【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

文字の大きさ
上 下
90 / 190
九月

ガラスの靴は誰のもの? その5

しおりを挟む
 淡く光りながら宙を飛び回るカボチャたち。ジャック・オー・ランタンを模したそれらは、明らかに不気味で、更に言うなれば時期が一ヶ月ほど早い気もする。
 だけど観客たちは気にしていないのか、むしろ「きゃー!」だの「提灯ジャック様ー!」だの騒ぎ立てている。

「おい! 変な力を使うのはやめろ! 卑怯だぞ!」
「いや卑怯ってか、なんかもう疲れた……」

 このゲームで過ごすこと半年。会長の無茶苦茶ぶりにも慣れたが、これを“変な力”で済ませる太刀根もどうかと思う。

「はっはっは、ではお見せしよう。我が力、混沌のシャイニング権化・フォースを!」
「な、何!?」

 会場内に、会長が鳴らしたであろう指パッチンの音が響いた。太刀根がいる階段上から何かが弾け飛ぶ音がし、続いて会場内が一気に明るくなっていく。
 急に明るくなったそれに目が追いついた頃、太刀根と会場中から、鼓膜が破れんばかりの悲鳴が聞こえだす。

「わああああ!? てめ、な、ななな何してくれんだ!」

 慌てる太刀根を見れば、履いていたカボチャパンツは跡形もなく、必死で股間を押さえているところだった。

「太刀根……」
「ち、ちがっ、護、見るなぁ。見ないでくれぇ!」
「お前そういう役割ばっかだな……」

 階段上から落ちてきたのだろう。床にはカボチャの皮が散乱している。

「あれ。皮しかない?」

 そうなのだ。カボチャパンツが爆発したのなら、もう少し中身が散らかっててもいいはずだが、どこにも見当たらない。種すらない。
 首を傾げていると、暗闇に乗じて移動してきたらしい会長が、椅子に座っている俺の後ろから現れた。

「食べ物を粗末にするわけなかろう」
「うわっ」
「予め中身はくり抜き、カボチャプリンにしておいた。後で配布する予定だ」
「いや、別に、食べたくないっす……」

 カボチャプリンは好きだ。普通のプリンよりも。だけど気が進まず、俺はやんわりと断る。すると階段上の太刀根が涙目涙声のまま、

「な、なぁ先生! 先生たちは俺の仲間なんだろ!? そのカボチャ、なんとかしてくれよ!」

と必死に訴えてきた。しかし牧地は「ん?」とどこ吹く風である。

「だってワタシ、馬だもの♪ パカラッ」
「俺様はかかりつけ医だ。無茶を言うな」

 あくまで役を貫き通すつもりらしい。

「じゃ、じゃあ護!」
「いやいや、遠慮するわ。靴だし」
「友達だろ!?」
「靴を友達と呼ぶな。淋しい奴め」

 第一、カボチャが取れたとはいえ、太刀根は白タイツを履いているのだ。股間丸出しにはなっていないはずなのだが……。

「うぅ、くそ……。やっと、やっと護が手に入ると思ったのに」
「だから俺は靴だっつの」

 冷えた声で返すも、役にのめり込んでいるのか、太刀根の耳には全く届いていないようだ。

「こうなりゃ、実力行使しか……!」

 太刀根がヤケクソ気味に階段を降りようとして、

「ぐえっ」

 腰にワイヤーがついたままなのを忘れていたらしい。自爆して、そのまま意識を手放し宙吊りになってしまった。アホだな。

「さて」
「ひっ」

 ぞわりとした何かが背筋を這う。首筋を会長の指がなぞっただけのようだが、悪寒を感じるには十分だ。

「これで靴はオレのものだ。我が手に堕ちる覚悟は出来たか?」
「そもそも最初からそんな気はないのだが!」
「面白い靴だ、オレと話をするなどとは」
「確かに靴だから話せないかもしれんが、それって今さらすぎだろ! 俺は断固拒否するからな!」

 助けを乞ようにも、先生たちはただの馬とかかりつけ医だ。アテにならん。
 どうする、どうする……!? 靴なら、俺を最後に手にするのは主人公のはずだろ。そうだ、主人公が――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...