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第二部
遠く離れた場所で
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ユーリは夏休みまでグループ課題があるとかで、結局僕とは会わないまま、実家に帰ってしまった。出発の日『行ってくるよ』と連絡がきたけれど、僕はそれに返すことはしなかった。返事をしないなんて、別に今回だけじゃなかったし、ユーリにしてみればいつものことだろう。
バイトで疲れ果てて、いつものようにボロアパートへ帰ろうと鞄から鍵を出そうとし、いつものとは違う鍵を取り出した。
「……あ」
そういえば、ユーリが前に合鍵を渡してくれたんだっけ。『リヒトならいつでも来ていいよ』なんて、僕が悪人だったらどうするつもりだったんだろう。
仕方ないやつだなぁと苦笑いをして、鍵を鞄へと戻す。僕の足が向かうのは、いつものボロアパート、ではなく、ユーリの家だった。
「……お邪魔します」
もちろん、返事なんてない。
部屋の中も真っ暗で、見やすいようにリビングのスイッチを入れていく。明るくなった部屋を見回せば、脱ぎっぱなしのシャツが椅子の背に無造作にかけてあった。
それを手に取って顔を埋める。ユーリの香りが鼻いっぱいに広がって、身体の奥が疼くのを嫌でも感じた。
「ユーリ……」
そっとジャージの上から自身に触れる。張り裂けるほどに膨らんだそれは、下着を通り越し、ジャージにまで染みを作っている。そっと染みをなぞれば、ぬるっとした感触とともに、うっすらと線が引くのがわかった。
「……っ、んっ」
ぬるぬると撫でるように指先で少しずつ触りだした時、ポケットの中のスマフォが震え、僕は弾かれたようにジャージから手を離した。
急いでスマフォを取り出せば、そこには愛しい人の名前が。慌てて取ろうとして、でも嬉しい気持ちをなるべく抑えながら「もしもし」とスマフォを耳に押し当てた。
『リヒト? 元気?』
「あ、うん。ユーリは?」
『リヒトに会えなくて体調悪くなりそう』
「何言ってるんだよ」
なるべく軽口を叩いて、淋しいことをバレないよう振る舞う。リビングに立っていても仕方ないし、今日はもう寝たいと思っていたので、鞄は椅子に置いて、ユーリのシャツは握りしめたままで寝室へと向かう。
『リヒトも俺に会えなくて淋しくない?』
「まさか。むしろ体調はいいくらいだよ」
『へえ……』
どさりとベッドへ倒れ込む。途端に身体を包んでいく香りは、まるでユーリに抱きしめられているようで、僕はまた身体に熱が集まっていくのを感じた。
左手でスマフォを持ち直し、シャツを枕カバー代わりに顔に当て、右手をそっと下半身に伸ばしていく。先ほどの刺激で緩く勃ち上がったソレは、次の刺激を求めて、さらに先端から欲を溢れさせていた。
『ねぇ、リヒト』
「ん……っ」
なるべくバレないよう、こんなことをしてるなんて、ユーリにはバレたくない。
『シてるでしょ、今』
「ぇ……、し、してないよ、して……ないっ」
スマフォの向こうで、ユーリが笑う声がした。
『俺はシてるよ? リヒトのことを思って』
「へ、変態……っ」
『恋人のことを思ってヤってるし、何も変態じゃないよ。それで? リヒトは今、どこを触ってるの?』
耳元で囁かれるように言われ、僕の身体がびくりと震えた。自身は完全に勃ち上がっていて、早く触ってほしいとばかりにジャージを押し上げている。
「し、した……」
『下?』
「もう、さわって……っ」
何を言っているんだろう。相手は遠く離れたところにいるのに、触れるわけがないじゃないか。
けれどユーリは、いつものあの、僕を支配下に置くのを愉しんでいる声で『いいよ』と耳元で囁いた。
『リヒトは先端をぐりぐりされるのが好きだから、そう、右手の親指の腹で、やってみて』
ジャージをずらして自身を曝け出し、僕は言われた通りに右手でソレを握り込み、親指を使って先端を刺激していく。
「……っ、ユーリぃ、あっ、んん……」
『そう、いい子だよ。そのまま手を動かして』
「ああ……、あ、だめっ」
しばらく快楽に浸れていない身体は、その少しの刺激だけで呆気なく果ててしまう。手とシーツについた白濁をぼんやりと見ながら、明日洗濯しないとな、なんて考える。
『リヒト』
「ん……」
『ほら、俺の手汚れちゃったよ? 舐めて綺麗にして』
「ん」
言われるままに自分の手を口元へ持っていき、ついた汚れを舐め取っていく。ぴちゃぴちゃと音が鳴り、ユーリが聞いているのかと思うと再び身体が熱くなった。
『はは。一生懸命に舐めるリヒト、ほんと可愛いよ。ね、まだ足りないでしょ?』
「ん……っ、ユーリの、ほしい……」
『リヒト、枕の横、ちょっと手を伸ばして』
枕の横? あれ? 僕、今ユーリの家にいるって言ったっけ?
