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四月
ドキッ☆ 男だらけの健康診断。ラッキースケベは絶対回避! その7
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「いらっしゃいませ、こんばんは!」
駅前のエスドエムドに入った俺は、泣きそうな顔で財布の中身を見ている観手に「おい」と早くついてこいとばかりに声をかけた。
「うぅ、今給料日前で金欠なのに~……。御竿さんの鬼! 悪魔! 魔王!」
「それなら女神サマを悪く扱っても文句はねぇだろ」
「いつか祟ってやりますからね!」
「女神で祟るってなんだそりゃ」
カウンター前のメニューを見、それから笑顔で待っている店員の前へ歩いていく。
「夜エスドのてりやきセットで、ポテトとドリンク、両方エムドにしてください。ドリンクはサイダーで。それから」
「まだ頼むんですか!?」
「エスドルーリーのレオレをください」
店員は「はい、はい」と頷き、最後に「他にご注文はよろしいでしょうか?」と可愛らしく小首を傾げた。観手が「あ、レオレもうひとつで……」と言うと、店員は「はい」と繰り返した後、
「お会計、一三三〇円でございます」
とにっこりと笑った。観手がお会計を済ませる間に、あれよあれよと商品が出来上がっていく。俺は商品の乗ったトレイを持つと、空いている窓際の席へとっとと座った。
「で。聞きたいことが山ほどあるんだが」
「こっちは言いたいことが山ほどあります」
「まずはシード権ってなんだ」
「話を聞いてください」
俺はポテトを二、三本つまみ、それを観手のエスドルーリーへ突っ込んでやった。
「ちょっと、何するんですか!」
「いいからいいから。食ってみ?」
相変わらずムスッとしたままだが、観手はポテトを食べないとエスドルーリーを食べられないと判断し、渋々ながらもポテトを口へ運んだ。
「ん!? んんん? これはなかなか、美味しい、かも?」
「そうか、それはよかった。俺も食ってみっか」
「私は毒見ですか!?」
騒ぐ観手を無視して、俺は再度「で、シード権ってなんだ」と繰り返した。ガサガサとてりやきの包みを開け、それを頬張りながら観手の話を聞こうと決め込む。
「もう、仕方ないですね……。シード権っていうのは、秋に学園祭をするんですが、その出し物、出店する場所、経費において、優先される権利のことです」
「そんなんもらってどうすんだ」
「このBL学園は、超のつくほど名の知れた名門校でしてね。卒業後は芸能界や政界、研究者などなど、いいとこにいける学園なのです」
口についたソースを拭ってから、俺はドリンクを一口飲んだ。
「あー、つまりあれか。学園祭に大物が来るってわけか」
「そういうことです。なので、このシード権獲得は、それなりに重要なイベントなのですよ~!」
「それはご苦労さん」
再びてりやきを食べ、空になった包み紙をくしゃりとしてから、俺は残ったポテトをトレイへ全部出した。つまり、内申点どうというのも、それに関係あることだろう。なら俺には関係ない、か?
「あ、それはそれとして。太刀根と“御竿護”の間になんかあったのか?」
「んー」
観手はポテトをエスドルーリーに突っ込んでから(意外と気に入ったらしい)、
「それは私が話していい内容ではないですね~」
とポテトを食べて頬を緩ませた。俺もポテトを何本か口に入れ飲み込んでから、
「いや話せよ」
「話したとして。御竿さんはそれで納得してくれますか? しないと思うんです。だから、ご自身で答えまで導いてください」
「はぁ? お前さ」
と外から聞こえだした雨音に、俺は「まじかよ」とうんざりした声を漏らした。
「ありがとうございました!」
店員の元気な声に送られて外へ出れば、中にいた時よりも、幾分か激しくなっている気がした。生憎、傘など持ってきてはいないし、ブレザーを頭から被って走ればなんとかなるだろうか。隣に並ぶ観手も傘がないのか、ため息を吐きながら「うそ~……」と空を見上げている。
「御竿さんのせいですよ! 寄り道しなきゃ雨なんて降らなかったのに!」
「寄り道しようがしまいが雨は降ったと思うぞ? ま、俺のせいで帰りは遅くなったけどな」
「やっぱり御竿さんのせいです!」
どうしても俺のせいにしたいのか、こいつは。女神の割に腐った根性である。まぁ、これぐらいなら走って帰ればなんとかなるか?
