【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

文字の大きさ
上 下
146 / 190
一月

俺は邪魔をされずにデートをしたい その4

しおりを挟む
 ここまでくると会長も出てくるんじゃないか? そんな考えが頭をよぎり、俺は無意識に深い深いため息をついていた。

「御竿さん、楽しくないですか?」
「この状況で、何を、どう楽しめと?」

 二人で出店を回ることも出来ず、お守りを買うことすら出来ず。
 あーくそ。二人で焚き火にでも当たりながらじゃがバターとか串焼きとか、そうだクレープなんかも食べる予定だったのに。生クリームがついた俺に対して“御竿さん、ついてますよ?”、“え、どこ?”、“もう、ここですよ”とか会話して、あわよくばそのまま……とか考えてたのに!

「はぁ、もう帰ろうかな……」

 誰に言うでもなく、仄暗ほのぐらい灰色の空に向かって愚痴る。ちらちらと降ってきた雪が頬につき「つめたっ」と拭って……、気づいた。

「雪、強くなってね?」

 ちらちら降ってくるだけだった雪は、その量と激しさを次第に増していき、それはあっという間に視界を白く染め上げてしまう。

「み、観手!」

 隣にいるはずの観手に手を伸ばしたつもりだが、その手は虚しくくうを切っただけだった。

「なんだよ、これ!?」

 叫んだけれど、風の音に負けてかき消されていく。つか口を開いただけで、もれなく大量の雪を食すハメになるのでそれ以上話すわけにもいかず。
 腕で顔を守るようにしながら、少しでも何か見えないかと目を凝らす。だけども雪は止まず、このまま埋まるのかとゾッとした時、雪は急激に止んでいった。

「どうなってんだ……」

 一面、白銀の世界だ。
 あんなにたくさんいた参拝者もいなければ、社務所も、出店も、本殿も。雪で隠れたわけじゃない。
 最初から何もなかったように、ただただ、平坦で真っ白な世界が、俺の前に広がっていた。

「おい、観手!? 太刀根、猫汰! 先生!」

 声が虚しく響き渡る。だけどそれに返してくれる声は、どこにもない。

「どこ行っちまったんだよ、なぁ!」

 まるで世界に俺だけ残されたような。
 とりあえず一歩踏み出してみる。サクリと新雪独特の音が鳴って、真新しい足跡が残った。夢ではないようだ。

「どういうことだ……」
「それはオレから説明しよう」
「ぎゃあああ!?」

 突然背後から声をかけられ、俺は反射的に逃げようと足を踏み出し、そのまま雪に向かってダイブした。綺麗な顔型がついてちょっと恥ずかしい。

「かかか会長!?」
「うむ、オレだ。それにしても流石だ、護くん。この中でも動けるとは」

 どういうことだと問いただす前に、差し伸べられた会長の手を取って立ち上がる。会長は陰陽師みたいな格好をしている、寒くないのか?
 服についた雪を払ってから、改めて会長に「何があったんすか」とぶっきらぼうに言い放った。

「この神社は、屹立家が管理しているんだがな」
「もうそんな程度じゃ驚きませんよ」
「悲恋の末に命を絶った者が持っていた鏡があってな、それを御神体として祀っているのだ」
「なんつうもん祀ってんだ」

 相変わらずよくわからん家だ。

「その鏡には不思議な力があってな。その呪力のおかげか、特に恋愛成就のお守りはよく効くと評判がいい」
「もう呪いの一種なんよ、あれ。罰当たりなことしてるから怒ったんじゃないすか?」

 ジト目をする俺に、会長は「いや」と首を横に振った。

「逆だ、護くん。強い力を分散させ、溜め込まないように呪力を込めて販売しているのだよ。だが今回、どうやら不手際があったようでな」
「は、はぁ……」

 不手際、お守り、呪力。
 俺の背中を、嫌な汗が伝った。

「販売したお守りを、どうやら返品されたようでな。一度誰かの手に渡ったお守りを受け取るのは、力の逆流が起こり大変危険なのだ。アルバイトのマニュアルにも返品は受け取るなとあるのに、一体誰だろうな……?」
「だ、だ、誰っすかね。いやぁ、大変だ。それはそうと会長、今からどうするつもりなんすか!?」

 俺は話題を逸らそうと、会長に「ほら、ほら」と話を促した。会長ならなんでもお見通しな気がするが、それはそれだ。

「ふっ、まぁ構わん。今からオレは溢れ出した力を鎮めにいかねばならん。それが屹立家長子である、オレの役目なのだからな」
「そっすか。じゃ、会長、頑張って。俺ここで待ってますんで」

 甲斐性なしと言われようが、薄情と思われようが構わん。どう見ても危ない橋を、自分から渡るなんてしたくないし。
 苦笑いしながら「お願いします」と頭を掻いた俺に、会長は喉の奥から笑ってみせ、

「オレは構わないが、一緒に来たほうが安全かもしれんぞ?」

と指で挟んだ御札で宙を切った。そこから青い汁が飛び散り、でっかい芋虫みたいなものがぼとりと地に落ちる。

「え」
「待ってるなら止めはせん。が、どちらが賢明かは、わかるな?」
「……っす」

 俺には反対する必要なんて、いやする隙すら初めからなかったようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...