疑問が頭を横切るが、快楽を求める身体はユーリの言葉に逆らえず、僕はスマフォをハンズフリーにしてから、そっと枕の横に手を伸ばした。指先に固い感触が当たり、それをそっと出してみる。
いつかのホテルで見た男性器の玩具で、僕はスマフォに向かって「ユーリ……!?」と声を荒げる。
『リヒト、もう我慢出来ないんでしょ? だってリヒトのここ、ヒクついてるよ?』
「……んっ」
そう言われれば、僕の身体は抗えず。
四つん這いになり後孔に玩具をあてがった。
『そう、ゆっくり、ゆっくり入れよっか』
「んんっ、あう……っ、はいった……?」
『入ったね。じゃ、動かすよ?』
「ん、んん」
ずぷずぷと、後孔を玩具が、いやユーリが優しく擦り上げる。しこりを押し上げ、僕のモノを握り込んで扱き、背中には数え切れないくらいの跡をつけられる。
それが容易に考えられて、僕は夢中で動かし続けた。
「ひんっ、あ、あ、ああっ」
『っ、リヒト……、俺ももう出すよ……っ』
「んんん……、あああっ、あ……っ」
どくどくと脈立ち、欲が勢いよく放たれる。
玩具を抜いて布団に倒れ込めば『リヒト』と優しく呼ばれ、それに「ん……」と掠れ声で返事をする。
『布団に入らないと風邪引くよ。夜は意外と冷えるから』
うつらうつらとした意識の中で、僕は気怠い身体を動かして布団に潜り込んだ。
『おやすみ、リヒト』
「おや、す、み……」
寝落ちする瞬間、ユーリが優しく頬を撫でてくれるような、そんな温もりを頬に感じた気がした。
バイトで疲れ果てて、いつものようにボロアパートへ帰ろうと鞄から鍵を出そうとし、いつものとは違う鍵を取り出した。
「……あ」
そういえば、ユーリが前に合鍵を渡してくれたんだっけ。『リヒトならいつでも来ていいよ』なんて、僕が悪人だったらどうするつもりだったんだろう。
仕方ないやつだなぁと苦笑いをして、鍵を鞄へと戻す。僕の足が向かうのは、いつものボロアパート、ではなく、ユーリの家だった。
「……お邪魔します」
もちろん、返事なんてない。
部屋の中も真っ暗で、見やすいようにリビングのスイッチを入れていく。明るくなった部屋を見回せば、脱ぎっぱなしのシャツが椅子の背に無造作にかけてあった。
それを手に取って顔を埋める。ユーリの香りが鼻いっぱいに広がって、身体の奥が疼くのを嫌でも感じた。
「ユーリ……」
そっとジャージの上から自身に触れる。張り裂けるほどに膨らんだそれは、下着を通り越し、ジャージにまで染みを作っている。そっと染みをなぞれば、ぬるっとした感触とともに、うっすらと線が引くのがわかった。
「……っ、んっ」
ぬるぬると撫でるように指先で少しずつ触りだした時、ポケットの中のスマフォが震え、僕は弾かれたようにジャージから手を離した。
急いでスマフォを取り出せば、そこには愛しい人の名前が。慌てて取ろうとして、でも嬉しい気持ちをなるべく抑えながら「もしもし」とスマフォを耳に押し当てた。
『リヒト? 元気?』
「あ、うん。ユーリは?」
『リヒトに会えなくて体調悪くなりそう』
「何言ってるんだよ」
なるべく軽口を叩いて、淋しいことをバレないよう振る舞う。リビングに立っていても仕方ないし、今日はもう寝たいと思っていたので、鞄は椅子に置いて、ユーリのシャツは握りしめたままで寝室へと向かう。
『リヒトも俺に会えなくて淋しくない?』
「まさか。むしろ体調はいいくらいだよ」
『へえ……』
どさりとベッドへ倒れ込む。途端に身体を包んでいく香りは、まるでユーリに抱きしめられているようで、僕はまた身体に熱が集まっていくのを感じた。
左手でスマフォを持ち直し、シャツを枕カバー代わりに顔に当て、右手をそっと下半身に伸ばしていく。先ほどの刺激で緩く勃ち上がったソレは、次の刺激を求めて、さらに先端から欲を溢れさせていた。
