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九月
大改造! 屹立パワーで大☆学祭! その10
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爽やかな秋空。日差しは暑くもなく、時折吹いてくる風は心地よく髪を揺らしていく。そんな気分のいい日に、ここBL学園の学祭は始まった。
「あっという間に当日かよ……」
前夜祭という名の、理事長の有り難いお言葉を聞くために、俺たち生徒は朝から体育館に集められていた。壇上には、これまた立派な花輪が飾られていて、一瞬何かのオープニングセレモニーかと思ったくらいだ。
「ま。すぐ終わるって」
隣に立っている太刀根が、上機嫌に俺の肩に腕を回した。それを若干ウザったそうに解いてから、そういえば理事長の顔見たことないなとふと思う。
「なぁ、理事長ってどんなん? ジジイか?」
「どんなんって……」
「もしかして覚えてないのかい? まぁ、覚える必要もないと思うけどね」
相変わらず棘のある言い方で、前にいる猫汰がふんと鼻を鳴らした。この間のセンパイの件を後で知った猫汰は、それからというもの、ご機嫌があまりよろしくない。まぁ、特に害があるわけでもなし、好きにほっといてるけど。
「じゃあ、前夜祭を始めちゃうわね♪」
マイクを通して牧地の声が響いた。ざわついていた体育館内が、少しだけ静かになる。
「まずは、屹立中理事長からのご挨拶よぉ♪」
「……は?」
牧地に促されるまま壇上に上がったのは、どこかで見たことのある銀髪に、翠の目をした、初老の爺さんだった。微かに交じる白髪が、威厳を醸し出している、気もしなくはない。
「我がBL学園、高等部諸君。この日のために諸君らは、日々、勤勉に、時に情熱的に過ごしたことだろう――」
なんか理事長の爺さんが話しているが、俺は構わず猫汰の背中をつつく。
「なぁ」
「っ、なんだい?」
「まさか屹立ってさ、まさかのまさか?」
猫汰は少しだけ首を傾けるようにして、
「まさかのまさかだよ。会長のお祖父様だね」
と小声で返す。絵に書いたような設定に、俺は呆れて物も言えない。
「理事長の孫で会長とか、まじで会長気に食わねぇ。しかも容姿端麗、文武両道、欠点はムカつくことぐらいだな」
「それはお前ぐらいだろ」
いかに容姿が整っていようが、勉強も運動も出来ようが、俺には全く関係ないしどうでもいい。つか、最大の欠点は人外なことだと思う、わりと真面目に。
「――その悔いが一片も残ることがないよう、この三日間、有意義に過ごしたまえ」
「屹立理事長、ありがとうございましたぁ♪」
パラパラとまばらに鳴る拍手と共に、理事長の爺さんは壇上を降りていく。どうやら話は終わったようだ、聞いてなかったけど。
さて、これで前夜祭が始まるのか。これから三日間、生徒会の仕事に追われるのかと思うと憂鬱になる。
「じゃ、次に屹立会長からのご挨拶よ♪」
「は? なんで会長?」
再びざわつき始めた生徒たちに構うことなく、会長は堂々と壇上への階段を上っていく。そうして机の前まで来ると、ダンッと机を力強く叩いた。
「挨拶するまでもないとは思うが、通例に従い名乗るとしよう。高等部三年、生徒会会長、屹立壱だ。本日から三日間、学園祭を執り行う貴様らのために、我が生徒会、率いては屹立壱の力を以て、校舎にある仕掛けを施してもらった」
パチン。
会長の指パッチンの合図と同時に、体育館が縦揺れしだす。慌てだす生徒たち。ウイーンという音と共に体育館の天井が開いていき、綺麗な空が次第に見えてくる。
「まじかよ……」
縦揺れが収まった頃。体育館は全面ガラス張りの壁に覆われ、そして校舎もまた、どっかのアウトレットモールかと勘違いするほどに、その外見を変えていたのだった。
「あっという間に当日かよ……」
前夜祭という名の、理事長の有り難いお言葉を聞くために、俺たち生徒は朝から体育館に集められていた。壇上には、これまた立派な花輪が飾られていて、一瞬何かのオープニングセレモニーかと思ったくらいだ。
「ま。すぐ終わるって」
隣に立っている太刀根が、上機嫌に俺の肩に腕を回した。それを若干ウザったそうに解いてから、そういえば理事長の顔見たことないなとふと思う。
「なぁ、理事長ってどんなん? ジジイか?」
「どんなんって……」
「もしかして覚えてないのかい? まぁ、覚える必要もないと思うけどね」
相変わらず棘のある言い方で、前にいる猫汰がふんと鼻を鳴らした。この間のセンパイの件を後で知った猫汰は、それからというもの、ご機嫌があまりよろしくない。まぁ、特に害があるわけでもなし、好きにほっといてるけど。
「じゃあ、前夜祭を始めちゃうわね♪」
マイクを通して牧地の声が響いた。ざわついていた体育館内が、少しだけ静かになる。
「まずは、屹立中理事長からのご挨拶よぉ♪」
「……は?」
牧地に促されるまま壇上に上がったのは、どこかで見たことのある銀髪に、翠の目をした、初老の爺さんだった。微かに交じる白髪が、威厳を醸し出している、気もしなくはない。
「我がBL学園、高等部諸君。この日のために諸君らは、日々、勤勉に、時に情熱的に過ごしたことだろう――」
なんか理事長の爺さんが話しているが、俺は構わず猫汰の背中をつつく。
「なぁ」
「っ、なんだい?」
「まさか屹立ってさ、まさかのまさか?」
猫汰は少しだけ首を傾けるようにして、
「まさかのまさかだよ。会長のお祖父様だね」
と小声で返す。絵に書いたような設定に、俺は呆れて物も言えない。
「理事長の孫で会長とか、まじで会長気に食わねぇ。しかも容姿端麗、文武両道、欠点はムカつくことぐらいだな」
「それはお前ぐらいだろ」
いかに容姿が整っていようが、勉強も運動も出来ようが、俺には全く関係ないしどうでもいい。つか、最大の欠点は人外なことだと思う、わりと真面目に。
「――その悔いが一片も残ることがないよう、この三日間、有意義に過ごしたまえ」
「屹立理事長、ありがとうございましたぁ♪」
パラパラとまばらに鳴る拍手と共に、理事長の爺さんは壇上を降りていく。どうやら話は終わったようだ、聞いてなかったけど。
さて、これで前夜祭が始まるのか。これから三日間、生徒会の仕事に追われるのかと思うと憂鬱になる。
「じゃ、次に屹立会長からのご挨拶よ♪」
「は? なんで会長?」
再びざわつき始めた生徒たちに構うことなく、会長は堂々と壇上への階段を上っていく。そうして机の前まで来ると、ダンッと机を力強く叩いた。
「挨拶するまでもないとは思うが、通例に従い名乗るとしよう。高等部三年、生徒会会長、屹立壱だ。本日から三日間、学園祭を執り行う貴様らのために、我が生徒会、率いては屹立壱の力を以て、校舎にある仕掛けを施してもらった」
パチン。
会長の指パッチンの合図と同時に、体育館が縦揺れしだす。慌てだす生徒たち。ウイーンという音と共に体育館の天井が開いていき、綺麗な空が次第に見えてくる。
「まじかよ……」
縦揺れが収まった頃。体育館は全面ガラス張りの壁に覆われ、そして校舎もまた、どっかのアウトレットモールかと勘違いするほどに、その外見を変えていたのだった。
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