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一月
大パニック!? 寒中マラソン大会 その4
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河川敷を抜けて少し走り(俺は台車に乗っていた)、歓声の上がる道路を抜ければ、次は街の憩いの場、公園ゾーンに入る。
覚えてるだろうか? 五月、俺が観手に呼び出されたあの公園だ。あの時はここに来てまだ一ヶ月ほどだったし、何より追いかけられてよく見てすらいなかったが、こうやって改めて来てみると綺麗な公園なことがわかる。
「そろそろ降りるわ」
流石に体力も回復してきたし、これ以上乗っているわけにもいかないと、俺は台車を押す太刀根に声をかけた。
「え? なんだ、聞こえねぇよ!?」
「絶対聞こえてるだろ! もういいから降ろせって言ってんだ!」
「嫌だ! 護はこのまま俺がゴールまで連れて行く!」
「お、おい……!?」
太刀根は走るスピードを上げる。視点が低いせいか、体感速度がべらぼうに速い気がする。いや実際これ速くね!?
「ちょ、はや」
ガリガリガリガリ。
華麗にドリフトをかましながらカーブを曲がっていく。人間ってドリフト出来たのとか、落ちたら死ぬとか色々な考えが頭をよぎって、とりあえず俺は必死に台車の棒にしがみついた。
「このまま突っ切るぜぇぇええ!」
「あああああ! いやぁぁあああ!」
本当にどうしようもないのか。
そう思った刹那、隣に並んだ猫汰が台車を引っ掴むとガタンと宙に放り投げた。もちろん俺も宙に飛ばされる。太刀根は勢いのまま地面にこけた。
空がものすごく近くなって、こんなんジェットコースターくらいでしか見たことないかも、なんて呑気に思い……。次の瞬間には地面に向かって落ちだした。
「落ちるううう!」
目を閉じ衝撃に備えたが、いつまでも全身を打つような痛みはこない。代わりにしっかりとした暖かさに抱きとめられ、ゆっくり目を開けてみれば。
「猫汰!」
やはり猫汰が俺を受け止めていた。お姫様抱っこで。
「さっきまでは御竿くんが疲れてるかと思って大目に見てたけど、いいかげん僕に譲ってくれないかな。御竿くんの怖がる顔も嬉しがる顔も僕だけのものだからさ」
「いや何言ってんの、いいから離せ」
「安心して御竿くん。このままゴールまで行こう」
「お前は武器扱いなの? そうでなくともこれは嫌だ」
離せと足をバタつかせみるも、俺を抱く腕に力が籠もるだけでなんの意味もない。こうしてる間にも、他の生徒たちが俺たちを追い抜いていく。
「お、おい、とにかく走らねぇと」
「あ! 護先輩!」
呼ばれてそっちを見れば、ピンク髪を軽くひとつに結った下獄が、軽く息を切らせながら俺たちの隣に並んだ。
「下獄? ってことは、あれ、一年生に追いつかれた……?」
周囲を改めて見れば、一年生の青いジャージがちらほらと走っていた。
「ウチらはまだ早いほうです! それに、ウチが捕まらなかったのは皆さんのおかげなんです!」
「皆さん?」
それはどういうことだと聞く前に、後ろから赤いジャージ(三年生だ)を着たモブ顔が「下獄ちゃ~ん!」と走ってくるのが見えた。
「もう、しつこいです!」
そう言って下獄は不満そうに頬を膨らませた後、
「誰か! 誰か助けて!」
と声を張り上げた。
その叫びに呼応するように、青いジャージの厳つい野郎がモブ先輩の前に立ち塞がり、そのまま正面から抱きとめる。
「下獄さん! 今のうちに逃げろ!」
「ありがとう、ただのクラスメイトさん! たぶん忘れないね!」
下獄は厳つい野郎にウインクして投げキッスをしてから、俺たちに「ウチらはこの先がゴールなので!」と軽く会釈して走っていった。
残されたモブ先輩が「いやぁ、下獄ちゃ~ん」と泣きベソかくのを、厳つい野郎が「ま、先輩、楽しみましょうや」とどこかに引きずっていった。
覚えてるだろうか? 五月、俺が観手に呼び出されたあの公園だ。あの時はここに来てまだ一ヶ月ほどだったし、何より追いかけられてよく見てすらいなかったが、こうやって改めて来てみると綺麗な公園なことがわかる。
「そろそろ降りるわ」
流石に体力も回復してきたし、これ以上乗っているわけにもいかないと、俺は台車を押す太刀根に声をかけた。
「え? なんだ、聞こえねぇよ!?」
「絶対聞こえてるだろ! もういいから降ろせって言ってんだ!」
「嫌だ! 護はこのまま俺がゴールまで連れて行く!」
「お、おい……!?」
太刀根は走るスピードを上げる。視点が低いせいか、体感速度がべらぼうに速い気がする。いや実際これ速くね!?
