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第四部
勝手でごめん。
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ヘッドボードに背中を預け、俺はリヒトの服を脱がすこともせず、ただ一言「跨って」と自分の上にリヒトを跨がらせた。理由をつけて愚図るかとも思ったけど、リヒトの性格的にそれはないなと結論づけて跨るのを待つ。
「パジャマ、着たままだけど……」
「脱がせる時間も惜しいんで。リヒトは何もしなくていいですよ」
リヒトがムッと上目遣い気味に睨んでくる。こんな時でなければ、そのまま押し倒してグズグズにするのに。早くと顎で示せば、リヒトは渋々ながらも跨った。
「よ……っと」
「ぇ、ぁ……?」
熱を持ったリヒトの身体を、トントンと下から突き上げてやる。お互い何も脱いでいないのに既に熱いそれは、果たしてどちらのものなのか。
「あ、や、やだっ」
リヒトの身体が大袈裟なほどに跳ねるのがわかった。中に挿れている時と変わらないリズムで優しく攻め立てれば、堪らないとばかりにリヒトは身体を仰け反らせる。
「ん、あぁっ……、やっ」
リヒトが腰を浮かせ逃げようとするのを、手を伸ばして無理やり押さえつける形で引き止める。
「ひ……」
「言いましたよね。優しくするつもりはないって」
「まっ、て……これ、へんっ」
愚図りだしたリヒトの会陰を、張り詰めんばかりに膨れ上がった自身でぐり、と押し上げてやる。前に浴室で嘔吐してからは、無理にそこをイジることはしてこなかった。
だからか、リヒトは押し寄せる快楽に慣れておらず、俺の上で嗚咽を口から零しながら身体を震わせている。
「あ……、ああっ、んぅ」
「リヒト、気づいてます? さっきから軽くイッてるの」
「イッ、て、ない……っ」
まだ認めないつもりらしい。横目でスマフォを見れば、時間は一分を切ったところだ。勝敗はついたも同然なのだが、この強情な恋人を納得させるには、もう少し虐めてやる必要がある。
「リヒト」
「ふぇ……? んっ」
親指で軽く唇をなぞり、そのまま軽く口に入れてやる。何も言わなくとも、舌をおずおずと絡ませてくるのを見るに、たいぶ仕上がっている。
「これは? これで欲しがりさんじゃないって言えます?」
「んんん……」
その目は既に蕩けていて、逆にこちらが齧りつきたくなってしまうほどに甘い表情をしている。指を引き抜き、軽く唇を重ねてから「リヒト?」と頬を撫でて――
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
「あー……」
時間切れだ。
リヒトは仕上がってはいるものの、自分から求めることはしなかったため、これは大人しくこちらが負けを認めるしかない。軽くため息をついて「俺の負けです」とリヒトを上から降ろそうと腰に手を回す。
「んっ」
大袈裟に跳ねたリヒトが、おず、と俺を見上げる。
「おわっ、た……?」
「終わりました。俺の負けで――」
「じゃあ、ユーリの、ほしいっていっても、い?」
「……駄目です」
危うく、いつもの調子でいいよなんて言うところだった。そもそも、今の目的はそれじゃなく、リヒトにピアスをつけるのが目的で――
なんて頭を悩ませる俺の心中を知ってか知らずか、リヒトはその潤んだ目で見つめたまま、首を少しだけ傾げてみせた。
「ユーリ……?」
「ああもう、誘ってきたのはそっちですから……っ」
結局俺も、この恋人を甘やかしてしまう。普段は甘えベタな、このどうしようもなく可愛い人を。
「……よし」
気を失ったリヒトを起こさないよう、俺は身体をそっと起こした。寛げたパジャマから見えるリヒトの身体には、リヒト自身が吐き出した欲やら潮やら、俺の唾液やらなんかもうよくわからんものがかかっている。
正直それだけで興奮して、意識のないリヒトをまた抱いてしまいそうになる。けれどそれを必死で律して、俺はクローゼットからタオルを何枚か取り出すと一旦洗面所へと向かう。お湯で絞ったタオルで自分を軽く拭いた際、鏡に映る背中に、爪痕が残っているのが堪らなく愛おしく感じた。
リビングの時計はすでに日付を越えている。
あまりにもリヒトが可愛くお強請りするものだから、危うく当初の目的を忘れるところだった。
お湯で絞ったタオルを持って寝室へとまた戻る。身体をそっと拭いた際、リヒトが「ん……」と身をよじるのに理性を飛ばさないようしながら拭ききってやる。そのまま後ろも、と足を少し持ち上げると、こぽ、と中に出した白濁が溢れてきた。
「……駄目だろ俺」
頭を振って雑念を払い、そこもなんとか拭ききる。
元魔族の名残か何か、リヒトは華奢なわりに身体は相当頑丈だ。ここまで抱き潰され、中に出されれば多少なりとも不調を感じるはずだけども、リヒトは案外けろりとしている。
俺としては嬉しいことに変わりないけれど。
「早いとこ終わらせよ……」
リヒトの身体を整えてから、サイドテーブルに置きっぱなしにしていたニードルとピアスを手に取る。リヒトの右耳を消毒してから、袋を開けてニードルに軟膏を塗る。裏側にゴムを当てると、躊躇いもせずに一気に差し込んだ。
「んっ」
「大丈夫、痛くないよ」
手の甲で右頬を軽く撫でてから、アクアマリンのついたピアスを押し込むようにして着けた。
「勝手でごめんね」
ニードルを片付けてから、新しいものを使って自分の左耳にもピアスを着ける。それも片してからリヒトの隣に潜り込めば、無意識なのか、リヒトから擦り寄ってきたから抱きしめた。
