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九月
大改造! 屹立パワーで大☆学祭! その11
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一日目、前夜祭。間違いのないよう言っておくが、今は真っ昼間だ。前“夜”祭とは何かと問い詰めたい。まぁ、それを言ったところで、細かいことは気にするなで終わりそうだけど。
体育館での有り難いお言葉をもらった俺たちは、そのまま自分たちのクラスやら部活やらの仕事へつく。猫汰は牧地に呼ばれて、さっき別れたばかりだ。
「じゃ、俺は剣道部の催しがあるからさ」
太刀根が名残惜しそうに手を握ってきた。あまつさえ指まで絡めてきたものだから、俺はゾワッと鳥肌を立たせながら手をぶんぶんと上下に振った。
離れない。
「離せ」
「ごめんごめん。つい、離れるのが嫌で」
これが可愛い子だったら良かったのだ。一緒に学祭を見て回って、お化け屋敷(あるかどうか知らん)で距離が縮まって、そのままいい雰囲気に……。
「いいな、それ」
自分の妄想につい顔が緩む。その手は未だに太刀根と繋いだままなのに。
「護も同じ気持ちなのか……?」
「あ、ごめん。違う、間違えた、全然違うわ」
即否定して、今度こそ手を振り払ってやれば、太刀根は残念そうに肩を落とした。しかしすぐにいつもの元気を取り戻すと、
「時間が出来たら剣道部にも寄ってくれよな。サービスするからよ」
「剣道部って何やんの」
「カフェだよ、カフェ。剣道カフェ」
剣道カフェってなんだ? 普通のカフェと違うのか? にしても、気のせいか、猫汰の冷えた気配を感じるような。いやいや、牧地と話してたし、近くにいるわけがない。
「気になるし行くわ。全部お前の奢りな」
「へ!? いや、それは流石に、ちょっと、その」
「サービスしてくれるんだろ?」
「いや言ったけど、言ったけど……」
「じゃ、よろしく」
それ以上言わせないようにピシャリと言い放ってから、俺は太刀根と別れた。太刀根は名残惜しそうにしていた。もちろん気づかないフリをした。
「にしても……、なんでもアリだよなぁ、屹立家」
夏休み然り、今回のこと然り。ファンタジーもびっくり、いやSFもびっくりの高度な技術だ。そのうち時間遡行もしてしまうんじゃなかろうか。
「まさかな。流石にそれはないか」
自分の考えを自分で否定してから、俺は生徒会室へ向か――いや、生徒会室どこよ。
「案内板とかないの?」
「安心したまえ、護くん。キミには特別巡回コースを作った」
「ぎゃっ!?」
背後から声をかけられ、俺は奇声を上げて飛び上がった。
「会長!」
「まずはそうだな、一年のお化け屋敷に行ってもらおうか」
「お化け屋敷……」
そう会長から手渡されたのは、一年生合同お化け屋敷の企画書だ。会長や先生の承認印、それから代表生徒の名前。その中に、下獄の名前もある。
「あいつ、代表してたのか」
「うむ。彼はなかなか根性のある生徒だからな、オレからも推薦しておいたのだ。では任せたぞ、護くん。オレは他にも仕事があるからな」
会長は更にあと何枚かの企画書を俺に押し付け、足早に校門へと行ってしまった。よく見れば、やたらいいスポーツカーや高そうな車やらが入ってきている。
偉い人が来るとか前に言っていたし、それのお迎えかもしれない。
「はは……。学祭は仕事と回れってか」
まぁ、これも仕方がない。むしろ下手に野郎と回るよりマシかと思い直し、俺は企画書をくるりと丸くしてから、重い足取りで一年生の企画、お化け屋敷に向かったのだった。
体育館での有り難いお言葉をもらった俺たちは、そのまま自分たちのクラスやら部活やらの仕事へつく。猫汰は牧地に呼ばれて、さっき別れたばかりだ。
「じゃ、俺は剣道部の催しがあるからさ」
太刀根が名残惜しそうに手を握ってきた。あまつさえ指まで絡めてきたものだから、俺はゾワッと鳥肌を立たせながら手をぶんぶんと上下に振った。
離れない。
「離せ」
「ごめんごめん。つい、離れるのが嫌で」
これが可愛い子だったら良かったのだ。一緒に学祭を見て回って、お化け屋敷(あるかどうか知らん)で距離が縮まって、そのままいい雰囲気に……。
「いいな、それ」
自分の妄想につい顔が緩む。その手は未だに太刀根と繋いだままなのに。
「護も同じ気持ちなのか……?」
「あ、ごめん。違う、間違えた、全然違うわ」
即否定して、今度こそ手を振り払ってやれば、太刀根は残念そうに肩を落とした。しかしすぐにいつもの元気を取り戻すと、
「時間が出来たら剣道部にも寄ってくれよな。サービスするからよ」
「剣道部って何やんの」
「カフェだよ、カフェ。剣道カフェ」
剣道カフェってなんだ? 普通のカフェと違うのか? にしても、気のせいか、猫汰の冷えた気配を感じるような。いやいや、牧地と話してたし、近くにいるわけがない。
「気になるし行くわ。全部お前の奢りな」
「へ!? いや、それは流石に、ちょっと、その」
「サービスしてくれるんだろ?」
「いや言ったけど、言ったけど……」
「じゃ、よろしく」
それ以上言わせないようにピシャリと言い放ってから、俺は太刀根と別れた。太刀根は名残惜しそうにしていた。もちろん気づかないフリをした。
「にしても……、なんでもアリだよなぁ、屹立家」
夏休み然り、今回のこと然り。ファンタジーもびっくり、いやSFもびっくりの高度な技術だ。そのうち時間遡行もしてしまうんじゃなかろうか。
「まさかな。流石にそれはないか」
自分の考えを自分で否定してから、俺は生徒会室へ向か――いや、生徒会室どこよ。
「案内板とかないの?」
「安心したまえ、護くん。キミには特別巡回コースを作った」
「ぎゃっ!?」
背後から声をかけられ、俺は奇声を上げて飛び上がった。
「会長!」
「まずはそうだな、一年のお化け屋敷に行ってもらおうか」
「お化け屋敷……」
そう会長から手渡されたのは、一年生合同お化け屋敷の企画書だ。会長や先生の承認印、それから代表生徒の名前。その中に、下獄の名前もある。
「あいつ、代表してたのか」
「うむ。彼はなかなか根性のある生徒だからな、オレからも推薦しておいたのだ。では任せたぞ、護くん。オレは他にも仕事があるからな」
会長は更にあと何枚かの企画書を俺に押し付け、足早に校門へと行ってしまった。よく見れば、やたらいいスポーツカーや高そうな車やらが入ってきている。
偉い人が来るとか前に言っていたし、それのお迎えかもしれない。
「はは……。学祭は仕事と回れってか」
まぁ、これも仕方がない。むしろ下手に野郎と回るよりマシかと思い直し、俺は企画書をくるりと丸くしてから、重い足取りで一年生の企画、お化け屋敷に向かったのだった。
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