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十一月
絶体絶命! 予測不能の期末勉強!? その6
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金曜の夜を過ごし(寝床は保健室のベッドだった)、次の日は朝から補習尽くしだった。といってもずっと座っていたわけではなく、適度な休憩や、気分転換に中庭にある草木の水やりをしたりと、なかなか充実した一日を過ごした。夕飯の用意をする間に風呂も済ませる(風呂も保健室にあった)。
そうして土曜の夜に、それは起きる。
「明日の夕方には家に帰すからな」
焼いた秋刀魚を机に並べてから、鏡華ちゃんは今日の自家製テストの結果を確認していく。最初ほど難しい顔をしないところを見るに、まぁまぁいい感じに仕上がっているのではないか?
すり下ろした大根を乗せ、醤油をかけてから秋刀魚の骨を取っていく。自慢じゃないが、こう見えて箸の使い方には自信がある。
それを黙って見ていたセンパイが「ちょっと」と自分の分の秋刀魚を箸でつつきながら、
「御竿護、ボクの分も骨取ってよ。食べられないでしょ」
と予想通りの台詞を吐いてきやがった。これでもだいぶんマシな頼み方にはなったが、取ってやる義理はないので無視をする。
「ねぇ、御竿護」
「頭からかじればいいじゃないすか。魚の頭って、頭が良くなる栄養があるらしいすよ」
知らんけど。
「それならキミも食べればいいじゃない」
「俺はセンパイが大事なんで、俺の分もあげようと思って取っておいたんすよ」
もちろん嘘だ。俺は魚の頭やら腹にある苦味が嫌いだし、いつもそこだけは器用に分けて食べている。このために箸使いが上達したといってもいい。
だがセンパイは「そ、そう?」と頬を微かに染めて、それから満更でもないというように鼻息を荒くした。
「し、仕方ないんだから。食べてあげないとキミが悲しむだろうから食べるだけだし」
「へいへい、じゃどうぞ」
俺は自分の頭と腹わた部分をセンパイの皿に移動させた。秋刀魚を頭からかじるセンパイがくぐもった声を出すが、食べると宣言したのはセンパイだ。是非とも頑張ってもらいたい。
「あぁそうだ、お前ら」
反対側に座った鏡華ちゃんが、コポコポと湯呑みにお茶を入れながら、
「今日は飯食ったら保健室から出るなよ」
と湯呑みに口をつけた。隣でセンパイが「うええ!?」と返事なんだか吐くんだかわからん声を出した。
「別に出ないよ。出る用事もないし」
「ならいい」
鏡華ちゃんはそれだけ言うと、自分の分に手をつけ始めた。
この時はなんでわざわざ言ったのか理解出来なかったけど、その答えは案外すぐにわかることになる。
夜の十時頃。鏡華ちゃんは奥の机で仕事を、俺たちは各自自習をしたいた。そろそろ寝るかと伸びをひとつし立ち上がると、鏡華ちゃんが「時間か」と壁掛け時計に視線をやった。
「俺様は見回りをしてくる。鍵はかけていくから、誰が来ても絶対に開けるんじゃねぇぞ」
机の横にかけてあった小さな巾着を手にして、鏡華ちゃんはいそいそと扉へ向かう。
「誰がって……。俺たち以外に誰もいないだろ?」
不思議がる俺を他所に、鏡華ちゃんは「絶対だからな」と念押しをしてそのまま保健室を出ていった。
つかセンパイと二人とかマジで勘弁してほしい。今まで鏡華ちゃんがいたからまだマシだったのに!
「いいじゃん。それよりさ、鏡華もいなくなったんだし、折角の夜を楽しもうよ」
ほら! やっぱりこうきたよ!
楽しむも何も、連日の補習で疲れが溜まっていた俺はとっとと寝たいと思っていたし、何より、もうわかると思うが、男とナニを楽しむというんだ。女子よろしく恋バナするか? するわきゃない。
「センパイも早く寝たらどっすか。ただでさえ変なことに脳みそ使ってるし、たまにはきちんと休ませたらいいと思うんすよ」
と俺は筆記用具を片し整頓して隅に置くと、自分の寝床代わりに使っているベッドに向かう。
「待って、待ってよ!」
しがみつくように腕にまとわりついてきたセンパイを、これでもかというほどにウザったく振りほどく。一瞬センパイが怯むが、キッと睨んで再び俺に手を伸ばしたところで――
コン、コン、コン。
保健室の扉をノックする音に、俺だけでなくセンパイも、凍りついて、身体ごと扉に向いたのだ。
そうして土曜の夜に、それは起きる。
「明日の夕方には家に帰すからな」
焼いた秋刀魚を机に並べてから、鏡華ちゃんは今日の自家製テストの結果を確認していく。最初ほど難しい顔をしないところを見るに、まぁまぁいい感じに仕上がっているのではないか?
