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第1話 転生したら「〇〇ホ」だった件
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仕事に行きたくない。もうちょっと寝ていたい──
微睡んでいた俺は、何かに包まれながら微妙に揺れていることに気づいた。
起き上がろうとしたけれども身体がいうことをきかない。しっかり目を開けることもできない。
金縛りにでも遭ってしまったのだろうか、遅刻してしまう──そんなことを考えていたら、力強く全身を抱きしめられた。俺の身体全体を覆うとかどんな状況だよと思っていると、急に頭が冴え、眼前に絶句してしまう。
視界に飛び込んできたのは、冴えない巨大な男の顔。大学生くらいだろうか、少なくとも俺と同じ世代のおっさんではない。某マンガに登場する奴かよって思うくらいの大きさで、食われるんじゃないかってくらい近づいていた。
おもむろに身体が90度傾く。俺の頭と足を握って更に顔を近づけるもんだから、食われるんかなと観念した。男の手に力が入る。
いよいよ死んでしまうのか。なんかよくわからない最期だったな──
男は俺を口に入れようとしない。そればかりか、巨大な棒のようなものを俺の口につっこんだ。
息ができない──と思ったが、呼吸をしなくても平気なことに気づく。
次の瞬間、自分の意図しない音声が口から溢れていた。そして男はその大きな親指で俺の身体をあちこち指圧する。
あれ? なんか想像と違ってないか?
自分の身体を確認することはできなかったのだが、どうやら俺は人間ではないのではないか。
ごおおおおという音とともに周囲が暗くなる。
奥に目をやると、ガラスが鏡のようになってた。そこに映るのは巨大な男の背中とゲーム中のスマホ。
あ、俺はスマホになったんだ──ってなんで!?
記憶の糸を手繰っていく。そういえばブラック企業勤めの俺は、心身ともに疲弊した状態で真夜中に会社を出た。ぼーっと歩いているとき、目の前が真っ白になったのだ──トラックにでも轢かれたのだろう。
そして現在に至る。
自分がスマホに転生したと考えると、最初から辻褄が合う。納得はできないけど。
ここは電車の中なんだ。そして俺は大学生くらいの男が所有しているスマホ。意味が分からない。と、俺の意識は遠退いた。
次に気が付いたのは大学の講義室。
なるほど、やはりこいつは大学生だったんだな。
やっぱり口に棒をつっこまれて、意思とは関係なく音声を吐き出している。つまり俺が咥えているのはイヤホンか。周囲の音が聞こえるのはマイクが耳の役割をしているからだな。
いろいろと分析できてはいるのだが、そもそも講義を聞かないでゲームをやっていていいのか大学生。
ふいに身体がぶるっと震えた。今度はSNSのメッセージが届いたようだ。
自由だな本当に。
*
四六時中俺はいじくられていた。
こう表現すると誤解を招きそうだが、スマホなのだから仕方ない。
男は友達と思しき人と会って飯を食っているときですら、俺を手放そうとはしないのだ。一緒にいるんだから話とかしたらいいのにというのはおっさんだからだろうか。老害と言われても仕方ないのかもしれない。
帰宅してからも俺を離してはくれない。挙句に風呂場まで持っていかれた。
誰が悲しくておっさんが男の裸を見なければならんのだ──嘆きと溜息が零れ出る。
「あっ!」
スマホなのだから実際は何も物理的に起きてはいないはずだが、男が手を滑らせた。
待って! 水没しちゃう!
ああ、転生モノはいろいろ読んだりしたことあったけど、自分がスマホになるとは予想外だったし溺死してしまうとか、前世でなんか悪いことしたのかな──なんか納得のいかない人生だったよ。
次回 転生したら「な○○う」だった件
微睡んでいた俺は、何かに包まれながら微妙に揺れていることに気づいた。
起き上がろうとしたけれども身体がいうことをきかない。しっかり目を開けることもできない。
金縛りにでも遭ってしまったのだろうか、遅刻してしまう──そんなことを考えていたら、力強く全身を抱きしめられた。俺の身体全体を覆うとかどんな状況だよと思っていると、急に頭が冴え、眼前に絶句してしまう。
視界に飛び込んできたのは、冴えない巨大な男の顔。大学生くらいだろうか、少なくとも俺と同じ世代のおっさんではない。某マンガに登場する奴かよって思うくらいの大きさで、食われるんじゃないかってくらい近づいていた。
おもむろに身体が90度傾く。俺の頭と足を握って更に顔を近づけるもんだから、食われるんかなと観念した。男の手に力が入る。
いよいよ死んでしまうのか。なんかよくわからない最期だったな──
男は俺を口に入れようとしない。そればかりか、巨大な棒のようなものを俺の口につっこんだ。
息ができない──と思ったが、呼吸をしなくても平気なことに気づく。
次の瞬間、自分の意図しない音声が口から溢れていた。そして男はその大きな親指で俺の身体をあちこち指圧する。
あれ? なんか想像と違ってないか?
自分の身体を確認することはできなかったのだが、どうやら俺は人間ではないのではないか。
ごおおおおという音とともに周囲が暗くなる。
奥に目をやると、ガラスが鏡のようになってた。そこに映るのは巨大な男の背中とゲーム中のスマホ。
あ、俺はスマホになったんだ──ってなんで!?
記憶の糸を手繰っていく。そういえばブラック企業勤めの俺は、心身ともに疲弊した状態で真夜中に会社を出た。ぼーっと歩いているとき、目の前が真っ白になったのだ──トラックにでも轢かれたのだろう。
そして現在に至る。
自分がスマホに転生したと考えると、最初から辻褄が合う。納得はできないけど。
ここは電車の中なんだ。そして俺は大学生くらいの男が所有しているスマホ。意味が分からない。と、俺の意識は遠退いた。
次に気が付いたのは大学の講義室。
なるほど、やはりこいつは大学生だったんだな。
やっぱり口に棒をつっこまれて、意思とは関係なく音声を吐き出している。つまり俺が咥えているのはイヤホンか。周囲の音が聞こえるのはマイクが耳の役割をしているからだな。
いろいろと分析できてはいるのだが、そもそも講義を聞かないでゲームをやっていていいのか大学生。
ふいに身体がぶるっと震えた。今度はSNSのメッセージが届いたようだ。
自由だな本当に。
*
四六時中俺はいじくられていた。
こう表現すると誤解を招きそうだが、スマホなのだから仕方ない。
男は友達と思しき人と会って飯を食っているときですら、俺を手放そうとはしないのだ。一緒にいるんだから話とかしたらいいのにというのはおっさんだからだろうか。老害と言われても仕方ないのかもしれない。
帰宅してからも俺を離してはくれない。挙句に風呂場まで持っていかれた。
誰が悲しくておっさんが男の裸を見なければならんのだ──嘆きと溜息が零れ出る。
「あっ!」
スマホなのだから実際は何も物理的に起きてはいないはずだが、男が手を滑らせた。
待って! 水没しちゃう!
ああ、転生モノはいろいろ読んだりしたことあったけど、自分がスマホになるとは予想外だったし溺死してしまうとか、前世でなんか悪いことしたのかな──なんか納得のいかない人生だったよ。
次回 転生したら「な○○う」だった件
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