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44話
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ズボンの中で既に何度か達していたソレは、むわりとした熱気を放ちながら、颯介の舌につつかれていた。裏スジを柔らかな舌が舐め上げるたび、腰がひくつき「ぅっ」と小さく声が漏れる。
「そうす……っ、ひ、ぃ」
与えられる快感に負け、肩に置く手に力を込める。そのまま堪えきれずに出してしまい、颯介の顔に白濁がどろりとかかる。
「あ……、ごめっ、ごめんなさ」
「いいですから。全部出しちゃいましょう」
玉袋を舌先が舐め、竿部分を緩く上下に動かされる。颯介の手の力が程よく、また射精感がくるのを感じ「や、そうすけっ」とやめるよう髪を引っ掴んだ。けれど颯介はやめる気配もなく、むしろ今度はカリ部分までを口に含むと、たっぷりと唾液を絡ませた舌先で先端を優しく舐めてきた。
「ひ、ぐ……ッ、でちゃう、からっ」
「ん」
相槌を打ちつも、颯介はやめる気はないのか、僕の意志なんて関係なく扱く手に少し力を込めた。舌先の暖かさと、颯介の手の動き。それから僕がかけてしまった白濁が妙な背徳感を生んで、僕は颯介の口の中へと出してしまった。
「ぁ……、や、やだ、はいて……」
僕の懇願も虚しく、颯介の喉がこくりと動く。
「紅羽さんの、甘……」
「あ、あまいわけ、ない」
精子の味は生活習慣で変わるらしいけれど、僕の生活環境で甘いわけがない。
さっきよりだいぶん思考がクリアになってきたからか、そんな余計なことを考えてしまう。立ち上がった颯介が「確かこっちに……」と歩いていき、隅のボックスから白いタオルを出してきた。
「紅羽さん。拭くんで、背中、後ろに倒せます?」
「ん……」
言われたままに背中をベッドにつけて、颯介に恥ずかしいところを見せる姿勢を取る。恥ずかしさはもちろんあるけれど、まだ完全に頭が回ってなかったから出来た格好だ。
取り出したのはホットタオルだったようで、濡れて冷えた身体には心地よく、胸の中に安心感が広がっていく。颯介は丁寧に、擦らずに、押さえる感じで拭いてくれるから、尚のこと変に身体が反応してしまう。
「ね、颯介……」
「駄目です」
「ちょっと、ちょっとだけだから」
「謹んでお断りします。はい、終わりました」
拭き終わった颯介が、タオルを持って立ち上がる。その際、颯介にも熱が籠もっているのが見えて、僕は「颯介……」と指先で服の上からそれをなぞる。
「……ッ」
颯介の口から吐息が零れて、涼しそうにしていた顔が歪んだ。押せばいけそうな気がして、僕は颯介の熱をなぞる指を下から上へと移動させた。
「少しだけ……」
「駄目ですって」
「先っぽだけ、少しでいいから」
「それは挿入る側の台詞なんですよ」
颯介も薬を飲んでいるからか、なかなか落ちてこない。もうこうなったら形振り構ってなんかいられない。
僕は熱をなぞっていた指を離してから、なんの前触れもなく、颯介の両腕を引っ張った。押し倒す形で、颯介が僕をベッドに縫いつける。
「紅羽さん」
「な……? 颯介ので、気持ちよくして……?」
「……薬、効いてますよね? 駄目です」
確かに意識ははっきりしてきた。今ならヒートのせいにして、何を言っても誤魔化せると思ったのに。動かせるようになった足を颯介の腰に巻きつけて、僕に当たるように引き寄せた。
「颯介、挿入ろ」
「だ、め、で、す」
「そーすけー」
甘え声を出してみたが、颯介の意志は固い。強めの薬を飲んでるって言ってたし、その効果もあるのかもしれない。
「じゃ、キス、しろ」