すり下ろした大根を乗せ、醤油をかけてから秋刀魚の骨を取っていく。自慢じゃないが、こう見えて箸の使い方には自信がある。
それを黙って見ていたセンパイが「ちょっと」と自分の分の秋刀魚を箸でつつきながら、
「御竿護、ボクの分も骨取ってよ。食べられないでしょ」
と予想通りの台詞を吐いてきやがった。これでもだいぶんマシな頼み方にはなったが、取ってやる義理はないので無視をする。
「ねぇ、御竿護」
「頭からかじればいいじゃないすか。魚の頭って、頭が良くなる栄養があるらしいすよ」
知らんけど。
「それならキミも食べればいいじゃない」
「俺はセンパイが大事なんで、俺の分もあげようと思って取っておいたんすよ」
もちろん嘘だ。俺は魚の頭やら腹にある苦味が嫌いだし、いつもそこだけは器用に分けて食べている。このために箸使いが上達したといってもいい。
だがセンパイは「そ、そう?」と頬を微かに染めて、それから満更でもないというように鼻息を荒くした。
「し、仕方ないんだから。食べてあげないとキミが悲しむだろうから食べるだけだし」
「へいへい、じゃどうぞ」
俺は自分の頭と腹わた部分をセンパイの皿に移動させた。秋刀魚を頭からかじるセンパイがくぐもった声を出すが、食べると宣言したのはセンパイだ。是非とも頑張ってもらいたい。
「あぁそうだ、お前ら」
反対側に座った鏡華ちゃんが、コポコポと湯呑みにお茶を入れながら、
「今日は飯食ったら保健室から出るなよ」
と湯呑みに口をつけた。隣でセンパイが「うええ!?」と返事なんだか吐くんだかわからん声を出した。
「別に出ないよ。出る用事もないし」
「ならいい」
鏡華ちゃんはそれだけ言うと、自分の分に手をつけ始めた。
この時はなんでわざわざ言ったのか理解出来なかったけど、その答えは案外すぐにわかることになる。
夜の十時頃。鏡華ちゃんは奥の机で仕事を、俺たちは各自自習をしたいた。そろそろ寝るかと伸びをひとつし立ち上がると、鏡華ちゃんが「時間か」と壁掛け時計に視線をやった。
「俺様は見回りをしてくる。鍵はかけていくから、誰が来ても絶対に開けるんじゃねぇぞ」
机の横にかけてあった小さな巾着を手にして、鏡華ちゃんはいそいそと扉へ向かう。
「誰がって……。俺たち以外に誰もいないだろ?」
不思議がる俺を他所に、鏡華ちゃんは「絶対だからな」と念押しをしてそのまま保健室を出ていった。
つかセンパイと二人とかマジで勘弁してほしい。今まで鏡華ちゃんがいたからまだマシだったのに!
「いいじゃん。それよりさ、鏡華もいなくなったんだし、折角の夜を楽しもうよ」
ほら! やっぱりこうきたよ!
楽しむも何も、連日の補習で疲れが溜まっていた俺はとっとと寝たいと思っていたし、何より、もうわかると思うが、男とナニを楽しむというんだ。女子よろしく恋バナするか? するわきゃない。
「センパイも早く寝たらどっすか。ただでさえ変なことに脳みそ使ってるし、たまにはきちんと休ませたらいいと思うんすよ」
と俺は筆記用具を片し整頓して隅に置くと、自分の寝床代わりに使っているベッドに向かう。
「待って、待ってよ!」
しがみつくように腕にまとわりついてきたセンパイを、これでもかというほどにウザったく振りほどく。一瞬センパイが怯むが、キッと睨んで再び俺に手を伸ばしたところで――
コン、コン、コン。
保健室の扉をノックする音に、俺だけでなくセンパイも、凍りついて、身体ごと扉に向いたのだ。
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