【本編完結済】前世の英雄(ストーカー)が今世でも後輩(ストーカー)な件。

とかげになりたい僕

文字の大きさ
上 下
63 / 170
第二部

洗ってるだけ

しおりを挟む
 湯気が多少こもっているとはいえ、それでもかなりはっきりとユーリの姿が見える。つまり、僕の姿も見えるということ。
 数え切れないくらいユーリの身体は見てきたし、僕の身体も同じくらい見られてきたけれど、それとこれとは別だ。タオルが落ちないよう軽く手で押さえつつ、ユーリが用意してくれた椅子に座った。
 シャワーを捻り、手でお湯の調整をしていたユーリが「本当はさ」と僕を、厳密には僕が座る椅子に視線を向けながら笑った。

「真ん中が開いてるやつがよかったんだけど、ちょうど売り切れててさ。リヒトもそっちのがいいでしょ?」
「よくない。むしろこっちでよかったよ」

 売り切れグッジョブ。真ん中に穴だなんて、そんなのバランスが悪いし、何よりユーリにナニをされるかたまったもんじゃない。それこそ身体を洗うどころではなくなってしまう。
 ユーリはシャワーを片手に持ちながら、僕の髪をゆっくり濡らしていく。その手つきが暖かく、まるでユーリに頭を撫でられているような錯覚に陥ってしまう。

「……っ」

 駄目だ。意識した途端、身体に熱が集まっていく。シャンプーをしているせいで目を開けられないが、これは絶対、今、大変なことになっているに違いない。それを隠すためにも、僕は身じろぎをするフリをして手を前へと持ってきた。

「リヒト、どう? 気持ちいい?」
「ん……っ」

 僕のいいとこを知っているユーリは、普段“気持ちいい?”なんて聞くことはない。それが妙に新鮮で、僕は違うことを考えてしまう。

「目、開けていいよ」

 言われて開ければ、身体のいたるところに赤い跡をつけた僕が鏡に写っていた。その姿にまた恥ずかしくなって、思わず背中が丸くなる。

「リーヒト、背中伸ばして。洗えないよ?」
「う、うん……」

 仕方なく伸ばせば、スポンジでふわふわにした泡が、ユーリの手から僕の背中へと伝わってきた。手が背中、うなじ、腰に触れるたび、僕の口からは「んっ」と意図しない甘い吐息が漏れる。
 ユーリのことだからてっきり意地悪してくると思ったのに、僕の予想とは反対に、ユーリの手は真剣に僕を綺麗にしていく。

「座ったままだとここ、綺麗に出来ないね?」
「ひうっ」

 ここ、とユーリの指がつついたのは、椅子に面した部分だ。近くを手が行き来しているだけだというのに、僕の身体は情けなく、その感触を快楽として拾い上げていた。

「ははは。リヒト、そんなに身体を揺らしてどうしたの?」

 わかってて言ってるしやってるんだ。だったら僕も素直になんて言ってやるもんか。

「こ、こそばいんだ。洗うならちゃんと洗えよ」
「へぇ……、それは失礼しました。それじゃ次は前ね」

 ユーリが背中側から移動してくる。僕は完全に勃ち上がったソレを見られたくなくて、反射でまた背中を丸くして慌てて隠す。

「じ、自分で洗えるから。ユーリは早く湯船に入りなよ」
「さっき、ちゃんと洗えって言ったばかりだよね? それとも何、リヒトは何か困ることでもあるの?」
「それは……っ」

 悔しい。だけどユーリに慣らされた身体は逆らうことなど出来ず、おずおずと前を曝け出す形を取る。タオルの上からでもわかるソレに、ユーリの顔がにやりと歪んだ、気がした。

「じゃ、まずは上からね」
「……んっ」

 手が鎖骨を滑り、肩、二の腕、肘、指先と進んでいく。まるで指を絡め合うような動きに、僕は恥ずかしくなって反対方向へと顔を向けた。
 そのまま手は脇の下へ入り、そこも念入りに指先が行き来する。そのたびに僕は「んっ」と鼻から息を漏らすような声を出し、身体をびくびくと反応させた。

「次は、ここ」
「ひあっ」

 胸の先端を摘まれ、コリコリとこねるような動きに思わず声が出てしまう。赤くなったそこは、ユーリの動きに合わせるようにさらに赤く、ぷっくりと膨らんでいくのだからたまったもんじゃない。

「ユー、リ、これ、洗ってる……?」
「そうだよ。洗ってって言ってたしね」

 あくまでも洗っていると言い張るつもりなのか。
 自分が言い出したことではあるが、正直、もう限界が近かった。ユーリにちゃんと触ってほしいし、早くユーリを受け入れたいとまで思っている。
 けれど洗えと言ったのは自分だし、という葛藤が、僕の口から素直な言葉を言うのをギリギリのラインで遮っていた。

「タオル取るよ」
「へ?」

 頭の中でぐるぐると考える間にもユーリは上半身を洗い終え、力の入っていない僕の手から簡単にタオルを剥ぎ取ってしまう。はち切れそうなばかりに勃つソレが恥ずかしく、僕は手で自分の顔を覆った。

「リヒト、汚しちゃってるね。今綺麗にしてあげる」
「ぇ……ぁ……やだ、あっ」

 ユーリは僕のモノに舌を這わせ始め、先端からトロトロと溢れ出る液体を慈しむように舐め取っていく。裏スジをチロチロと舌が這い、カリ部分を手で軽くしごかれる。

「あ、ああっ、んっ……だめ、ユーリっ」

 我慢出来ず、僕はユーリの顔目掛けて欲を吐き出してしまう。ユーリは金の髪から零れ落ちる白濁を指先に絡め、それを見せつけるようにぺろりと舐め取る。

「あーあ、俺まで汚れちゃったね。リヒトに言われて綺麗にしただけなのに」
「ち、違わない、けど、今のはユーリが、その……」

 恥ずかしくてそれ以上が言えない。口をぱくぱくさせる僕にユーリは笑って、両手で頬を挟むように触れてきた。

「うん、何? 言って? リヒトの言うことなら、なんだって叶えるよ?」

 その甘い声と響きは、なんてこうも簡単に僕をぐずぐずにしてしまうのだろう。

「……ユーリの」
「うん」
「ユーリの、全部、欲しい」
「いいよ」

 そうして重ねあった唇は、少し僕の味が残っていて苦かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

告白

すずかけあおい
BL
「河原美桜くん。好きです」 クラスメイトの志波から人生初の告白をされた美桜は、志波のことを全然知らないからと断るが、なぜか「これからよろしくね」と言われて……。 〔攻め〕志波 高良(しば たから)高二 〔受け〕河原 美桜(かわはら みお)高二

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...