「我慢出来なくなるでしょうが」
「出来る」
颯介の首に腕を回して、む、と口を尖らせてみる。
「しろ」
「……紅羽さん」
少し低めの声でそう言われてしまえば、僕も大人しく引き下がるしかない。わかる、わかってるよ、聞き分けがないことくらい。こんな場所で言う台詞じゃないことも、大人なのに節度がないことだって。
「ごめん」
回していた腕を解いて、絡めていた足の力を抜いて、颯介から体を離す。嫌われただろうか。愛想を尽かされただろうか。意識がはっきりしてきた段階で、素直に離れればよかった。
浮かんできた涙を見られたくなくて、僕を見おろす颯介の視線から逃げるように顔を横へと向けた。
「紅羽さん」
名前を呼ばれて、また顔を向ける。颯介の顔が間近に迫り、そのまま唇を重ねられた。
「ん……っ」
同時に腰を押しつけられて、反射で少しだけ逃げてしまう。けれどそれを追いかけるように、颯介の手が腰を引っ掴んで無理やり押し当てられた。さっきまでしないって言ってたのに、とか、結局我慢出来ないのはそっちじゃないか、とか言いたいことだけが膨らんでいく。
「は、ぁ、そうすけっ」
口を離した隙に、颯介の名前を呼んで、もっとというように両手を伸ばす。でも颯介はそれを握り返してはくれず、むしろ「ほら」と意地の悪い笑顔を浮かべた。
「こんな蕩け顔させて。我慢、出来ないでしょう?」
「……っ」
今度こそ離れた颯介が、脱がせた僕の服を抱える。
「これ、洗濯乾燥機にかけてる間、シャワー浴びてきます。誰かさんのせいで生臭くなったんで」
「そ、れは、僕の、せいじゃ」
僕も体を起こしてから、文句を言おうと口を開きかける。けれど、颯介が机に置いていたコートを頭から被せてきたから結局は何も言えなくなってしまう。
「それ、膝にでもかけて待っててください。先生には俺のほうから声かけとくんで」
有無を言わさない雰囲気で、颯介は処置室の鍵を開けて出ていってしまった。残された僕は正直、この涎まみれになったマフラーも、一緒に洗濯してほしかったのだけど。
「そうす……っ、ひ、ぃ」
与えられる快感に負け、肩に置く手に力を込める。そのまま堪えきれずに出してしまい、颯介の顔に白濁がどろりとかかる。
「あ……、ごめっ、ごめんなさ」
「いいですから。全部出しちゃいましょう」
玉袋を舌先が舐め、竿部分を緩く上下に動かされる。颯介の手の力が程よく、また射精感がくるのを感じ「や、そうすけっ」とやめるよう髪を引っ掴んだ。けれど颯介はやめる気配もなく、むしろ今度はカリ部分までを口に含むと、たっぷりと唾液を絡ませた舌先で先端を優しく舐めてきた。
「ひ、ぐ……ッ、でちゃう、からっ」
「ん」
相槌を打ちつも、颯介はやめる気はないのか、僕の意志なんて関係なく扱く手に少し力を込めた。舌先の暖かさと、颯介の手の動き。それから僕がかけてしまった白濁が妙な背徳感を生んで、僕は颯介の口の中へと出してしまった。
「ぁ……、や、やだ、はいて……」
僕の懇願も虚しく、颯介の喉がこくりと動く。
「紅羽さんの、甘……」
「あ、あまいわけ、ない」
精子の味は生活習慣で変わるらしいけれど、僕の生活環境で甘いわけがない。
さっきよりだいぶん思考がクリアになってきたからか、そんな余計なことを考えてしまう。立ち上がった颯介が「確かこっちに……」と歩いていき、隅のボックスから白いタオルを出してきた。
「紅羽さん。拭くんで、背中、後ろに倒せます?」
「ん……」
言われたままに背中をベッドにつけて、颯介に恥ずかしいところを見せる姿勢を取る。恥ずかしさはもちろんあるけれど、まだ完全に頭が回ってなかったから出来た格好だ。
