31 / 170
第一部
シャワー室の甘い声
しおりを挟む
車に乗せられ連れて行かれたのは、ここらでも有名な高級マンションの一室だった。流石に最上階ではないものの、そもそもここに住めることがすごいと言われている。
「リヒト、とりあえずシャワー浴びよっか。歩ける?」
「……」
横抱きにされたまま、僕はその腕の中で小さく首を横に振った。
「じゃ、ちょっと用意してくるから」
「……で」
「ん?」
ユーリの服を小さく掴んで、僕を一旦ベッドに座らせようとしていたユーリを引き止める。
「おねが……、いかないで……」
今離れられたら、嫌でもさっきの、ううん、それまでのことを思い出しそうで、僕は涙を流しながら懇願する。ユーリは少し考えるように固まり、それから「わかったよ」と僕を連れてお風呂場へと向かった。
流石に「ドア開けるから」と苦笑いされて、僕は大人しく床へと降りる。その間、ずっとユーリの服は掴んだままだ。
男二人で入ってもまだ余裕がありそうなほどに広く、ユーリはシャワーのヘッドを僕に向かって構えると、勢いよく頭からお湯を被せてきた。
「な、何する……ぶっ」
濡れた髪をかき上げ顔を上げれば、今度は顔面に思いきりお湯の洗礼を受けた。
「げほっ、やめ、ごぼっ」
お湯で目を開けられず、無我夢中でユーリからシャワーヘッドを奪おうと手を伸ばす。その際濡れた毛布がずり落ちたけれど、そんなこと知ったことか。
ユーリは笑い声を上げながらそれをかわし、やっとお湯をかけるのをやめてくれた頃、僕もそうっと目を開けた。
「ユーリ!」
「ははは」
僕が声を荒げてもユーリは笑うことをやめなかった。よく見れば、ユーリも着てきた服をぐっしょりと濡らしていて少し体が重そうに見える。笑い続けるユーリに呆れて、僕も「もう」と苦笑いをした。
「ユーリ……、今日は、その、ありがとう……」
シャワーの音で掻き消されないよう、でもそれなりに小さい声で呟いた言葉が、広いお風呂場に吸い込まれるようにして響いていく。ユーリはしばらく黙ったままだったけど、シャワーを止めてから壁にかけ、自分の服を脱ぎだした。
「俺も汗流したいしさ。リヒトの身体、洗ってあげよっか」
「い、いい、いらない!」
口からは否定の言葉が出る。けれど隠していない僕の身体は、ユーリに触れてもらえることを期待してか、それとも、シャワーで暖まったからなのか。すでにほんのりと熱を持ち始め、胸の先はつん、と恥ずかしいくらいに主張していた。
「俺が洗いたいだけだからさ、気にしないで」
椅子に座るよう促され、僕はおずおずと腰をおろした。勃ち上がりかけている自分がそれとなく恥ずかしくて、隠すように背中を丸めた。
慣れた手つきでスポンジに泡立てると、ユーリは後ろに回り僕の背中に触れる。ふわっとした感覚がくすぐったくて、僕は「んっ」と身じろぎをした。
「ほんと腰細いんだから。ちゃんと食べてる?」
「食べ、てる……っ。あ、冷蔵庫の……んんっ、ありがと……っ」
脇腹を手が掠め声が出る。そのまま前を触られるかと身構えたけれど、また背中を優しく擦られ、僕は内心肩を落とした。
触ってほしい。けれど言えない。その揺れる気持ちからか、微かに腰が揺れた。
「……リヒト」
「ひあっ」
不意に耳元で囁かれ、肩をびくりと震わせた。丸めていた背中が伸びていたことで、隠していた前を出す形になり、僕の股の間から、恥ずかしいほどに勃ち上がったモノが姿を現した。
「あれ? 俺は身体を洗ってただけだよ? リヒト、ねぇ、これは何?」
「こ、これは、その……」
お湯とは明らかに違った、ぬめりのある液で先端が濡れている。ユーリに見られていると思うだけで感覚は鋭くなり、止まるのを知らぬように溢れ出してくる。
「どんどん出てくるね」
「あっ、あああっ」
後ろから伸ばされたユーリの手が、ぬめりを確かめるよう先端に優しく触れる。指先で液体を塗り込められるようにされ、僕は「あっ」とたまらずユーリにもたれかかった。
「あーあ。また汚しちゃったね」
言われて気づけば、先端からどくどくと脈打つように欲が漏れ出している。それに恥じらう間も与えずに、ユーリの手は上へと移動し、今度は胸の突起を摘み上げた。
「こんなにして……。リヒトは一体何を期待してたの?」
「ひっ、ひうっ、ああんっ」
ぐりぐりと強く、たまに優しく揉まれるような手つきで、さらには左右で強さを変えてこねられ、僕の口からはみっともない声しか出ない。
「リヒト……、ね、入れていい……?」
腰辺りに熱いモノが押しつけられ、僕は「うん……」と強請るような甘い声を――
「って、ちょっと待ってユーリ!」
「……え」
ユーリとすれば、さぞかし肩透かしを食らったことだろう。だけど、ここで流されるようにことに及んでしまっては、今までとなんら変わらない。
「と、とりあえず、さ。身体を拭いて、髪を乾かして、えっと、それから、話を、そうだ、話をしたいんだ」
「いや……、うん、リヒトが言うならそれでいいよ……」
ユーリはわかるくらいに肩を落とした。でも僕の意思を尊重はしてくれるようで、先に僕の身体を洗い流してから「先に出てて」と半ば僕は追い出されるようにして、お風呂場から先に出た。
「リヒト、とりあえずシャワー浴びよっか。歩ける?」
「……」
横抱きにされたまま、僕はその腕の中で小さく首を横に振った。
