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八月
恐怖体験、コミックマーケット! その7
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アマゾンの奥地に行ったことがあるか? 俺はない。だけど今の気分はそんな感じだ。
未知への遭遇、そして邂逅、そこから流れてくる快感。俺は今、この“人外エリア”にて、新たな自分の性癖と向き合っていた。
「御竿くん」
「うーん」
「御竿くん」
「うん」
「はぁ……。御竿くん」
「おわっ」
耳に息を吹きかけられて、俺は自分でも驚くほどの跳躍力を発揮し飛び上がった。それを見た猫汰が顔を背け、肩を微かに揺らす。どうやら笑っているらしい。
「な、何、猫……巧巳」
「いや、随分熱心に見てるなって。キラキュアだよね、それ」
「そうそう」
俺が見ているアニメ“お掃除戦隊☆キラキュア”は、掃除用具をモチーフにした女の子たちが、世界の汚れを落とすために日夜紛争している話だ。
そのキラキュアの二次創作であろう表紙には、ピンク髪の子が、反乱を起こした掃除機に吸われている絵が書いてある。人外ってそういうことかよ。
「君が好きなのは、確か黄色の子だっけ」
「そうそう、モップリンな……ってなんで知ってんの」
先に言っておくが、俺は猫汰どころか、学校でキラキュアの話なんてしたことない。俺がキラキュアを見ていることも、好きなことも、ましてや推しがモップリンであることも知らないはずだ。
「僕は君のことならなんでも知っているよ。推しがモップリンなのも、その相手の子が白髪のホウキナコなことも」
「やめて、暴露しないで!」
「ほら、これなんか君が好きそうだけど」
猫汰が手にしたのは、モップリンとホウキナコが抱き合う、なんとも百合百合しい表紙の薄い本だ。なぜか二人してスクイジーの柄を舐めている。汚いからやめなさい。
「まずさ。まずね、俺の趣味嗜好を決めないでくれますかね?」
「嫌いかい?」
「大好物です、ありがとうございます」
にしても。
BLゲーのくせに百合とは。一体何を目指してんだ、この運営は。いや、これはメインに関係ないからアリなのか?
「すみません、これください」
「ありがとうございます」
考えてもしょうがないし、とりあえず俺は代金を支払って本を受け取る。人外って、もうちょっと違うもん想像したんだが、確かに人外だし嘘は言ってない。
後で楽しむとしよう。あかん、顔がニヤける。
「ねぇ御竿くん」
「ん?」
「結構楽しんだと思うし、そろそろ出ようかと思うんだけど」
「っと、そうだな。会長は? 来てない?」
「大丈夫。ここに来る途中のブースで止まっているよ」
会長が好きそうなもんあったかな。いや、考えたくない。俺は頭を横に振ってから「ならいい」と歩き出す。
「にしても、猫汰も好きだったのか? キラキュア」
「ん? まぁ、好きというか、あの格好、いいなと思ってね」
「だろ!」
まるで同志が出来たみたいで嬉しい。しかし、
「御竿くんに似合うと思うよ」
「は?」
何。似合う? 何が?
つい足が止まる。行き交う人に邪魔にならないか不安になったが、そこは主人公補正なのか、それとも進行上の都合なのか。誰も俺たちにぶつかることはない。
「モップリンの服。御竿くんなら可愛く着こなせると思うんだ。僕はホウキナコを着るから」
「着こなしたくないし、それを着て何すんの。ハロウィンにはまだ早いからな?」
「僕はいつでもいいよ。慌てなくて大丈夫」
「だから着ねぇって」
着る着ないの押し問答を続けながら、会場の出口を目指す。しかし俺は忘れていた。会長よりもある意味厄介な、ヤバいあいつもまたこの俺を探していたことに。
未知への遭遇、そして邂逅、そこから流れてくる快感。俺は今、この“人外エリア”にて、新たな自分の性癖と向き合っていた。
「御竿くん」
「うーん」
「御竿くん」
「うん」
「はぁ……。御竿くん」
「おわっ」
耳に息を吹きかけられて、俺は自分でも驚くほどの跳躍力を発揮し飛び上がった。それを見た猫汰が顔を背け、肩を微かに揺らす。どうやら笑っているらしい。
「な、何、猫……巧巳」
「いや、随分熱心に見てるなって。キラキュアだよね、それ」
「そうそう」
俺が見ているアニメ“お掃除戦隊☆キラキュア”は、掃除用具をモチーフにした女の子たちが、世界の汚れを落とすために日夜紛争している話だ。
そのキラキュアの二次創作であろう表紙には、ピンク髪の子が、反乱を起こした掃除機に吸われている絵が書いてある。人外ってそういうことかよ。
「君が好きなのは、確か黄色の子だっけ」
「そうそう、モップリンな……ってなんで知ってんの」
先に言っておくが、俺は猫汰どころか、学校でキラキュアの話なんてしたことない。俺がキラキュアを見ていることも、好きなことも、ましてや推しがモップリンであることも知らないはずだ。
「僕は君のことならなんでも知っているよ。推しがモップリンなのも、その相手の子が白髪のホウキナコなことも」
「やめて、暴露しないで!」
「ほら、これなんか君が好きそうだけど」
猫汰が手にしたのは、モップリンとホウキナコが抱き合う、なんとも百合百合しい表紙の薄い本だ。なぜか二人してスクイジーの柄を舐めている。汚いからやめなさい。
「まずさ。まずね、俺の趣味嗜好を決めないでくれますかね?」
「嫌いかい?」
「大好物です、ありがとうございます」
にしても。
BLゲーのくせに百合とは。一体何を目指してんだ、この運営は。いや、これはメインに関係ないからアリなのか?
「すみません、これください」
「ありがとうございます」
考えてもしょうがないし、とりあえず俺は代金を支払って本を受け取る。人外って、もうちょっと違うもん想像したんだが、確かに人外だし嘘は言ってない。
後で楽しむとしよう。あかん、顔がニヤける。
「ねぇ御竿くん」
「ん?」
「結構楽しんだと思うし、そろそろ出ようかと思うんだけど」
「っと、そうだな。会長は? 来てない?」
「大丈夫。ここに来る途中のブースで止まっているよ」
会長が好きそうなもんあったかな。いや、考えたくない。俺は頭を横に振ってから「ならいい」と歩き出す。
「にしても、猫汰も好きだったのか? キラキュア」
「ん? まぁ、好きというか、あの格好、いいなと思ってね」
「だろ!」
まるで同志が出来たみたいで嬉しい。しかし、
「御竿くんに似合うと思うよ」
「は?」
何。似合う? 何が?
つい足が止まる。行き交う人に邪魔にならないか不安になったが、そこは主人公補正なのか、それとも進行上の都合なのか。誰も俺たちにぶつかることはない。
「モップリンの服。御竿くんなら可愛く着こなせると思うんだ。僕はホウキナコを着るから」
「着こなしたくないし、それを着て何すんの。ハロウィンにはまだ早いからな?」
「僕はいつでもいいよ。慌てなくて大丈夫」
「だから着ねぇって」
着る着ないの押し問答を続けながら、会場の出口を目指す。しかし俺は忘れていた。会長よりもある意味厄介な、ヤバいあいつもまたこの俺を探していたことに。
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