【本編完結済】前世の英雄(ストーカー)が今世でも後輩(ストーカー)な件。

とかげになりたい僕

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第二部

兄でいたい

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 夢ならよかったのに。
 ベッドに寝転がり、仰向けで腕を顔の上に乗せて、何度もそう願った。けれどこの気怠さは誤魔化せないし、さっきのナギの顔が忘れられない。

「兄さん」

 軽くノックをして、ナギが入ってくる気配がした。ここで出てけって言えればいいのに、やっぱり兄な僕はそれを言うことが出来ずに、部屋に入るのを黙って受け入れた。

「兄さん、さっきのことだけど」
「待った。ナギ、本当は違うよな……? ちょっと、ほら、寝ぼけて好きな子の夢を見ただけ、だよな?」

 ナギを遮って言葉を捲し立てる。これで肯定してくれと願いながら。

「……兄さんのその質問だと、俺の好きな人は男ってことになるけど」
「僕はそれでも歓迎する。父さんと母さんへの説得も手伝うし」

 いい兄で、理解ある兄でいたい。いさせてほしい。けれどナギはベッドの側まで来ると、片膝を乗せ、そのまま僕の上になるように乗ってきた。二人分の重みには耐えられないのか、ベッドが有り得ないほどに深く沈んだ。

「俺の」
「ナギ」
「俺の好きな人は」
「駄目だ」
「兄さん、貴方だよ」
「ナギ……!」

 その目は本気で、目の奥には獰猛な光が見える。
 僕は顔にやっていた手をどけ、その目を正面から見据えるようにすると「ナギ」と上にいるナギの両肩に手をやった。

「今なら何も……、さっきのことも、今の言葉も、なかったことに出来るから。だから、兄と弟でいよう? 僕は、ナギを弟としてしか見れないよ……」

 最後の願いを込めて「頼むから……」と掻き消えるほど、小さく呟いた。ナギが「わかった」と答えるのに安堵し、肩を押さえる手から少し力が抜ける。

「なら、兄弟じゃなくしちゃおうか」
「え……?」

 ふらりとナギが上半身を起こし、僕の上から身体をずらす。その意味を計りかねていると、ナギは僕のジャージに手をかけ、下着ごと一気にずり下ろし、床へと放り投げる。

「え、え……?」
「兄さんが俺を弟としてしか見れないのなら、無理にでも意識させるしかないよね」

 そう言い、ナギも自分の勃ち上がったモノを出し、僕の足を少し持ち上げ、後孔へとあてがった。血の気が引くのがわかり、僕は「やめて、だめ!」とナギに手を伸ばす。ぬるぬると先端が後孔を掠め、滑りをよくしていく。

「ナギ、だめ……! たのむから……」
「兄さん……っ」

 ブーッ、ブーッ、ブーッ――
 僕のジャージに入っていたスマフォが鳴っている。鳴りやまないそれに、ナギが珍しく苛立ってジャージからスマフォを取り出した。

「……ユーリ?」

 突きつけられた画面には、確かにユーリの名前が出ている。スマフォは僕が取るのを待つように、鳴り止む気配はない。

「……恋人、だよ」

 素直に言ったほうがいいと考え、僕はナギから顔を背けるようにして吐き捨てる。

「へぇ。それって、あの有志家だよね? その長男なんだ」
「次男だよ。わかったら早くスマフォを」

 ナギが画面をスライドさせた。そのままハンズフリーにしたのか、意地悪く笑い、スマフォを僕に見せつける。

『リヒト? 実家着いた?』
「ユーリ……いたっ」

 僕が名前を呼んだと同時に、ナギがその先端を僕へと埋めてきたのだ。慣らされていないそこは、異物を外へ出そうと、必死に抵抗を繰り返し痛みを発している。

「ナギっ、だめだっ……て」
『リヒト?』
「あー、どうも。兄さんの弟のナギです。兄がお世話になってます」

 至って冷静に返しながらも、ナギは奥に進むことをやめようとはしない。ギチギチと走る痛みに、目からは涙が溢れてきた。

「兄さんは俺がもらうんで、手、引いてもらえますか。つか、引けよ。あんたさ、企業の御曹司なんだろ? 兄さんとは不釣り合いなんだよ」
『……で?』
「インスト見たよ。婚約パーティしたらしいね。兄さんはそういうのに疎いから、知らないみたいだけど。兄さんを弄ぶのはこれで終いにしてくれる?」

 痛みが酷い中でも、やけにそれははっきり聞こえた。

「ユー、リ……、婚約って、え? そのために帰った、の?」
『違う。それは違うけど、ああ今はそんなことより』
「ちょっと黙っててくれる?」

 ユーリが何か言おうとしたけれど、ナギが奥を抉るように腰を動かし、その痛みで何も聞こえなかった。「いぎっ」と悲鳴が口から漏れ、スマフォからユーリの『リヒト!?』と悲痛な声が聞こえた。

「じゃ、そういうことだから。兄さんには、金輪際、近寄らないでくれ」
「いだいっ、だめ、やめて……っ、ナギッ」

 ナギが腰を激しく打ち付ける。僕はただただ早く終わればいいと、目を閉じ痛みに耐え続けた。ご飯に呼ばれたナギが出ていく頃には、もうスマフォは切れていた。

 先にお風呂へ入ると伝え、僕は一人、頭からシャワーを浴びる。
 どろりとした液体が内ももを伝い、お湯と共に排水口へ吸い込まれていく。その際微かにお湯が赤く染まっていることに気づいて、僕はそっと後孔に手を伸ばした。

「いたっ」

 ぬるっとした感覚にそっと指先を見てみる。指先が赤く染まっている。痛いとは思ったが、まさかここまで酷くされていたなんて。
 そこまで考えて、そういえば、と僕は思い出す。
 ユーリに入れられる時も、入れられた時も、血が出たことなんてなかった。前世は別として、にはなるけど。

「ユーリ、ユーリ……っ」

 本当に婚約者が? なら、僕は手を引いたほうがいいのかな。頭の中がこんがらがって、上手く考えがまとまらない。
 心配した母さんに呼ばれるまで、僕はずっとシャワーを浴び続けた。
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