小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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友宮の守護者編

適任

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 マスクマンが断言した敵の正体に、全員がさらなる緊張を強いられた。敷地内に潜入さえできれば、あとは儀式を阻止するだけと思っていたところ、友宮側の対抗措置は予想外だった。それなりの武装はしてきたが、人ならざる者の力は時として通常兵器よりよほど性質が悪い場合が多々ある。それが上位になればなるほど、厄介さは増していく。精霊ともなれば、必ず何かの現象を支配しているので、その厄介さも一際だった。
「NM、WX、LT、BB(まさか、そんなところから、入ってくる奴が、いるとはな)」
 どういう言語を話しているのか全く解らないが、一同は声の主が何を伝えたいのかはっきり解った。マスクマン同様、意思を直接相手に伝える交信方法だ。
「FV、RZ。D、MB、GV、XC、DN、I(その犬神が、連れてきたのか。飼い犬に、手を噛まれる、というコトワザが、この国にあるらしいが、こういうこと、だな)」
「トオミ!」
「了解」
 佐権院に呼ばれたトオミは素早く反応し、本来の姿である丸眼鏡の形態に戻った。すかさずそれを手に取り、自身に装着する佐権院。霊視能力が本分の佐権院と、それを強化できるトオミ。二人が合わされば、どんな存在であろうとも、どこに隠れていようとも、まるで意味を成さない―――はずだった。
「私とトオミの力を以ってしても視えない……まさか」
「IΨ1↓。YΘ4←(あいつは姿を隠すことに特化した精霊だ。あんたでも視えねぇよ)」
「どおり、で。矢が飛んできた方向を追っても、何もいなかった」
 マスクマンの解答に、シロガネも納得したように頷いた。
「姿を隠す力!? それじゃ居場所が全然分からないってこと!?」
「矢が飛来した際も、直感で攻撃を察知できたのみでした。姿を消す能力の、相当な上位のようですね」
 結城とアテナも相手が難敵と分かり身構えるが、そんな二人の前にマスクマンが右腕を軽く上げた。
「TΠ3↓。ZΓ7→?(ここはオレが引き受けるから、お前らは先に行け。時間ねぇだろ?)」
「マスクマン!?」
 予想外の敵との遭遇に加え、マスクマンの予想外の提案に、結城は余計に驚いた。
「では任せるが、本当に良いのだね?」
「Bω9↑(その代わりココナッツミルク三本だ)」
 念押ししてきた佐権院に、マスクマンは指を三本立てて見せた。
「NΞ6↓。MΣ7↑(今回の依頼、なんかオレだけがタダ働きさせられてるみてぇだったからな。オレにもちょっとは報酬よこせ)」
「……分かった。三本と言わず、三箱手配させてもらおう」
「GΛ(上等だ)」
 佐権院からの返事を受け取ると、マスクマンは早く行けと言う様に掌をひらひらと揺らした。それを見た皆が敷地の中心に足を向ける中、結城がわずかに立ち止まって振り向いた。
「気をつけてね、マスクマン」
「YΔ。Kσ1→(おう。安心しとけ)」
 マスクマンは振り向くことはなかったが、結城は彼の背中を信じ、皆とともに屋敷へと走っていった。
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