【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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九月

ガラスの靴は誰のもの? その7

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 劇場の床下って見たことあるか? 俺はない。ない、が、目の前に広がる光景は、明らかに劇場の床下とは思えないものだった。
 どっかの廃遺跡と勘違いしそうな石造りの建築物。ところどころ崩れ、苔生こけむしているのがやけにリアルだ。湿った空気が鼻をつき、水の音がどこからか聞こえてくる。

「ここ、どこ……」

 俺は天井を見上げ呟いた。十メートルほど上には、俺たちがさっき飛び込んだであろう床板が見える。ちなみに十メートル落ちて無事だったのは、一重に下敷きになってくれたセンパイのお陰だ。

「どこって、地下世界に決まってるでしょ」
「地下世界って普通にあるもんか……?」

 足元に生える草木を見るに、ここは作り物ではなく、実際にある場所のようだ。しかも“普通”に在る場所だという。
 俺は聞くのも無駄だと諦め、近くの柱に触れながら、

「それで? こっからどこに行くんすか」

と大して期待せずに聞いてみた。柱は意外にもしっかりしていて、見た目ほどには老朽化していないようだ。

「どこって。帰るんでしょ? 学園の敷地外まで出て、そこから地上に出るに決まってるでしょ」
「ふーん。道わかるんだろうな」
「ボクを誰だと思ってるの。ボクは、ボク、は……」

 そこまで言い、センパイは口籠ってしまう。

「どうした? いつも通り、屹立家のーって言えばいいだろ」
「そ、そうだよ。ここは屹立家が管理している場所なんだから。だからボクはここをよく知っているんだから」

 センパイは自慢気に鼻を鳴らしてから、ずんずんと先を歩いていく。その後を追いながら、道中、草木が倒れている箇所がいくつかあるのに気づいた。

「誰か来てるのか?」
「さっき、あの二人、えぇと猫汰巧巳と下獄嬢だっけ? ここを通って上に出たし。落ちた場所が川で、随分流されて大変だったんだから」
「へ、へー……」

 尚更ここがよくわからない。つか、これを管理してる屹立家って何者なんだ? 設定資料集があるなら見てみたい。

「にしても、センパイが俺を助けるとか、一体どういう風の吹き回しだ?」
「……」
「あー、別に嫌味じゃないんだけどさ……」

 黙り込んだセンパイに、流石に少し言い過ぎたかと焦る。しかしすぐに聞こえた「……たから」という言葉に、聞き耳を立てた。

「センパイ?」
「ボクをボクとして見てくれたから。屹立家のボクじゃなく、キミはボクを普通に扱ってくれたでしょ。だ、だから、キミがいなくなったら、ボクを、ボクとして見てくれる人がいなくなっちゃうでしょ」
「長っ。一行にまとめろ」
「は、はぁ!? だ、だから、壱はボクのものってこと! そうだよ、壱は渡さないんだから!」

 顔を真っ赤にしながら、センパイは地団駄を踏んだ。全く、メンヘラでツンデレでしかもブラコンときた。最悪な属性持ちのキャラクターである。
 俺は「へいへい」と適当に流し歩き続け、どれくらいか歩いた頃に、センパイが天井を指差した。

「この上が、キミの家の前に出るようになってるから」
「なんで俺の家なんだ」
「勘違いしないで。ボクと壱の家の前だから」
「そうでしたね」

 どうやって十メートル上に出るのかと考えていると、センパイがスマフォを取り出して何か操作した。すると、天井がウイーンと開いていき、そこからゴンドラが降ろされてきた。

「早く乗りなよ。ボクも帰ってシャワー浴びたいんだから」
「……おう」

 そうしてゴンドラに乗り、無事に家へ帰れた俺は、母さんに先に風呂に入ると伝えて、どっと疲れた身体を癒やしたのだった。
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