取り出したのはホットタオルだったようで、濡れて冷えた身体には心地よく、胸の中に安心感が広がっていく。颯介は丁寧に、擦らずに、押さえる感じで拭いてくれるから、尚のこと変に身体が反応してしまう。
「ね、颯介……」
「駄目です」
「ちょっと、ちょっとだけだから」
「謹んでお断りします。はい、終わりました」
拭き終わった颯介が、タオルを持って立ち上がる。その際、颯介にも熱が籠もっているのが見えて、僕は「颯介……」と指先で服の上からそれをなぞる。
「……ッ」
颯介の口から吐息が零れて、涼しそうにしていた顔が歪んだ。押せばいけそうな気がして、僕は颯介の熱をなぞる指を下から上へと移動させた。
「少しだけ……」
「駄目ですって」
「先っぽだけ、少しでいいから」
「それは挿入る側の台詞なんですよ」
颯介も薬を飲んでいるからか、なかなか落ちてこない。もうこうなったら形振り構ってなんかいられない。
僕は熱をなぞっていた指を離してから、なんの前触れもなく、颯介の両腕を引っ張った。押し倒す形で、颯介が僕をベッドに縫いつける。
「紅羽さん」
「な……? 颯介ので、気持ちよくして……?」
「……薬、効いてますよね? 駄目です」
確かに意識ははっきりしてきた。今ならヒートのせいにして、何を言っても誤魔化せると思ったのに。動かせるようになった足を颯介の腰に巻きつけて、僕に当たるように引き寄せた。
「颯介、挿入ろ」
「だ、め、で、す」
「そーすけー」
甘え声を出してみたが、颯介の意志は固い。強めの薬を飲んでるって言ってたし、その効果もあるのかもしれない。
「じゃ、キス、しろ」
「我慢出来なくなるでしょうが」
「出来る」
颯介の首に腕を回して、む、と口を尖らせてみる。
「しろ」
「……紅羽さん」
少し低めの声でそう言われてしまえば、僕も大人しく引き下がるしかない。わかる、わかってるよ、聞き分けがないことくらい。こんな場所で言う台詞じゃないことも、大人なのに節度がないことだって。
「ごめん」
回していた腕を解いて、絡めていた足の力を抜いて、颯介から体を離す。嫌われただろうか。愛想を尽かされただろうか。意識がはっきりしてきた段階で、素直に離れればよかった。
浮かんできた涙を見られたくなくて、僕を見おろす颯介の視線から逃げるように顔を横へと向けた。
「紅羽さん」
名前を呼ばれて、また顔を向ける。颯介の顔が間近に迫り、そのまま唇を重ねられた。
「ん……っ」
同時に腰を押しつけられて、反射で少しだけ逃げてしまう。けれどそれを追いかけるように、颯介の手が腰を引っ掴んで無理やり押し当てられた。さっきまでしないって言ってたのに、とか、結局我慢出来ないのはそっちじゃないか、とか言いたいことだけが膨らんでいく。
「は、ぁ、そうすけっ」
口を離した隙に、颯介の名前を呼んで、もっとというように両手を伸ばす。でも颯介はそれを握り返してはくれず、むしろ「ほら」と意地の悪い笑顔を浮かべた。
「こんな蕩け顔させて。我慢、出来ないでしょう?」
「……っ」
今度こそ離れた颯介が、脱がせた僕の服を抱える。
「これ、洗濯乾燥機にかけてる間、シャワー浴びてきます。誰かさんのせいで生臭くなったんで」
「そ、れは、僕の、せいじゃ」
僕も体を起こしてから、文句を言おうと口を開きかける。けれど、颯介が机に置いていたコートを頭から被せてきたから結局は何も言えなくなってしまう。
「それ、膝にでもかけて待っててください。先生には俺のほうから声かけとくんで」
有無を言わさない雰囲気で、颯介は処置室の鍵を開けて出ていってしまった。残された僕は正直、この涎まみれになったマフラーも、一緒に洗濯してほしかったのだけど。
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