを達成できているのは、自分たち四柱の力がうまくかみ合っているという部分が大きい。その中でもアテナの権能は中核を占めており、そこが失われるならば、今後の依頼の達成が困難になる。
それどころか、荒事も仕事に含まれる依頼に遭えば、アテナの護りを欠いた結城の命が危ぶまれる。
そのことを当のアテナが解っていないはずがないのに、雛祈の守護神になるという約束をしてしまったので、媛寿とシロガネは機嫌を損ねているのだ。
「こうなったら……」
一通り駄菓子を食べ尽くした媛寿が、妖しい気を放ちながらゆっくりと立ち上がった。
「媛寿があいつに毒キノコ盛ってやる」
普通の人間が聞いたら震え上がるほどの不気味な声で宣告する媛寿。
「相手が細切れになれば、約束も細切れ」
媛寿の言葉に乗っかって、シロガネも日本刀を手に立ち上がる。
「Tφ6←(お、おい。ちょっと待てよ)」
マスクマンの静止も聞かず、二人は恐ろしいほどに暗い気を纏いながら部屋を出ようとする。
「そこまでです」
部屋の敷居を跨ごうとした二人の襟首をアテナが掴み、顔を向かい合わせて押し付けた。
「む~! む~!」
「ムグッ! ムググっ!」
媛寿とシロガネはブチュリと口を合わせられたまま、手足をバタつかせて身悶えるが、アテナの腕力にかかっては1mmも動けない。
「ぷはっ! うへ~、おさけくさい~」
「あまったるい。ラムネ、くさい」
数十秒後にようやく解放された時には、二人とも雛祈への襲撃のことは忘れていた。
「少しは頭が冷えましたか?」
「う~、あてなさま、ひどい~」
「結城に取っておいた、私のファーストキス」
「そんなものは物の数に入りません。私などあのオニ娘と接吻させられたのですよ?」
蹲る媛寿とシロガネを見下ろして仁王立ちするアテナ。その様子を、マスクマンはさもえげつないものを見るような目で見つめていた。
「エンジュ、シロガネ、これはユウキ自身が力を示さねばならないことなのです。そうでなければあのヒナギという者は、いくら言葉で諭しても納得することはないでしょう。それとも、あなたたちはユウキを信じていないのですか?」
「うぅ~」
「それは……」
「私はユウキを信じます」
返答に困る媛寿とシロガネの言葉を待たずに、アテナは自身の想いをしっかりと述べ立てた。
「あなたたちも、それだけユウキのことを想うなら、勝敗の行方を静かに見守るのです」
「む~……えんじゅ、わかった」
「むぅ、了解」
「よろしい」
渋々ながら賛成した媛寿とシロガネの頭を、アテナは優しく撫でさすった。
一触即発だった状況が解かれ、マスクマンも安心して一息ついた。
「ふおっ! ……ありぇ? 僕たしか温泉に入りょうとしてたはず……しょれと何で鼻にティッシュ?」
ようやく目覚めた結城が、訳も分からずに辺りを見回す。直前の修羅場など知る由もなく。
結城たちと二部屋ほど離れたところに、千夏は部屋を取らされていた。
本当は結城たちがいる大部屋ならば、千夏が入っても問題ない広さだったのだが、アテナがキュウに言って部屋を分けさせていた。理由は寝ている結城に変なちょっかいをかけるかもしれないとのことだったが、実際に千夏は暇があったら結城に手を出す気でいたので、その判断は正解だったかもしれない。
そして今、千夏は布団に寝転がりながら悶々としていた。露天風呂での緊迫した空気に当てられたせいで、先程から感情が昂ぶりっぱなしだった。呼吸は荒く、下腹部が疼いて仕方がない。
鬼は感情の昂ぶりを純粋な『力』に変える妖力を持つ。もちろんそれだけに止まらず、他にも様々な能力を持った鬼は存在するが、天坂家に連なる者はその能力が顕著だった。
そして、それが戦闘で発散されない場合、本能的な欲求を増強させてしまう。すなわち、性欲が異様に高められてしまうのだ。
(あぁ~、こんなことならキュウ様にお願いして、オモチャをいくつか借りてくればよかった~)
行き場のない興奮に身悶えしながら、千夏は布団を右に左に転がる。自分の指を使って処理するという手もあるが、その程度では既に満足しない体になってしまっている。
(こんなことなら付いてくなんて言わなきゃよかったかぁ~……)