「ちょ、はや」
ガリガリガリガリ。
華麗にドリフトをかましながらカーブを曲がっていく。人間ってドリフト出来たのとか、落ちたら死ぬとか色々な考えが頭をよぎって、とりあえず俺は必死に台車の棒にしがみついた。
「このまま突っ切るぜぇぇええ!」
「あああああ! いやぁぁあああ!」
本当にどうしようもないのか。
そう思った刹那、隣に並んだ猫汰が台車を引っ掴むとガタンと宙に放り投げた。もちろん俺も宙に飛ばされる。太刀根は勢いのまま地面にこけた。
空がものすごく近くなって、こんなんジェットコースターくらいでしか見たことないかも、なんて呑気に思い……。次の瞬間には地面に向かって落ちだした。
「落ちるううう!」
目を閉じ衝撃に備えたが、いつまでも全身を打つような痛みはこない。代わりにしっかりとした暖かさに抱きとめられ、ゆっくり目を開けてみれば。
「猫汰!」
やはり猫汰が俺を受け止めていた。お姫様抱っこで。
「さっきまでは御竿くんが疲れてるかと思って大目に見てたけど、いいかげん僕に譲ってくれないかな。御竿くんの怖がる顔も嬉しがる顔も僕だけのものだからさ」
「いや何言ってんの、いいから離せ」
「安心して御竿くん。このままゴールまで行こう」
「お前は武器扱いなの? そうでなくともこれは嫌だ」
離せと足をバタつかせみるも、俺を抱く腕に力が籠もるだけでなんの意味もない。こうしてる間にも、他の生徒たちが俺たちを追い抜いていく。
「お、おい、とにかく走らねぇと」
「あ! 護先輩!」
呼ばれてそっちを見れば、ピンク髪を軽くひとつに結った下獄が、軽く息を切らせながら俺たちの隣に並んだ。
「下獄? ってことは、あれ、一年生に追いつかれた……?」
周囲を改めて見れば、一年生の青いジャージがちらほらと走っていた。
「ウチらはまだ早いほうです! それに、ウチが捕まらなかったのは皆さんのおかげなんです!」
「皆さん?」
それはどういうことだと聞く前に、後ろから赤いジャージ(三年生だ)を着たモブ顔が「下獄ちゃ~ん!」と走ってくるのが見えた。
「もう、しつこいです!」
そう言って下獄は不満そうに頬を膨らませた後、
「誰か! 誰か助けて!」
と声を張り上げた。
その叫びに呼応するように、青いジャージの厳つい野郎がモブ先輩の前に立ち塞がり、そのまま正面から抱きとめる。
「下獄さん! 今のうちに逃げろ!」
「ありがとう、ただのクラスメイトさん! たぶん忘れないね!」
下獄は厳つい野郎にウインクして投げキッスをしてから、俺たちに「ウチらはこの先がゴールなので!」と軽く会釈して走っていった。
残されたモブ先輩が「いやぁ、下獄ちゃ~ん」と泣きベソかくのを、厳つい野郎が「ま、先輩、楽しみましょうや」とどこかに引きずっていった。
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