俺はブレザーを脱ぐと、それをなんの前触れもなく観手の頭に被せてやった。
「な、何するんですか!」
「それ、明日返せよ。別にクリーニングとかはいいから。じゃあな」
「え? ちょ、ちょっと、御竿さん!?」
まだなんか言ってるが無視だ、無視。構ってたらこっちが更に濡れちまうからな。ちなみに言い忘れていたが、明日は土曜日だ。ちゃんと返しに来いよ、駄女神。
駅前のエスドエムドに入った俺は、泣きそうな顔で財布の中身を見ている観手に「おい」と早くついてこいとばかりに声をかけた。
「うぅ、今給料日前で金欠なのに~……。御竿さんの鬼! 悪魔! 魔王!」
「それなら女神サマを悪く扱っても文句はねぇだろ」
「いつか祟ってやりますからね!」
「女神で祟るってなんだそりゃ」
カウンター前のメニューを見、それから笑顔で待っている店員の前へ歩いていく。
「夜エスドのてりやきセットで、ポテトとドリンク、両方エムドにしてください。ドリンクはサイダーで。それから」
「まだ頼むんですか!?」
「エスドルーリーのレオレをください」
店員は「はい、はい」と頷き、最後に「他にご注文はよろしいでしょうか?」と可愛らしく小首を傾げた。観手が「あ、レオレもうひとつで……」と言うと、店員は「はい」と繰り返した後、
「お会計、一三三〇円でございます」
とにっこりと笑った。観手がお会計を済ませる間に、あれよあれよと商品が出来上がっていく。俺は商品の乗ったトレイを持つと、空いている窓際の席へとっとと座った。
「で。聞きたいことが山ほどあるんだが」
「こっちは言いたいことが山ほどあります」
「まずはシード権ってなんだ」
「話を聞いてください」
俺はポテトを二、三本つまみ、それを観手のエスドルーリーへ突っ込んでやった。
「ちょっと、何するんですか!」
「いいからいいから。食ってみ?」
相変わらずムスッとしたままだが、観手はポテトを食べないとエスドルーリーを食べられないと判断し、渋々ながらもポテトを口へ運んだ。
「ん!? んんん? これはなかなか、美味しい、かも?」
「そうか、それはよかった。俺も食ってみっか」
「私は毒見ですか!?」
騒ぐ観手を無視して、俺は再度「で、シード権ってなんだ」と繰り返した。ガサガサとてりやきの包みを開け、それを頬張りながら観手の話を聞こうと決め込む。
「もう、仕方ないですね……。シード権っていうのは、秋に学園祭をするんですが、その出し物、出店する場所、経費において、優先される権利のことです」
「そんなんもらってどうすんだ」
「このBL学園は、超のつくほど名の知れた名門校でしてね。卒業後は芸能界や政界、研究者などなど、いいとこにいける学園なのです」
口についたソースを拭ってから、俺はドリンクを一口飲んだ。
「あー、つまりあれか。学園祭に大物が来るってわけか」
「そういうことです。なので、このシード権獲得は、それなりに重要なイベントなのですよ~!」
「それはご苦労さん」
再びてりやきを食べ、空になった包み紙をくしゃりとしてから、俺は残ったポテトをトレイへ全部出した。つまり、内申点どうというのも、それに関係あることだろう。なら俺には関係ない、か?
「あ、それはそれとして。太刀根と“御竿護”の間になんかあったのか?」
「んー」
観手はポテトをエスドルーリーに突っ込んでから(意外と気に入ったらしい)、
「それは私が話していい内容ではないですね~」
とポテトを食べて頬を緩ませた。俺もポテトを何本か口に入れ飲み込んでから、
「いや話せよ」
「話したとして。御竿さんはそれで納得してくれますか? しないと思うんです。だから、ご自身で答えまで導いてください」
「はぁ? お前さ」
と外から聞こえだした雨音に、俺は「まじかよ」とうんざりした声を漏らした。
「ありがとうございました!」
店員の元気な声に送られて外へ出れば、中にいた時よりも、幾分か激しくなっている気がした。生憎、傘など持ってきてはいないし、ブレザーを頭から被って走ればなんとかなるだろうか。隣に並ぶ観手も傘がないのか、ため息を吐きながら「うそ~……」と空を見上げている。
「御竿さんのせいですよ! 寄り道しなきゃ雨なんて降らなかったのに!」
「寄り道しようがしまいが雨は降ったと思うぞ? ま、俺のせいで帰りは遅くなったけどな」
「やっぱり御竿さんのせいです!」
どうしても俺のせいにしたいのか、こいつは。女神の割に腐った根性である。まぁ、これぐらいなら走って帰ればなんとかなるか?
俺はブレザーを脱ぐと、それをなんの前触れもなく観手の頭に被せてやった。
「な、何するんですか!」
「それ、明日返せよ。別にクリーニングとかはいいから。じゃあな」
「え? ちょ、ちょっと、御竿さん!?」
まだなんか言ってるが無視だ、無視。構ってたらこっちが更に濡れちまうからな。ちなみに言い忘れていたが、明日は土曜日だ。ちゃんと返しに来いよ、駄女神。
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