そもそもの目的を思い出して、千夏は動きを止めた。枕に顔を埋め、結城が持ってきた手紙の内容を思い浮かべた。
『村に鬼が出ようとしています。助けて下さい』と書かれた便箋と、螺久道村の住所。
文面にあった『鬼』というのも気になったが、それ以上に千夏が引っかかったのは、手紙が出された場所だった。
数百年を生きてきて実感するのは、鬼という種族に限定すれば、日本は思っている以上に狭いということだ。千夏たちのように鬼神に近い者から、知性の欠片もない餓鬼に至るまで、鬼というのは目立つ存在なので、出現したならば驚くほど速く耳に届く。そういった情報の伝わり方は、今も大昔も変わっていない。
だからこそ、結城が持ってきた手紙に、千夏は違和感を覚えた。
(螺久道村……そんなトコに鬼が出たなんて話、一度も聞いたことないぞ)
鬼が出たということならば、それがどんなに小さなことであろうと耳に入る。
大江山の鬼の首魁を先祖に持つ天坂家ならなおのことだ。
それが聞いたことがないというならば、可能性は二つ。完全なデマか、本当に未知の鬼が存在しているということ。
もしも本当に鬼がいたならば、相手の出方次第で千夏の対応も変わってくる。現代に生きる鬼の最上位の一つである天坂の者としては、同種族に下手な騒ぎを起こされては住みづらくなるからだ。千夏たちが自らの存在を人間側にそれとなく秘匿している意味がなくなってしまう。
(千春姉への報告はデマかどうかを確かめてからでもいいか)
割と頭が冷えてしまった千夏は、明日の捜索に備えて眠ることにした。
(まっ、あのメガミ様をチョロまかす手も思い浮かばないしな)
「ぐあっ! 千冬、そろそろ口を離せ。腕の肉が千切れる」
「あふっ! ハァ……ハァ……」
「痛ぅ、もう少しで腕を食われるところだ」
「だって……ハァハァ……桜一郎さんが……ハァハァ……声を出すなって言うから」
「当たり前だ。ここは屋敷じゃない」
千夏同様、千冬も露天風呂での空気に当てられ、感情が昂ぶっていた。
そこで雛祈が眠った頃合を見計らって、桜一郎を布団部屋に連れ込んでいた。
叫びだしそうな勢いだったので腕を噛ませたが、桜一郎が鬼でなければ腕の肉を骨ごと食いちぎられていたところだった。
「風呂で一体何があった? お嬢はなぜだか張り切った様子で寝てしまう。お前はいつも以上に昂ぶっている。戦でも始まるのか?」
「ある意味そうですね……あぁ、思い出しただけで震えが止まりません。お風呂に浸かってる間もお腹がキュウキュウしっぱなしでした」
「待て。自分たちも明日から調査に出ることになる。今はこの辺で―――」
「あと五回。あと五回お願いします」
「せめて何があったか話し―――ムグッ!」
桜一郎が全て言い終わる前に、千冬が口を塞いでしまったので、その後も桜一郎は千冬の欲求を満たすために貪られることになる。
ちなみに布団部屋なのでバレていないと思われていたが、一懇楼の若い女中たちが密かに覗いていたことが分かるのは少し後の話である。
心ゆくまでマッサージチェアを堪能して部屋に戻ってきたマスクマンは、そこに満ちていた異様な空気にたじろいだ。
早くも敷かれた布団には、濡れタオルを額に当て、両の鼻にティッシュを詰めた結城が寝かされている。
その結城の体を背もたれ代わりにして座っている媛寿は、ひどく不機嫌そうな顔で持参した駄菓子を頬張り、売店で買ったラムネを何本も飲み干している。
一方、部屋の隅ではシロガネが愛用の日本刀とツヴァイヘンダーを手入れしながら、傍らに置いたラム酒の瓶を時折ラッパ飲みしている。
その中間では、湯飲みに注いだお茶をのんびりと啜っているアテナがいた。
媛寿とシロガネは明らかに機嫌が悪い。普通の人間がこの部屋に居合わせたならば、あまりの居心地の悪さに入ることさえできなかっただろう。
そんな中で涼しげにしていられるのは、アテナの神格ゆえであり、マスクマンもまた上位精霊であるためだ。ちなみに結城は霊能力が皆無なので、特に影響を受けていないだけである。
「HΣ3→(アテナ、一体どうしたんだよ、コレは)」
室内に入ったマスクマンは、この場で一番話が聞けそうなアテナにまず問い質した。
「あてなさま、ゆうきをみすてた」
