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七月
夏だ! 海だ! 無人島だ!? その15
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「……いやいやいや! ここ無人島じゃないのかよ!」
テーブルをガン! と叩いて立ち上がる。アニメや漫画よろしく食器が揺れるかと思いきや、そんなことは一切なく、ただただ俺の手が痛いだけだった。
「いって……!」
痛みに手を押さえながら悶える。そりゃそうだ、俺は普通の一般人で、ここは剣と魔法のファンタジーでもないのだから(ただし一部は除く)。
「キミって本当にバカなの? わざわざ痛いことするなんて。あ、やっぱりそっちの気があるんじゃ……」
「センパイと一緒にしないでください」
間髪入れずに否定だけはしっかりとして、俺は手を擦りながらまた席に座った。そんな俺に、屹立家の執事だという爺さんが冷たいタオルを差し出してくる。
それで手を冷やしながら、俺は爺さんを見上げる。何気にひんやりしたタオルがすごく気持ちいい。
「えぇと、屹立家の爺さんだっけ? あんた、いつからここにいるんだ?」
「私のことは執爺とお呼びくださいませ。私めは昨夜こちらへ来たばかりでございます」
なんだ執爺って。まじで愛称どころか名前が爺じゃねぇか。
「昨日……。え、つまり助けが来たってこと?」
「いえ。私は壱ぼっちゃまに頼まれ、皆様のお世話のために来たにすぎません」
「助けを呼べよ! 普通助けを呼ぶだろ!」
意気揚々と洋館を作り上げ、お世話のために爺さんをお取り寄せするぐらいなら、他にやることあるだろ! あの会長に色々言いたいことはあったが、にこやかな爺さんの前でそれを言えるわけもない。
「ふふふ。どうやら皆様、スローライフを堪能してらっしゃるようで。私と致しましては、壱ぼっちゃまと終ぼっちゃまが楽しそうで何よりでございます」
「あぁ、そう……」
もうどうでもよくなり、温くなったタオルをテーブルに戻す。そのタイミングで奥の扉が開き、太刀根を連れて行った会長が戻ってきた。だけど太刀根は一緒じゃない。
「爺。急な呼び出しにも関わらず来てくれたこと、感謝する」
会長はそれだけ告げると、一番奥の少し立派な椅子へと座った。すぐに爺さんが「勿体無いお言葉、嬉しゅうございます」と一礼し、湯気の立つコップをテーブルに置いた。
「さて。空腹は満たされたようだな」
「それは、まぁ、満たされましたけど。でも会長、爺さんを呼ぶくらいなら、なんで助けを呼ばないんすか。会長ならそんなこと朝飯前じゃないんすか?」
不満をぶつけるようにきつめの口調で言えば、会長は「ふむ」と何かを考えるように顎に手をやった。
「何も案ずることはない。護くん、キミのことはこのオレが、責任を持って、一生! 養わせて頂くとしよう!」
「不安しかねぇよ!」
働かなくていい生活も悪くはないが、それが会長となれば話は別だ。その生活を想像して寒気が走った。
「つか、帰って宿題やらねぇといけないし。助けを早く呼んでもろて……」
「ふむ。さっきから疑問に思っていたのだが、なぜ助けを呼ぶ必要があるのだ。ここは我が屹立家が保有するリゾート船だが?」
「いやだから助けを……ん? リゾート船?」
首を傾げた俺の隣で、猫汰が「気づかなくてよかったのに」と心底残念そうにため息を零した。待て、どういうことだ? ここは無人島じゃなかったのか?
「ふむ、混乱しているようだな。爺」
「はい、壱ぼっちゃま」
会長がパンパンと手を鳴らすと、爺さんが懐から何かのスイッチらしきものを取り出した。ポチリと押すと、天井からウイーンと巨大なスクリーンが降りてきた。
そこにはどこかの島、いや流れ的にはこの島であろう全景図が映し出されていたのだ。
テーブルをガン! と叩いて立ち上がる。アニメや漫画よろしく食器が揺れるかと思いきや、そんなことは一切なく、ただただ俺の手が痛いだけだった。
「いって……!」
痛みに手を押さえながら悶える。そりゃそうだ、俺は普通の一般人で、ここは剣と魔法のファンタジーでもないのだから(ただし一部は除く)。
「キミって本当にバカなの? わざわざ痛いことするなんて。あ、やっぱりそっちの気があるんじゃ……」
「センパイと一緒にしないでください」
間髪入れずに否定だけはしっかりとして、俺は手を擦りながらまた席に座った。そんな俺に、屹立家の執事だという爺さんが冷たいタオルを差し出してくる。
それで手を冷やしながら、俺は爺さんを見上げる。何気にひんやりしたタオルがすごく気持ちいい。
「えぇと、屹立家の爺さんだっけ? あんた、いつからここにいるんだ?」
「私のことは執爺とお呼びくださいませ。私めは昨夜こちらへ来たばかりでございます」
なんだ執爺って。まじで愛称どころか名前が爺じゃねぇか。
「昨日……。え、つまり助けが来たってこと?」
「いえ。私は壱ぼっちゃまに頼まれ、皆様のお世話のために来たにすぎません」
「助けを呼べよ! 普通助けを呼ぶだろ!」
意気揚々と洋館を作り上げ、お世話のために爺さんをお取り寄せするぐらいなら、他にやることあるだろ! あの会長に色々言いたいことはあったが、にこやかな爺さんの前でそれを言えるわけもない。
「ふふふ。どうやら皆様、スローライフを堪能してらっしゃるようで。私と致しましては、壱ぼっちゃまと終ぼっちゃまが楽しそうで何よりでございます」
「あぁ、そう……」
もうどうでもよくなり、温くなったタオルをテーブルに戻す。そのタイミングで奥の扉が開き、太刀根を連れて行った会長が戻ってきた。だけど太刀根は一緒じゃない。
「爺。急な呼び出しにも関わらず来てくれたこと、感謝する」
会長はそれだけ告げると、一番奥の少し立派な椅子へと座った。すぐに爺さんが「勿体無いお言葉、嬉しゅうございます」と一礼し、湯気の立つコップをテーブルに置いた。
「さて。空腹は満たされたようだな」
「それは、まぁ、満たされましたけど。でも会長、爺さんを呼ぶくらいなら、なんで助けを呼ばないんすか。会長ならそんなこと朝飯前じゃないんすか?」
不満をぶつけるようにきつめの口調で言えば、会長は「ふむ」と何かを考えるように顎に手をやった。
「何も案ずることはない。護くん、キミのことはこのオレが、責任を持って、一生! 養わせて頂くとしよう!」
「不安しかねぇよ!」
働かなくていい生活も悪くはないが、それが会長となれば話は別だ。その生活を想像して寒気が走った。
「つか、帰って宿題やらねぇといけないし。助けを早く呼んでもろて……」
「ふむ。さっきから疑問に思っていたのだが、なぜ助けを呼ぶ必要があるのだ。ここは我が屹立家が保有するリゾート船だが?」
「いやだから助けを……ん? リゾート船?」
首を傾げた俺の隣で、猫汰が「気づかなくてよかったのに」と心底残念そうにため息を零した。待て、どういうことだ? ここは無人島じゃなかったのか?
「ふむ、混乱しているようだな。爺」
「はい、壱ぼっちゃま」
会長がパンパンと手を鳴らすと、爺さんが懐から何かのスイッチらしきものを取り出した。ポチリと押すと、天井からウイーンと巨大なスクリーンが降りてきた。
そこにはどこかの島、いや流れ的にはこの島であろう全景図が映し出されていたのだ。
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