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七月

夏だ! 海だ! 無人島だ!? その4

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「――、――!」

 なんだ? 誰かの声が聞こえる。

「お――、さお。おい、みさ――」

 俺を呼んでる、のか?
 そうだ、この声は俺を呼んでるんだ。

「御竿!」
「……っ!?」

 はっきりとそれを認識した瞬間、俺は胃から何かが込み上げてきて、それを思いきり吐き出した。大量の水と一緒に、なぜかワカメが出てきたことに恐怖を感じたが、そんなことより今の状態を確認しようと頭をフル回転させる。

「御竿、目ぇ覚めたようだな」
「鏡華ちゃん……? ゲホッ」

 また咳込んだ俺に「ゆっくり息をしろ」と鏡華ちゃんが話しかけてきた。心配そうに覗き込む鏡華ちゃんを見て、改めて自分が寝かされていたことに気づく。

「鏡華ちゃん、どうして……?」

 支えられながら身体を起こして、そこで初めて俺は気づいた。砂浜に打ち上げられるようにして、俺は、どこかの島に流れ着いたのだと。
 だけどおかしい。鏡華ちゃんと俺と、センパイしか見当たらない。センパイは未だ転がったままだし、つか、あの波に攫われたのに、なんで天狗は取れてないんだ。

「咄嗟にお前と終だけは掴めたんだ。カマ野郎が観手を庇うのも見えた。まぁ、壱なら一人でも大丈夫だろ」
「それは俺も、はい、そう思います」

 会長ならマグマが湧き出る火山でも、それこそ、生物が生きられないと言われている酸の雨が降ろうとも、高笑いして立っていそうだから怖い。

「もう起きれるな? 終の状態を見てくっから、ちと大人しく待ってな」

 鏡華ちゃんはそう言って、寝ているセンパイの元へ……ん? 寝てるのか、あれ。微妙に口元が緩んでる気がする。

「鏡華ちゃん鏡華ちゃん。それ、起きてない?」
「ん?」

 俺が指摘した途端、緩んでいた口元がびしりと引き締まる。いや、やっぱ起きてんだろ!

「フリだよ、フリ。鏡華ちゃんに心配してほしいだけだって」
「それなら慣れてるから問題ねぇよ」
「慣れてる?」

 どういうことかと見ていると、それまで黙っていたセンパイの目がカッと開かれた。

「ちょ、ちょっと鏡華。待ってやっぱりボク起きてる……!」
「さぁて。いつまでも起きてこない奴にはお仕置きだなぁ」

 言うが早く、鏡華ちゃんはセンパイの両足を掴んで両脇に抱えると、自身の右足をセンパイの股間部分へ押し当てた。そしてその足を素早く振動させたのだ。

「ぁ、あああ、鏡華、きょうかぁ。ダメ、出ちゃうううう」
「早く出しちまえ。ラクになれるぞ」
「い、嫌、だ。恥ずかしい……!」
「今さらだろうが」

 何が今さらなんだ。そして俺はナニを見せられてる? レアイベントってナニソレオイシイノ状態だ。

「鏡華ちゃん! 流石に俺の見てる前ではやめてくr」
「あああああああ、出ちゃう! 出ちゃうううううんぼろば$%!*@ゞ¥」
「ぎゃあああ! 吐いたあああああああ!?」

 センパイの口から、まるで噴水のようにして海水が噴き出す。さながら噴海水とでも言うべきか?
 むしろ驚いた、いや引いたのはここからだ。海水に混ざってアジ、サンマ、更にはタイ、最終的にはイカも噴き出したものだから、やはり兄弟揃って人外なのだと改めて思い知らされた。

「よし、大漁だな」
「どんな捕まえ方だよ!」

 ビチビチと跳ねるのを見るに、まだまだ新鮮なようだ。鏡華ちゃんはその魚たちを嬉々として鷲掴みすると、

「じゃ、火を起こして飯にすっか」
「こんなもん、誰が食うか!」

と抗議の声を上げたものの、盛大に鳴った腹の前では、渋々ながらも食う以外の選択肢はなかった。

「出したらすっきりしたぁ……」
「お前は少し黙ってろ、この人外弟」
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