【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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九月

大改造! 屹立パワーで大☆学祭! その3

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 一体誰が広めたのか知らないが、武道場には既にたくさんの生徒が集まっていた。中に入れず、外の竹林まで溢れ返るほどに。
 しかし会長が来た瞬間、まるで波が分かれるようにして道が出来、俺と益州は難なく武道場に入れた。会長はどっかの神話の、海を割ったとかいう人の生まれ変わりかもしれない。

「みーさおさんっ」
「……よ、駄女神」

 武道場の真ん中、特等席に座らせられた俺の隣に、観手がなんの迷いもなく座ってきた。相変わらず楽しそうな顔である。殴りたい。

「すごいですね~、またまたレア! しかも会長エンドまっしぐら! いや~、私としては他のイベントも網羅して」
「今なんつった」
「イベントを全網羅」
「その前だよ。何? 会長エンド?」

 嫌な響きだ。否定してほしい。しかし観手は満面の笑みを俺に向け、

「はい! 一周目でレア会長エンドとは、流石ギャルゲマスター御竿さんですね!」
「そんなエンドは望んでないし、変なあだ名で呼ぶな! ついでに俺はエロゲのほうが好きだ」
「うわ。女の子にそれ言います? だから彼女いなかったんじゃないですか」
「うるさい」

 正論をつかれて少し悔しかったので、観手の頭を軽く叩いた。なんか言われたが無視だ。

「おい屹立、どういうことだ!」

 荒ぶる益州の声に、視線を観手から先輩がたに移す。防具をしっかり着た益州とは反対に、会長は何も着ることなく、つか竹刀を持つこともせずに、益州と静かに対峙していた。

「なぜ防具を着ない! まさかそのまま俺とやるつもりか!?」
「着る必要などどこにもない。遠慮はいらん。本気で来い」

 いや本気も何も……。
 会長にそう言われたところで、流石に何もつけていない相手に対し、竹刀を振るうのは気が引けるらしい。益州は「しかし……」と踏み出すのを迷っているようだ。
 ちゃんと言っておくが、剣道の試合をする時はきちんと防具をつけような。あれは会長が人外だから、竹刀くらいじゃ怪我しないだろうから、言えることだからな。

「益州虎」
「な、なんだ……」
「貴様の覚悟は所詮その程度か。だから貴様は駄目なのだ。仮にも部長という肩書を持つおさならば、部のために貴様がしなければならぬことはなんだ?」
「……」

 なんかいいこと言ってる風だけど、いや、あんた防具着けようよ。それで解決するだろうに。

「なら俺もお前に合わせよう」
「ちょ、ちょっと益州先輩……」

 益州も防具を脱ぎ始めたぞ! 何やってんのこの人ら! つかあんたは着てろよ!

「ほう……? なかなかいい覚悟だ。ならばオレも敬意を評して、竹刀を持ってやろう」
「それは有り難い。武器くらい持ってもらわんと、やり辛いからな」

 ああああ……。駄目だ。絶対に益州勝てないやん。俺の未来確定したやん。頭を抱える俺を他所に、防具を着た審判の「始め!」の声で、試合は始まった。

「きぃぃいいえええ!」

 益州が竹刀を振り被り、強く一歩を踏み出した。ダン! という力強い音が道場内に響き、風を切る音と共に竹刀が振り下ろされる。

 バキッ。
 ……バキッ?

「えええ!? 床が割れた!?」

 降ろされた竹刀は道場の床を叩き割り、木片を宙に舞わせていた。いやいや、あんたも十分化け物だったわ!

「っ、会長は!?」

 いたはずの会長がいない。
 どこに行ったのかと視線を右に左に移動する。いない。

「はっはっはっ、ここだ!」
「会長!」

 道場の天井に、まるで忍者のように足だけでぶら下がっている。いや、あれは蝙蝠こうもりか? なんにしろ、足だけでぶら下がれるあたりただの変態かもしれない。ちなみに竹刀を持ったまま腕組みしている。

「腕を上げたようだな、益州虎。だが」

 会長が天井を足で蹴り、一瞬で益州の前まで来ると「はっはっはっ」と竹刀を右に左に振る。

「う、うわあああ!」

 早すぎて剣先が見えない!
 巻き起こる風も邪魔して二人の姿も見えない! つか、風と一緒になんか舞ってるような……?

「なんだこれ。布か?」

 手元に来たそれを摘む。それは白い布切れだった。それが何かを理解するよりも早く、道場内に黄色い悲鳴が湧き上がった。布切れから視線を上げ、収まった風の先、二人を見れば。

「益州先輩!?」

 何も着ていない、文字通り真っ裸の益州が、竹刀を構えたままの姿で会長と対峙していた。こちらからはケツしか見えないが、それだけで反対側にいる生徒が何を見ているかは想像にかたくない。
 しかし立っているのもやっとだったのか、益州ががくりと膝をついた。とりあえず何か着ろよ。

「おのれ、おのれ屹立! こんなことして許されると思うなよ!」
「全く。煩い口だ」
「んぐっ」

 益州の顎を竹刀で上げさせると、会長は竹刀の先を益州の口に容赦なく入れた。

「貴様は負けた。敵はまだいるというのに、膝をつき、こうべまで垂れ、だが口では吠えようとする。誰がそのような者の遠吠えに耳を貸すとでも?」
「ふぐっ……、んん」

 流石にやりすぎではと止めようとした時だった。

「壱! 俺が相手だ!」

 人ごみを掻き分け、必死の形相の太刀根が来たのは。
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