問われていたアテナではなく、ヤケ食いしていた媛寿が答えた。
「WΦ4←(はぁ!? なんだそりゃ?)」
「この前来たヤツと、変な約束した」
今度はラム酒を飲み下ろしたシロガネが続けた。
「PΩ9↓(約束って何を?)」
「エンジュ、その言い方は人聞きが良くありませんよ。大したことではありません。あのヒナギという者がユウキに勝てたなら、私が守護神になると言ったまでです」
「Bω7↑(って、おいおい)」
アテナの言葉を聞いて、マスクマンも少なからず驚きと呆れの入り混じった声を出した。
「Bυ5→GG(じゃあ何か? 結城のトコから抜けるってことか?)」
仮面で表情が変わらないが、マスクマンとしては顔をしかめたかった。
「そうなるとは限りません。ユウキが勝てば特に何も変わることはないのですから」
マスクマンから糾されても、アテナは微塵も揺らぐことなくお茶を楽しんでいる。
「Sπ3↓(そりゃ……そうだろうけどなぁ……)」
マスクマンにも、媛寿とシロガネが懸念していることは分かっていた。
いま現在、結城が依頼を受けて、それを達成できているのは、自分たち四柱の力がうまくかみ合っているという部分が大きい。その中でもアテナの権能は中核を占めており、そこが失われるならば、今後の依頼の達成が困難になる。
それどころか、荒事も仕事に含まれる依頼に遭えば、アテナの護りを欠いた結城の命が危ぶまれる。
そのことを当のアテナが解っていないはずがないのに、雛祈の守護神になるという約束をしてしまったので、媛寿とシロガネは機嫌を損ねているのだ。
「こうなったら……」
一通り駄菓子を食べ尽くした媛寿が、妖しい気を放ちながらゆっくりと立ち上がった。
「媛寿があいつに毒キノコ盛ってやる」
普通の人間が聞いたら震え上がるほどの不気味な声で宣告する媛寿。
「相手が細切れになれば、約束も細切れ」
媛寿の言葉に乗っかって、シロガネも日本刀を手に立ち上がる。
「Tφ6←(お、おい。ちょっと待てよ)」
マスクマンの静止も聞かず、二人は恐ろしいほどに暗い気を纏いながら部屋を出ようとする。
「そこまでです」
部屋の敷居を跨ごうとした二人の襟首をアテナが掴み、顔を向かい合わせて押し付けた。
「む~! む~!」
「ムグッ! ムググっ!」
媛寿とシロガネはブチュリと口を合わせられたまま、手足をバタつかせて身悶えるが、アテナの腕力にかかっては1mmも動けない。
「ぷはっ! うへ~、おさけくさい~」
「あまったるい。ラムネ、くさい」
数十秒後にようやく解放された時には、二人とも雛祈への襲撃のことは忘れていた。
「少しは頭が冷えましたか?」
「う~、あてなさま、ひどい~」
「結城に取っておいた、私のファーストキス」
「そんなものは物の数に入りません。私などあのオニ娘と接吻させられたのですよ?」
蹲る媛寿とシロガネを見下ろして仁王立ちするアテナ。その様子を、マスクマンはさもえげつないものを見るような目で見つめていた。
「エンジュ、シロガネ、これはユウキ自身が力を示さねばならないことなのです。そうでなければあのヒナギという者は、いくら言葉で諭しても納得することはないでしょう。それとも、あなたたちはユウキを信じていないのですか?」
「うぅ~」
「それは……」
「私はユウキを信じます」
返答に困る媛寿とシロガネの言葉を待たずに、アテナは自身の想いをしっかりと述べ立てた。
「あなたたちも、それだけユウキのことを想うなら、勝敗の行方を静かに見守るのです」
「む~……えんじゅ、わかった」
「むぅ、了解」
「よろしい」
渋々ながら賛成した媛寿とシロガネの頭を、アテナは優しく撫でさすった。
一触即発だった状況が解かれ、マスクマンも安心して一息ついた。
「ふおっ! ……ありぇ? 僕たしか温泉に入りょうとしてたはず……しょれと何で鼻にティッシュ?」
ようやく目覚めた結城が、訳も分からずに辺りを見回す。直前の修羅場など知る由もなく。
結城たちと二部屋ほど離れたところに、千夏は部屋を取らされていた。
本当は結城たちがいる大部屋ならば、千夏が入っても問題ない広さだったのだが、アテナがキュウに言って部屋を分けさせていた。理由は寝ている結城に変なちょっかいをかけるかもしれないとのことだったが、実際に千夏は暇があったら結城に手を出す気でいたので、その判断は正解だったかもしれない。
そして今、千夏は布団に寝転がりながら悶々としていた。露天風呂での緊迫した空気に当てられたせいで、先程から感情が昂ぶりっぱなしだった。呼吸は荒く、下腹部が疼いて仕方がない。
鬼は感情の昂ぶりを純粋な『力』に変える妖力を持つ。もちろんそれだけに止まらず、他にも様々な能力を持った鬼は存在するが、天坂家に連なる者はその能力が顕著だった。
そして、それが戦闘で発散されない場合、本能的な欲求を増強させてしまう。すなわち、性欲が異様に高められてしまうのだ。
(あぁ~、こんなことならキュウ様にお願いして、オモチャをいくつか借りてくればよかった~)
行き場のない興奮に身悶えしながら、千夏は布団を右に左に転がる。自分の指を使って処理するという手もあるが、その程度では既に満足しない体になってしまっている。
(こんなことなら付いてくなんて言わなきゃよかったかぁ~……)
そもそもの目的を思い出して、千夏は動きを止めた。枕に顔を埋め、結城が持ってきた手紙の内容を思い浮かべた。
『村に鬼が出ようとしています。助けて下さい』と書かれた便箋と、螺久道村の住所。
文面にあった『鬼』というのも気になったが、それ以上に千夏が引っかかったのは、手紙が出された場所だった。
数百年を生きてきて実感するのは、鬼という種族に限定すれば、日本は思っている以上に狭いということだ。千夏たちのように鬼神に近い者から、知性の欠片もない餓鬼に至るまで、鬼というのは目立つ存在なので、出現したならば驚くほど速く耳に届く。そういった情報の伝わり方は、今も大昔も変わっていない。
だからこそ、結城が持ってきた手紙に、千夏は違和感を覚えた。
(螺久道村……そんなトコに鬼が出たなんて話、一度も聞いたことないぞ)
鬼が出たということならば、それがどんなに小さなことであろうと耳に入る。
大江山の鬼の首魁を先祖に持つ天坂家ならなおのことだ。
それが聞いたことがないというならば、可能性は二つ。完全なデマか、本当に未知の鬼が存在しているということ。
もしも本当に鬼がいたならば、相手の出方次第で千夏の対応も変わってくる。現代に生きる鬼の最上位の一つである天坂の者としては、同種族に下手な騒ぎを起こされては住みづらくなるからだ。千夏たちが自らの存在を人間側にそれとなく秘匿している意味がなくなってしまう。
(千春姉への報告はデマかどうかを確かめてからでもいいか)
割と頭が冷えてしまった千夏は、明日の捜索に備えて眠ることにした。
(まっ、あのメガミ様をチョロまかす手も思い浮かばないしな)
「ぐあっ! 千冬、そろそろ口を離せ。腕の肉が千切れる」
「あふっ! ハァ……ハァ……」
「痛ぅ、もう少しで腕を食われるところだ」
「だって……ハァハァ……桜一郎さんが……ハァハァ……声を出すなって言うから」
「当たり前だ。ここは屋敷じゃない」
千夏同様、千冬も露天風呂での空気に当てられ、感情が昂ぶっていた。
そこで雛祈が眠った頃合を見計らって、桜一郎を布団部屋に連れ込んでいた。
叫びだしそうな勢いだったので腕を噛ませたが、桜一郎が鬼でなければ腕の肉を骨ごと食いちぎられていたところだった。
「風呂で一体何があった? お嬢はなぜだか張り切った様子で寝てしまう。お前はいつも以上に昂ぶっている。戦でも始まるのか?」
「ある意味そうですね……あぁ、思い出しただけで震えが止まりません。お風呂に浸かってる間もお腹がキュウキュウしっぱなしでした」
「待て。自分たちも明日から調査に出ることになる。今はこの辺で―――」
「あと五回。あと五回お願いします」
「せめて何があったか話し―――ムグッ!」
桜一郎が全て言い終わる前に、千冬が口を塞いでしまったので、その後も桜一郎は千冬の欲求を満たすために貪られることになる。
ちなみに布団部屋なのでバレていないと思われていたが、一懇楼の若い女中たちが密かに覗いていたことが分かるのは少し後の話である。
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