「じゃ、ちょっと用意してくるから」
「……で」
「ん?」
ユーリの服を小さく掴んで、僕を一旦ベッドに座らせようとしていたユーリを引き止める。
「おねが……、いかないで……」
今離れられたら、嫌でもさっきの、ううん、それまでのことを思い出しそうで、僕は涙を流しながら懇願する。ユーリは少し考えるように固まり、それから「わかったよ」と僕を連れてお風呂場へと向かった。
流石に「ドア開けるから」と苦笑いされて、僕は大人しく床へと降りる。その間、ずっとユーリの服は掴んだままだ。
男二人で入ってもまだ余裕がありそうなほどに広く、ユーリはシャワーのヘッドを僕に向かって構えると、勢いよく頭からお湯を被せてきた。
「な、何する……ぶっ」
濡れた髪をかき上げ顔を上げれば、今度は顔面に思いきりお湯の洗礼を受けた。
「げほっ、やめ、ごぼっ」
お湯で目を開けられず、無我夢中でユーリからシャワーヘッドを奪おうと手を伸ばす。その際濡れた毛布がずり落ちたけれど、そんなこと知ったことか。
ユーリは笑い声を上げながらそれをかわし、やっとお湯をかけるのをやめてくれた頃、僕もそうっと目を開けた。
「ユーリ!」
「ははは」
僕が声を荒げてもユーリは笑うことをやめなかった。よく見れば、ユーリも着てきた服をぐっしょりと濡らしていて少し体が重そうに見える。笑い続けるユーリに呆れて、僕も「もう」と苦笑いをした。
「ユーリ……、今日は、その、ありがとう……」
シャワーの音で掻き消されないよう、でもそれなりに小さい声で呟いた言葉が、広いお風呂場に吸い込まれるようにして響いていく。ユーリはしばらく黙ったままだったけど、シャワーを止めてから壁にかけ、自分の服を脱ぎだした。
「俺も汗流したいしさ。リヒトの身体、洗ってあげよっか」
「い、いい、いらない!」
口からは否定の言葉が出る。けれど隠していない僕の身体は、ユーリに触れてもらえることを期待してか、それとも、シャワーで暖まったからなのか。すでにほんのりと熱を持ち始め、胸の先はつん、と恥ずかしいくらいに主張していた。
「俺が洗いたいだけだからさ、気にしないで」
椅子に座るよう促され、僕はおずおずと腰をおろした。勃ち上がりかけている自分がそれとなく恥ずかしくて、隠すように背中を丸めた。
慣れた手つきでスポンジに泡立てると、ユーリは後ろに回り僕の背中に触れる。ふわっとした感覚がくすぐったくて、僕は「んっ」と身じろぎをした。
「ほんと腰細いんだから。ちゃんと食べてる?」
「食べ、てる……っ。あ、冷蔵庫の……んんっ、ありがと……っ」
脇腹を手が掠め声が出る。そのまま前を触られるかと身構えたけれど、また背中を優しく擦られ、僕は内心肩を落とした。
触ってほしい。けれど言えない。その揺れる気持ちからか、微かに腰が揺れた。
「……リヒト」
「ひあっ」
不意に耳元で囁かれ、肩をびくりと震わせた。丸めていた背中が伸びていたことで、隠していた前を出す形になり、僕の股の間から、恥ずかしいほどに勃ち上がったモノが姿を現した。
「あれ? 俺は身体を洗ってただけだよ? リヒト、ねぇ、これは何?」
「こ、これは、その……」
お湯とは明らかに違った、ぬめりのある液で先端が濡れている。ユーリに見られていると思うだけで感覚は鋭くなり、止まるのを知らぬように溢れ出してくる。
「どんどん出てくるね」
「あっ、あああっ」
後ろから伸ばされたユーリの手が、ぬめりを確かめるよう先端に優しく触れる。指先で液体を塗り込められるようにされ、僕は「あっ」とたまらずユーリにもたれかかった。
「あーあ。また汚しちゃったね」
言われて気づけば、先端からどくどくと脈打つように欲が漏れ出している。それに恥じらう間も与えずに、ユーリの手は上へと移動し、今度は胸の突起を摘み上げた。
「こんなにして……。リヒトは一体何を期待してたの?」
「ひっ、ひうっ、ああんっ」
ぐりぐりと強く、たまに優しく揉まれるような手つきで、さらには左右で強さを変えてこねられ、僕の口からはみっともない声しか出ない。
「リヒト……、ね、入れていい……?」
腰辺りに熱いモノが押しつけられ、僕は「うん……」と強請るような甘い声を――
「って、ちょっと待ってユーリ!」
「……え」
ユーリとすれば、さぞかし肩透かしを食らったことだろう。だけど、ここで流されるようにことに及んでしまっては、今までとなんら変わらない。
「と、とりあえず、さ。身体を拭いて、髪を乾かして、えっと、それから、話を、そうだ、話をしたいんだ」
「いや……、うん、リヒトが言うならそれでいいよ……」
ユーリはわかるくらいに肩を落とした。でも僕の意思を尊重はしてくれるようで、先に僕の身体を洗い流してから「先に出てて」と半ば僕は追い出されるようにして、お風呂場から先に出た。
69
お気に入りに追加
548
あなたにおすすめの小説
告白
すずかけあおい
BL
「河原美桜くん。好きです」
クラスメイトの志波から人生初の告白をされた美桜は、志波のことを全然知らないからと断るが、なぜか「これからよろしくね」と言われて……。
〔攻め〕志波 高良(しば たから)高二
〔受け〕河原 美桜(かわはら みお)高二

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる