【本編完結済】前世の英雄(ストーカー)が今世でも後輩(ストーカー)な件。

とかげになりたい僕

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第一部

へたくそ

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 恥ずかしいほどに膨らんだふたつの先端が、早く触ってほしいとばかりに赤く赤く染まっている。アキくん、いやアイフェルドはそれを見てさらに興奮したのか、生唾をごくりと飲み込んだ。

「肌しろ……。これなら簡単に跡が付いちまうなぁ?」
「それだけは……っ」

 伸ばされたアイフェルドの手が、僕の胸の先を摘む。その痛気持ちよさに、思わず口から吐息が漏れる。

「ふぅっ、やめ……」

 摘んだかと思えば引っ張られ、かと思えば爪の先でカリカリと引っ掻かれた。そのたびにくぐもった嬌声が部屋に響いて、僕はそれに対し、さらに「いや、いやっ……」と頭を振って微かな抵抗を示した。

「嫌、ね。こーんなに勃たせといて、そりゃねーだろうよ」

 おはじきでも弾くような動作で胸の突起を弄られる。びくんと跳ねた身体を見て、アイフェルドが「ほらな」とにたにた笑った。

「違う、これは、ユーリがっ」
「ユーリ、だって……?」

 しまった、と思った。
 でも時既に遅し。アイフェルドは右手で僕の顎を軽く掴むと「あんた」とそのまま力を込めていく。

「前世ならず、今世でもあの方をたぶらかしているのか?」
「ひがう……」

 口を上手く動かせず、否定の言葉が出てこない。いや、出せたとしても、彼の耳には入らないだろう。

「許さねぇ……、絶対に許さねぇ!」
「ひゃ……!?」

 怒りに支配されたアイフェルドは、僕の首元に顔を埋め、そのまま首筋に舌を這わせてきた。ぬるぬるとした生温い感触は気持ち悪くて、僕は「やめて、いやだ」と何度も懇願する。
 そのうちにガリッと痛みが走り、僕は目をこれでもかと見開き「いだい!」と身体をビクつかせた。

「ひひ、よぉく似合ってるぜ。屍人のリヒトさんよぉ」

 噛まれたと気づいたのは、彼の唇に血がついてるのを見てからだ。ヒリヒリする痛みに耐えながら、僕は弱々しく「やめてくれ……」と抵抗する気もほとんど失くし、涙を流しながら口にする。
 だが、乱暴者で有名だったこの男が、これだけで終わるわけがなかった。
 彼は無抵抗になった僕を、それこそ頭のてっぺんから爪の先までねっとりとした目つきで眺め、僕の薄っぺらい胸板に顔を埋めてきたのだ。

「ひっ」

 舌で胸の先を突かれ、僕の意思とは反対に腰が跳ねた。片方を吸われ、もう片方を指でこねられる。
 気持ちは嫌で嫌で仕方がないのに、昼に発散出来なかった熱のせいで、僕の身体はその与えられる快楽に確かに悦んでいた。

「んっ、ああ、やだあっ」
「この変態野郎が。王子でなくたって、結局は誰でもいいんだろうがよ!」
「ち、ちが……あああっ」

 突起を噛まれ、僕はたまらずジャージの中に欲を吐き出してしまった。色々な感情が混じり合って、涙と鼻水がとめどなく流れていく。それでも僕は、なんとか自分を奮い立たせるように彼を睨みつけ、

「もう、気が済んだ、だろ。解放してくれないか……」

と、ベルトを外すよう視線で示した。

「解放?」

 アイフェルドが「まさか」と鼻で笑った。

「楽しみはこっからだろうが」
「ぇ……ぁ……」

 力任せにジャージを取り払われ、僕は下半身を彼に曝け出す形になる。肌とジャージの間に引いた白い糸がやけに生々しくて、僕はそれで現実に引き戻された。

「や、やだっ、それは、それだけは……!」
「ここまでヤっちまったら変わらねぇだろうよ」

 足を閉じ抵抗する僕を嘲笑うように、アイフェルドが両足に手をかけ無理やり開かせる。ユーリ以外に見せたことがない場所を見られ、僕は今度こそ「うあああ」と叫びにも近い声を上げた。

「ひひ、可愛らしいケツじゃねぇか。もっと見せてみろよ」

 アイフェルドの指が、後孔の入口を撫でる。欲を吐き出したばかりの僕の身体は、その指からもたらされる快楽を拾うために、必死に指を受け入れようとしているに違いない。
 つぷ、と後孔に異物が入る感覚に、僕は腰を左右に振って抵抗する。だがアイフェルドはそれを快楽と受け取ったのか、あの下品な笑いをしながら、指の腹で内側を擦り始めた。

「っと、ん? どこだ? ここか?」
「うっ……ううぅっ」

 恐らく前立腺を探しているのだろうが、幸いなことにこの男、そこまで経験豊富ではないらしい。快楽がないことを身体は正直に感じ取り、こもっていたはずの熱はすっかりどこかへいってしまったようだ。

「へた、くそ……が」

 散々遊ばれたお返しだ。
 僕は、四天王時代によく浮かべていた、相手を小馬鹿にした嫌味な笑みを張りつけ、今度は逆にこいつを鼻で笑ってやった。
 アイフェルドが顔を真っ赤にして鼻息を荒くするが、途端鳴りだした時計のアラームにハッとし、僕から離れていった。
 時間だ。

「チッ。母親が不審がる。今日はここまでにしてやるよ」
「なら、これを外してくれ……。帰るに帰れない」

 もちろんベルトのことだ。
 アイフェルドは小さく舌打ちしながらも、渋々ベルトを外してくれた。少し赤くなってはいるが、いまの時期、長袖を着ていてもまだ不思議ではないだろう。
 僕はシャツを元に戻し、それから脱がされたジャージに急いで足を通した。それから「あ」と机に広げたままの過去問を指差した。

「それ、やっといて」
「は?」

 意味がわからない、と言いたそうだ。

「家庭教師はワリがいいんだ。入試に受かるまでは、辞めるつもりないから」
「あのなぁ……はぁ」

 頭を抱えるアイフェルド、いやアキくんに、僕は「それじゃ」と背中を向けた。お母様に簡単な挨拶だけして家を出た途端、僕は声にならない嗚咽を溢しながら、ただただ、しゃがみこんだ。
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