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友宮の守護者編

奮起

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「向こうは随分派手にやってんなぁ。バラキモトのヤツ大丈夫か?」
 アテナと原木本の闘いの喧騒は、友宮邸の前庭にまで届いていた。
 コンクリートの壁が砕け、重い瓦礫が落ち、様々な建材が転がり奏でる音を聞きながら、トミーは倒れ伏すシロガネの前に立っていた。
 端的に言えば、シロガネはトミーの策略に見事に引っかかった。仕掛けは単純だった。結城たちの前に現れる直前、トミーは爆竹を括りつけた葉巻に火を点け、前庭の彫像の一つに置いていた。シロガネが銃を撃たせる暇を与えない猛攻を仕掛けてくることも読んでいたので、あとは回避行動を取りながら時間を待つだけだった。葉巻の火が爆竹を点火し、破裂。銃撃を警戒していたシロガネは、その破裂音を銃声と誤認し、防御体勢を取ったことで最大の隙を作ってしまったのだ。
 今、真白いメイド服は鮮血によってマーブル状に染まっている。腹部はライフル弾が貫通し、右脚は欠損こそ免れたが、大腿に負ったダメージで歩くことはできない。
 唯一シロガネにできることと言えば、首を巡らせてトミーを恨みがましく見ることぐらいだった。
「そんなに熱く見つめるなよ。照れるじゃねぇか」
「お前、絶対に斬る」
「そうか。けどよ、てめぇはあと一発で終わるぜ?」
 トミーは弾を込めなおしたリボルバー拳銃の照星を、シロガネの眉間に合わせて止めた。もちろん念のためにシロガネと距離を取っている。事実上、引き金を引けばシロガネの敗北は決してしまう状況だった。
「だが同じ化身の誼みってモンもある」
 シロガネに向けていたリボルバーを一旦下げ、トミーは少し口元を緩めて言った。
「お前、俺の情婦イロにならねぇか?」
「…………」
「お前の容姿ナリはなかなかのモンだ。俺の情婦イロになるってんなら、別に殺す理由はねぇ。俺たちはトモミヤのダンナから侵入者は殺せって言われてるが、それ以外は好きにしていいってことになってってからな。どうだ?」
 静かな口調で友宮側の軍門に下ることを勧めてくるトミー。その様子から同族の処遇について慮っていることは、シロガネにも見て取れた。確かにこの場で降伏すれば、破壊されて現世から消滅することだけは免れるかもしれない。しかし、シロガネにはたとえ魂を秤にかけようとも、譲れないものが一つだけあった。
「ワタシが、エロいことするのも……」
 シロガネは芝生に両掌をつき、
「ワタシが、エロいことさせるのも……」
 両腕に目一杯の力を込めて上半身を起こし、
「この世で、結城だけ」
 トミーを鋭く睨みつけた。決して下ることはない。その意志を以って。
「……そうかよ。残念だ。だが、てめぇを殺るのは流石に俺も気が咎めるぜ。ちょいと時間を置いてからにしてやる。その間に屋敷に入った連中を片付けてくるか―――!」
 トミーが屋敷へ赴くために背を向けようとした矢先、日本刀が不規則な回転をしながら飛来した。間一髪避けられたからいいが、もう少しで切っ先がトミーの眉間に突き立っていたところだ。
「絶っ対に、行かせない。ワタシの、ご主人様マスターの所には」
「てめぇ……」
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