「大丈夫だよ。今度こそ、絶対、絶対に」
前世は子供だったから、君の守り方なんてわからなかったけれど。今世は俺に君を、守らせて。
「パジャマ、着たままだけど……」
「脱がせる時間も惜しいんで。リヒトは何もしなくていいですよ」
リヒトがムッと上目遣い気味に睨んでくる。こんな時でなければ、そのまま押し倒してグズグズにするのに。早くと顎で示せば、リヒトは渋々ながらも跨った。
「よ……っと」
「ぇ、ぁ……?」
熱を持ったリヒトの身体を、トントンと下から突き上げてやる。お互い何も脱いでいないのに既に熱いそれは、果たしてどちらのものなのか。
「あ、や、やだっ」
リヒトの身体が大袈裟なほどに跳ねるのがわかった。中に挿れている時と変わらないリズムで優しく攻め立てれば、堪らないとばかりにリヒトは身体を仰け反らせる。
「ん、あぁっ……、やっ」
リヒトが腰を浮かせ逃げようとするのを、手を伸ばして無理やり押さえつける形で引き止める。
「ひ……」
「言いましたよね。優しくするつもりはないって」
「まっ、て……これ、へんっ」
愚図りだしたリヒトの会陰を、張り詰めんばかりに膨れ上がった自身でぐり、と押し上げてやる。前に浴室で嘔吐してからは、無理にそこをイジることはしてこなかった。
だからか、リヒトは押し寄せる快楽に慣れておらず、俺の上で嗚咽を口から零しながら身体を震わせている。
「あ……、ああっ、んぅ」
「リヒト、気づいてます? さっきから軽くイッてるの」
「イッ、て、ない……っ」
まだ認めないつもりらしい。横目でスマフォを見れば、時間は一分を切ったところだ。勝敗はついたも同然なのだが、この強情な恋人を納得させるには、もう少し虐めてやる必要がある。
「リヒト」
「ふぇ……? んっ」
親指で軽く唇をなぞり、そのまま軽く口に入れてやる。何も言わなくとも、舌をおずおずと絡ませてくるのを見るに、たいぶ仕上がっている。
「これは? これで欲しがりさんじゃないって言えます?」
「んんん……」
その目は既に蕩けていて、逆にこちらが齧りつきたくなってしまうほどに甘い表情をしている。指を引き抜き、軽く唇を重ねてから「リヒト?」と頬を撫でて――
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
「あー……」
時間切れだ。
リヒトは仕上がってはいるものの、自分から求めることはしなかったため、これは大人しくこちらが負けを認めるしかない。軽くため息をついて「俺の負けです」とリヒトを上から降ろそうと腰に手を回す。
「んっ」
大袈裟に跳ねたリヒトが、おず、と俺を見上げる。
「おわっ、た……?」
「終わりました。俺の負けで――」
「じゃあ、ユーリの、ほしいっていっても、い?」
「……駄目です」
危うく、いつもの調子でいいよなんて言うところだった。そもそも、今の目的はそれじゃなく、リヒトにピアスをつけるのが目的で――
なんて頭を悩ませる俺の心中を知ってか知らずか、リヒトはその潤んだ目で見つめたまま、首を少しだけ傾げてみせた。
「ユーリ……?」
「ああもう、誘ってきたのはそっちですから……っ」
結局俺も、この恋人を甘やかしてしまう。普段は甘えベタな、このどうしようもなく可愛い人を。
「……よし」
気を失ったリヒトを起こさないよう、俺は身体をそっと起こした。寛げたパジャマから見えるリヒトの身体には、リヒト自身が吐き出した欲やら潮やら、俺の唾液やらなんかもうよくわからんものがかかっている。
正直それだけで興奮して、意識のないリヒトをまた抱いてしまいそうになる。けれどそれを必死で律して、俺はクローゼットからタオルを何枚か取り出すと一旦洗面所へと向かう。お湯で絞ったタオルで自分を軽く拭いた際、鏡に映る背中に、爪痕が残っているのが堪らなく愛おしく感じた。
リビングの時計はすでに日付を越えている。
あまりにもリヒトが可愛くお強請りするものだから、危うく当初の目的を忘れるところだった。
お湯で絞ったタオルを持って寝室へとまた戻る。身体をそっと拭いた際、リヒトが「ん……」と身をよじるのに理性を飛ばさないようしながら拭ききってやる。そのまま後ろも、と足を少し持ち上げると、こぽ、と中に出した白濁が溢れてきた。
「……駄目だろ俺」
頭を振って雑念を払い、そこもなんとか拭ききる。
元魔族の名残か何か、リヒトは華奢なわりに身体は相当頑丈だ。ここまで抱き潰され、中に出されれば多少なりとも不調を感じるはずだけども、リヒトは案外けろりとしている。
俺としては嬉しいことに変わりないけれど。
「早いとこ終わらせよ……」
リヒトの身体を整えてから、サイドテーブルに置きっぱなしにしていたニードルとピアスを手に取る。リヒトの右耳を消毒してから、袋を開けてニードルに軟膏を塗る。裏側にゴムを当てると、躊躇いもせずに一気に差し込んだ。
「んっ」
「大丈夫、痛くないよ」
手の甲で右頬を軽く撫でてから、アクアマリンのついたピアスを押し込むようにして着けた。
「勝手でごめんね」
ニードルを片付けてから、新しいものを使って自分の左耳にもピアスを着ける。それも片してからリヒトの隣に潜り込めば、無意識なのか、リヒトから擦り寄ってきたから抱きしめた。
「大丈夫だよ。今度こそ、絶対、絶対に」
前世は子供だったから、君の守り方なんてわからなかったけれど。今世は俺に君を、守らせて。
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