【完結済】ケーキはフォークの共犯者

とかげになりたい僕

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最高の食事

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 少し汗ばんだアオの首筋に舌を這わせる。口内に広がる甘さに、俺は堪らずそのまま歯を立てた。

「痛い」
「ごめん……っ」

 つい夢中になってしまった。身体を少し離してアオをよく見れば、その首がじんわりと赤く滲んでいるのに気付く。歯型は残っていないが、明らかな傷跡に申し訳無さと、同時にどうしようもない高揚感を覚えた。
 だけどやっぱり小心者の俺は、胸の内に広がる本能に従えずにいた。

「はっ、はあっ、ごめ」

 上手く息が吸えない。
 このまま本当にアオを喰ってしまったら?
 折角好きだと伝えて、これからなのに、アオを俺が壊してしまったら?
 考えれば考えるほど、怖くなってアオに触れることすら出来なくなっていく。

「……ミツ」
「へっ……?」

 頭の後ろにアオの手が回され、力任せに引っ張られた。触れ合う唇が熱い。

「んぁ、はっ、アオ……ッ」

 少しだけ唇が離されて、その隙に俺は息を大きく吸い込んだ。

「ミツ、口、開けて」
「……っ」

 言われるままに少しだけ口を開いて、その隙間から互いの舌を絡ませ合う。酷く甘いそれは頭の中を、身体中を熱くさせて、アオをもっと欲しいと本能で求めだす。

「大丈夫。怖がらなくていい。だから、ミツの好きなようにしてよ」
「アオ……、アオっ」

 乱暴に服を捲り上げて、ピンと立つ突起に舌を這わせた。片方を舌先で弄りながら、右手でもう片方の先端を軽く摘む。

「ミ、ツっ」

 ねっとりと舐め上げるたび、アオの身体がぴくりと動いて腰が跳ねる。そのたびに布越しに擦れる熱が堪らず、俺は着ていた上着を脱ぎ、ベッド下へと放り投げた。

「やば、あっつ……」
「エアコン効き過ぎてるんじゃない?」
「余裕かよ」

 アオの薄い腹を指先で軽くなぞる。

「余裕な、わけ、ないっ」

 途切れ途切れの言葉すら愛しい。
 アオのズボンに手をかけて下着ごとずり下ろせば、一気に甘い香りが部屋中へと広がった。下着とアオを繋いでいた透明な糸がぷつりと切れて、俺は無意識に喉を鳴らす。
 そのままアオの両足を持ち上げるようにして、はくはくと動くすぼみに舌を這わせた。

「ちょっ、と……」

 舌先を中へと押し入れ、そのまま音を立てて啜る。アオがやめてほしそうに俺の髪を掴んできたが、その手には力が入りきれていない。
 そうしてじゅるじゅると貪るように吸い、口の中が甘ったるくなった頃、俺はやっとアオから口を離した。

「あっま……。やべ、もっと欲しくなる……」
「そんなとこ、甘いわけ、ないでしょ。ほんっと、馬鹿舌」
「その馬鹿舌で気持ちよくなってんのは、どこの誰だっつの」

 肩を上下させるアオが、恥ずかしいのか、自分の顔を両手で必死に隠している。その仕草も嫌いじゃないが、彼氏として抱くのは初めてなのだ。流石に顔くらい見せてほしい。

「アオ」
「何」
「顔、見せろ」
「嫌だ」
「ああ!?」

 こんな時までこいつは本当に……!
 苛ついた状態のまま、もう勝手にことを進めるかと、窄みに指先を埋めた。アオが声を出さないよう口を引き結んでるのが癪で、俺は「おい」と舌打ちをした。

「んなに嫌なら、最初から」

 空いてる手を延ばして、アオの手をなんとかどける。その下から出てきたアオの顔は、今までに見たことがないくらいに赤く、目には涙を溜め込んでいた。

「えっと、アオ?」
「……余裕なんて、ないって言った」
「わりぃ。えと、じゃあ、抱いていいっすか」
「ぷっ。なんで敬語。俺は、ミツの好きにしてって言った」

 やっと笑ったアオに、胸につかえていた苛立ちが取れて、俺も「ん」と少しだけ頬を緩めた。
 持ち上げていた足を降ろしてから、そういやゴムあったけなと変な心配が頭の隅をよぎる。確か勉強机の棚ん中に、と記憶を手繰り寄せていると「ん」とアオが四角いアレを差し出してきた。

「……は? 待て、こんなんどこから」
「持ってきた。今日、あげるつもりだったから」
「あげるつもりって、あのなぁ」

 差し出された四角いソレの端を、少しだけ口で咥えて、そのまま封を切る。

「かっこつけ?」
「……っせ」

 中身をそそり勃つ自分に被せ、拍動を繰り返すアオに熱を押し当てる。先端が少し入っただけなのにそこは既にきつくて、俺は詰めていた息を吐き切る。

「は、あっ……、アオ、ちっと、きつ……」
「意地でも進めな、よっ。情けなさすぎ」
「俺はな、お前の身体が心配、で」

 アオの手と俺の手を絡めてベッドに縫いつける。軽口を叩いてはいるが、やはりキツいのか、俺の手を握る力は今までに感じたことがないくらいに強い。

「やっぱりやめ」
「抜かないでっ」
「うお!?」

 腰に巻き付いてきたアオの足が、俺の身体を無理にでも押し進める。その締めつけと暖かさが心地よくて、俺は「うっ」と一瞬息が止まり。

「あ、出た」
「……」

 悲しくも情けない結果になった。
 まさかアオを気持ちよくさせるどころか、入れただけで俺がイクとは予想外だ。

「……すんません」

 ずる、と出した俺の息子は、可哀想なくらいに小さくなっている。とりあえずゴムを外してから、アオに向かって小さく頭を下げた。

「ね、ミツ」
「なんだよ……」
「大丈夫。いっぱいある」
「は!?」

 驚いて顔を上げれば、アオの手には綴りのままの四角い包みが握られていた。

「ちょ、ま、へ?」
「二人で慣れていこうよ。どうせミツは、もう俺以外を食べる気なんてないんだから」

 ひとつを切り分けて、口先で封を開けたアオを見て、これから先もこいつには敵わない気がした。
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