【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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十一月

球技大会は保健室で! その2

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 当たり前だが、上位二チームに入るくらいわけなかった。なのでそこの経緯は省略だ、各々好きなように解釈してくれ。
 さて問題は一年生の、下獄のクラスと当たった時に起こった。

「先輩がた、よろしくお願いします!」

 元気に頭を下げてきた下獄。それに「よろしく」と適当に愛想笑いを返し、俺は再びガードマンの位置へと着いた。ずっとガードマンを任されていたが、やはりというべきか、ボールが来たことなどただの一度もなく、今回も俺はラク出来ると思っていたのだが。

「護! わりぃ、そっちいっちまった!」
「うえぃっ!?」

 意識外から飛んできたボールは俺の横を通り過ぎ、見事に敵側のゴールマンの手に収まってしまう。

「す、すまん、ぼーっとしてた」
「大丈夫、御竿くんのせいじゃないよ。太刀根くんがあそこで決められなかったのがいけないだけだから」
「だーからわりぃって言ってんだろー」

 お互いに軽口を叩き合いながら、二人は再びゴールへ向かいボールを回していく。簡単に点数を取り返したのは流石だが、俺はそこでハタと気づく。

「あれ、下獄はどこだ……?」

 あそこまででかけりゃ一発でわかるはずだが、コートのどこにも見かけない。控えの選手かと思い、ベンチに目をやったところで、

「護先輩、ウチを呼びましたか?」
「おわっ」

 後ろから聞こえた声に飛び上がり、俺は反射で身構える。

「げ、下獄!? お前ゴールマンだったのかよ!」
「はい! クラスの皆さんから、ぜひと言われまして」
「あー、なるほど……」

 確かにこの巨体ならゴールマンにぴったりかもしれない。いや、むしろどこでもやっていけそうだ。

「最初はコートに入っていたんですが、他のクラスからやけにタックルされてしまって。それが原因かはわからないんですが、こちらに回されてしまいました」

 下獄は舌を出して「てへへ」と笑った。巨体のほうでやられると、なかなかにダメージのくる仕草である。やるならせめて、小さいほうでやってほしかった。

「そうか、なら頑張れ」
「はい! でも先輩、ウチらを応援する暇なんてないですよ。ほら」
「んぁ?」

 目の前をズバンッと何かが突っ切った。なんだ? 今のはボールか? いやボールだ、よく見ろ俺。下獄が胸の辺りに、両手でボールを受け止めているじゃないか。
 回転のせいか微かに煙が出てるけど。

「待って、何そのボール……」
「ボールですよ? 皆さーん、このままの調子で頑張りましょう! 皆さんの愛は、ウチがしっかりと受け止めますから!」

 下獄の掛け声で、一年生の士気が上がっていく。

「くっ、俺たちもやるぞ! 護、ボールが来たら阻止は頼んだからな!」
「え? ええ!?」

 そこからはお互い攻めの一点張りだった。こっちが点を上げれば一年も点を上げ返し、ゴールを弾けば弾き返し、そうして最後の局面。
 残り時間は少ない。このまま守りきれば俺たちの勝ちだというのに、ボールが回ってきているではないか。下獄がボールを受け取れば一年が勝ち越してしまう、それはなんか悔しい。

「護! 弾いてくれ!」
「御竿くん!」

 一年生がこちらに向かってボールを飛ばしてきた!
 その豪速球は今までと比べ物にならないほどに早い。なんで俺が追えてるのか不思議なくらいだ。

 駄目だ、よけるか? こんなの当たったら死ぬに決まってんだろ!
 いや駄目だ。よけたら勝敗が決まっちまう。ここで俺が、俺が止めなきゃいけないんだ……!

「う、あ、うああああああ!」

 俺は両手を大きく広げ、ボールをしっかりと受け止めた。

「ぐっ、はっ、なんだこれ、重い……!?」

 ボールとは思えない重みだ。
 特に思い出もないが、今までの学生生活が目の前をよぎっていくのがわかる。
 俺、まさか死ぬのか?

「あ、あ、あ、あああああ!?」

 ボールの勢いと共にふっ飛ばされた。
 クラスメイトたちが「御竿!」とか「護くん!」とか叫ぶのが聞こえる。心配するぐらいなら俺を出すなと言いたい。

「ぐはっ」

 床に背中から叩きつけられる。全身を痛みが襲う。その中でも、どうやら俺はボールを離すことはなかったらしい。ぼうっと天井を見つめる俺の耳に「二年生の勝利だ!」と太刀根の声が届いてきた。
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