『ねぇ、リヒト』
「ん……っ」
なるべくバレないよう、こんなことをしてるなんて、ユーリにはバレたくない。
『シてるでしょ、今』
「ぇ……、し、してないよ、して……ないっ」
スマフォの向こうで、ユーリが笑う声がした。
『俺はシてるよ? リヒトのことを思って』
「へ、変態……っ」
『恋人のことを思ってヤってるし、何も変態じゃないよ。それで? リヒトは今、どこを触ってるの?』
耳元で囁かれるように言われ、僕の身体がびくりと震えた。自身は完全に勃ち上がっていて、早く触ってほしいとばかりにジャージを押し上げている。
「し、した……」
『下?』
「もう、さわって……っ」
何を言っているんだろう。相手は遠く離れたところにいるのに、触れるわけがないじゃないか。
けれどユーリは、いつものあの、僕を支配下に置くのを愉しんでいる声で『いいよ』と耳元で囁いた。
『リヒトは先端をぐりぐりされるのが好きだから、そう、右手の親指の腹で、やってみて』
ジャージをずらして自身を曝け出し、僕は言われた通りに右手でソレを握り込み、親指を使って先端を刺激していく。
「……っ、ユーリぃ、あっ、んん……」
『そう、いい子だよ。そのまま手を動かして』
「ああ……、あ、だめっ」
しばらく快楽に浸れていない身体は、その少しの刺激だけで呆気なく果ててしまう。手とシーツについた白濁をぼんやりと見ながら、明日洗濯しないとな、なんて考える。
『リヒト』
「ん……」
『ほら、俺の手汚れちゃったよ? 舐めて綺麗にして』
「ん」
言われるままに自分の手を口元へ持っていき、ついた汚れを舐め取っていく。ぴちゃぴちゃと音が鳴り、ユーリが聞いているのかと思うと再び身体が熱くなった。
『はは。一生懸命に舐めるリヒト、ほんと可愛いよ。ね、まだ足りないでしょ?』
「ん……っ、ユーリの、ほしい……」
『リヒト、枕の横、ちょっと手を伸ばして』
枕の横? あれ? 僕、今ユーリの家にいるって言ったっけ?
疑問が頭を横切るが、快楽を求める身体はユーリの言葉に逆らえず、僕はスマフォをハンズフリーにしてから、そっと枕の横に手を伸ばした。指先に固い感触が当たり、それをそっと出してみる。
いつかのホテルで見た男性器の玩具で、僕はスマフォに向かって「ユーリ……!?」と声を荒げる。
『リヒト、もう我慢出来ないんでしょ? だってリヒトのここ、ヒクついてるよ?』
「……んっ」
そう言われれば、僕の身体は抗えず。
四つん這いになり後孔に玩具をあてがった。
『そう、ゆっくり、ゆっくり入れよっか』
「んんっ、あう……っ、はいった……?」
『入ったね。じゃ、動かすよ?』
「ん、んん」
ずぷずぷと、後孔を玩具が、いやユーリが優しく擦り上げる。しこりを押し上げ、僕のモノを握り込んで扱き、背中には数え切れないくらいの跡をつけられる。
それが容易に考えられて、僕は夢中で動かし続けた。
「ひんっ、あ、あ、ああっ」
『っ、リヒト……、俺ももう出すよ……っ』
「んんん……、あああっ、あ……っ」
どくどくと脈立ち、欲が勢いよく放たれる。
玩具を抜いて布団に倒れ込めば『リヒト』と優しく呼ばれ、それに「ん……」と掠れ声で返事をする。
『布団に入らないと風邪引くよ。夜は意外と冷えるから』
うつらうつらとした意識の中で、僕は気怠い身体を動かして布団に潜り込んだ。
『おやすみ、リヒト』
「おや、す、み……」
寝落ちする瞬間、ユーリが優しく頬を撫でてくれるような、そんな温もりを頬に感じた気がした。
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