【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

文字の大きさ
上 下
86 / 190
九月

ガラスの靴は誰のもの? その1

しおりを挟む
 悲劇は、学祭二日目に起こった。

 その日も俺は生徒会の仕事をこなすため、朝イチで会長から紙の束を受け取り、予定通り会場内を歩いていた。そして自分のクラスに来た時だ。

「御竿くん!」
「猫……、巧巳」

 なかなか騒がしそうな中、猫汰が見回りに来た俺を見つけ「ちょうどよかった」と手を引っ張り出した。

「え、何?」
「ちょっと予想外のことが起こってね」

 予想外? なんのことかわからず、俺は騒がしい教室内を見渡す。なんだ、俺のクラス、こんなに人数が少なかっただろうか。いや、太刀根みたいに部活の催しに行ってる奴もいるから、全員がいるとは限らないんだけど。
 それでもパッと見でわかるくらいには少ない。一体どうしたんだ?

「実は昨日、先生方の屋台焼きを食べた生徒のうち、何人かが体調不良を訴えてね」
「……ん?」
「どうやら一年の先生が焼いていた何かに、口には言えないナニカが入っていたようでね。それを口にした生徒は、高揚し、熱に浮かされ、動悸が激しくなるらしい」
「へ、へぇ……」

 昨日の屋台焼きを思い出す。そういや俺は、鏡華ちゃんたちのたこ焼きしか食べていないし、違う屋台の何かを食べた生徒が、股間を押さえてトイレに行っていた気も、する……。

「それのお陰で、僕たちのする劇の人数が足りないことになってね。何人かに声はかけているんだけど、急遽、劇をやれる人なんてなかなかいなくて……」
「そ、そうか」

 あっれー。これは確認を怠った俺のせい? いや俺のせいだよな。後ろめたさで猫汰を見れず、俺は「じゃ、じゃあ」と背を向けたところに。

「我が生徒会が手を貸そう」
「会長!?」

 髪を手でさらりと払い、腕組みをした会長が現れやがった。いや、あんたも仕事あるんじゃないの!? とツッコみたいのも山々だが、俺は会長の言葉が気になり、

「会長、今なんて……」

と復唱を促した。もちろん会長は、当たり前だと言わんばかりに俺を鼻で笑うと、

「いや何。我が生徒会の不手際で、今回の事態を招いたも当然だと思ってな。準備をしてきた生徒のためにも、ここは我が生徒会が手を貸すべきだと思ったのだ。なぁ、護くん?」
「ひっ、あ、あぁ、そっすね」

 俺は引きつった笑いを返す。昨日の俺、なんでちゃんと調べなかったんだよ馬鹿野郎。
 猫汰を見れば、多少合点はいってなさそうではあるが、それでも納得はしたらしい。すぐに健康な生徒たちに声を掛けていき説明すると、心底嫌そうに眉を寄せながら、会長に分厚い紙束を突き出してきた。

「これが演目です。アテはあるんですか?」

 受け取った紙束を、俺も横から覗き込む。表紙には、かの有名なガラスの靴を落としてしまうお姫様のタイトルが書かれてある。ふむ、オリジナルじゃないなら、付け焼き刃でもなんとかなりそうだ。
 更にページを捲れば、役名と演者の名前が書いてある。しかし、何名かの演者は線が引かれており、それが足りない役者ということは一目でわかった。

「足りないのは八人か。任せておくがいい。このオレが、一流の演劇にしてやろう」
「八人……? 会長、まさか俺も入ってます?」
「当たり前だろう! 護くん、キミには映えある娘役をしてもらおうか!」
「だー! やっぱりかよ!」

 せめて男役にしてほしかったが、元はといえば自分のせいでもある。俺は重いため息をつきながら、猫汰に渡された台本に目を通し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...