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七月

夏だ! 海だ! 無人島だ!? その6

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 まだ息の整っていない太刀根はほっといて、俺は切りたてほやほやのつるを腕に抱えた。見た目に反して結構な重さだ。なるほど、これなら人くらい吊るせるだろう。

「はっ、はぁっ……。ま、護、もしかして一人か?」

 なんとか立ち上がった太刀根が、切り取った蔓と俺を交互に見やる。

「いや。鏡華ちゃんと、あー、人外弟がいる」

 一瞬センパイのことを忘れていた。まぁ、いてもいなくて変わらんか。

「なら、その蔓は鏡華ちゃんのお使いか?」
「ん? あぁ、そうだけど。何に使うのかまでは知らん。太刀根は? 太刀根こそ一人なのか?」

 俺は太刀根に目をやりもせず、黙々と蔓を片腕に引っ掛けていく。あ、やべ。調子に乗って切りすぎたかも。俺一人じゃ運べねぇわ。

「俺は巧巳と一緒だぜ。森で食いもん探すかってなったから、今は別行動中なんだ」
「そうか。よし太刀根、これ持ってくれ。鏡華ちゃんと合流しよう」

 まだ太刀根は何か言いたそうだったが、俺は構わず蔓を半分持たせる。その重みで一瞬太刀根がグラつくが、足腰を鍛えているだけあって、すぐに持ち堪えた。
 そうして来た道を戻ろうと振り返ったところで、

「やぁ」
「おわっ! 猫汰!?」

 そう、猫汰が木の枝にうつ伏せに寝るような格好で、俺たちに手をひらひらと振ってきたのだ。まさに猫である。

「巧巳! 良かった、無事だったんだな!」
「まぁ、ね……」

 なんだろう。どことなく、猫汰の視線が刺々しい、いや冷たいような……。

「ね、猫汰はそこで何してんだ?」

 この空気に耐えられず、俺はわざとらしく会話に割り込む。猫汰は身体を起こし、猫のように背伸びをしてから、身軽に地面へと降りてきた。

「僕は食料を捕まえようと思って、罠を仕掛けていたんだ。まぁ、
「あ、もしかしてこれ巧巳の罠だったのか? わりぃ、台無しにしちまった」
「いやいいよ」

 猫汰の言っている意味。それは果たして、本当に獲物を探していた奴の発言なのか。俺は深く考えまいと、自分の持っていた蔓を抱え直した。

「重いでしょ? 持つよ」
「え? あ、いや、これくらいなら大丈」
「持つよ」

 有無も言わさないその気迫に、俺は「おう……」と猫汰に蔓を半分渡す。最近気づいたんだけど、猫汰ってもしかして怖い奴?
 改めて道を歩き出したはいいものの、なぜかやたらと太刀根が罠にかかる。落とし穴、網、地面から竹槍なんてのもあった。なぁ、本当にこれただの罠?

「おわ! 今度はなんだ? なんか液体がかかってきたぞ」

 太刀根が気持ち悪そうに頭を振った。液体は透明なようで、ただの水かと思ったのも束の間。

「た、太刀、太刀根!」
「どうした、護。そんなに慌てて」
「み、水着! 水着溶けてるぞ!」

 これってなんていうエロゲ? よくあるご都合主義の服だけが器用に溶ける、謎の液体だったというわけだ。
 だがしかし待ってほしい。森の中で、会いたくも見たくもない立派な象さんを目にした俺の気持ちがわかるか? せめて象さんは動物園かサバンナにしてくれ。

「チッ、失敗か。服だけ溶けるなんて」
「……」

 つまりそれは、太刀根ごと溶かすつもりだったと。俺は猫汰の中にある、真っ黒い何かが垣間見えた気がして、背筋が凍っていくのを感じた。
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