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一ノ瀬紅羽の場合
31話
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明かりは消さなかった。
恥ずかしいと言った僕を、颯介が「今さらですか」と笑い飛ばして、テコでも消してくれなかったからだ。
秋に入ったからか、室内でも少し肌寒くて、颯介は上を脱がそうとはしてこなかった。代わりに着せられた颯介のシャツは少し大きくて、それでいて颯介の香りが強くて、むせ返るくらいの甘さに、何も考えられなくなっていく。
「紅羽さん、もうびしょ濡れじゃないですか」
「ん……っ」
寝転がる僕から、颯介がボクサーパンツを取り払う。既に勃ち上がっていた自身から透明の糸が伸び、それを颯介が指先に絡めて舐め取った。
「そ、そんなの舐めるなっ」
「じゃあ、こっちにしましょうか?」
両足を開かれて、颯介に自身を握り込まれる。親指で先端をぬるぬると緩く擦られ、口からは「あうっ」とあられもない声が出た。
「やば……、紅羽さんの、美味そう……」
「あっ、やぁっ……、でる、からっ」
先端をくちゅくちゅと音を立てて刺激され、颯介の手が僕を快楽へと攻め立てる。でもこんなに早くイかされるのが癪で、僕は頭の下に敷いた枕を両手で掴んで、その快楽に必死に耐える。
「出してください。俺の手に」
「ぅぅんっ、や、は……っ」
耐える僕の強がりも呆気ないまま、颯介の手に真っ白な欲を出し切った。手のひらからドロドロと手首を伝うそれに恥ずかしさが込み上げる。
「って、何、舐めて……!」
颯介は手のひら、さらには手首を伝う白濁に舌を這わせると、余すことなくそれを舐め取っていく。
「何って、紅羽さんの精子ですけど」
「普通にそんなもん舐めるな! あまつさえ飲むな!」
「紅羽さんのは全部俺のなんで」
涼しい顔で言ってのけ、颯介が横に用意していたボトルを手に取った。パチンと小気味よく蓋を開けて、精子を舐め取ったばかりの手に液体を垂らしていく。
「すみません、紅羽さん」
蓋を閉める時間も惜しいのか、颯介はボトルを横に放り、ローションのついた指先を僕の後孔へ塗りつける。
「ちょっと今日はもう、余裕ないかも、です……っ」
「う、んっ」
余裕がないと言いながらも、しっかりと慣らしてくれる優しさが嬉しい。
微かな異物感に息を漏らす。まだ解されてないそこは苦しいはずなのに、僕の身体はそれすらも快楽として拾い上げる。足先が意に反してぴくりと動き、颯介の頬を蹴り上げた。
「ご、め……んぁ」
荒い息づかいの中、謝罪しようと口を開いたのに、中のしこりを擦られて甲高い声が上がった。
「ん……。大丈夫です」
颯介が右手で中を擦りながら、僕の右足首を左手で掴む。足首をきつく吸われたかと思えば、そのまま足裏を舐め上げられた。
「ひ、ぁっ、汚いっ」
かかとも緩く噛まれ、土踏まず、親指の付け根まで舌が這い、最後に親指を口に含まれた。爪と皮膚の間を柔らかい感触が伝い、指と指の間も丁寧に舐め取られてしまう。
「やあっ、そうす、けぇっ」
二本に増やされていた指が、入口を柔らかくするようにヌチヌチと緩く出し入れされる。
「紅羽さんの中、すごく吸い付いてきてますよ。俺の挿入たら食い千切られそう」
「そんな、こと、しな……っ」
親指を舐めていた舌が、人差し指、中指と移動する合間にも、颯介は窄みを解す指を増やして、僕のナカを執拗に擦り続ける。しこりを押されるたび、自分でもわかるくらいに颯介の指をきゅうきゅうと締めつけ、とめどない快楽の波に呑まれてしまう。
「そんなに俺の指、好きです? 離そうとしませんよ?」
そう軽く笑い、指先がしこりを軽く叩くような動きに変わる。
「ひ、ぁ……だめっ、いっちゃ、う」
さっきも出したばかりだというのに、身体はびくびくと痙攣し始め、僕は呆気なく腹に向かって精を飛び散らせた。肩を上下させ息を整えていると、後孔に熱が押し当てられた。
「そう、すけ」
お腹の奥の疼きを早くなんとかしてほしくて、枕を握っていた右手を伸ばす。
「は……っ、ゃく」
「紅羽さんっ」
余裕のない颯介が、それでもまだ理性を保っているのか、足首から手を離し、そのまま左手を伸ばして握り返してくれた。
十分に解されたそこは、颯介のモノを簡単に呑み込んで、僕に少しの圧迫感を与えてくる。最初こそ辛くて苦しくて、息さえも上手く出来なかったのに、今では息の仕方もわかるようになった。
「んんぅ……、ああっ」
ナカを慣らすように、入口あたりで颯介が腰を動かす。そのたびにしこりを擦られ、僕の口からは甘い声が上がる。
「紅羽さん、今日やばくないですか? そんなんじゃ、最後まで保ちませんよ?」
浅いところで出し入れしていた颯介が、少しずつ腰を押し進める。僕も息を吐き、力を出来るだけ抜いて、颯介を奥まで受け入れていく。
「ひぁぁ、んぐっ」
僕から嬌声が溢れるたび、颯介の質量が増すのがわかる。余裕がないと言っていたのに。ほんとは今すぐ僕をぐちゃぐちゃにしたいくせに。なのに、颯介は僕に負担をかけないよう、出来るだけ優しく、ゆっくり進めてくれる。
「ふふ……っ」
「紅羽さん?」
つい笑みが溢れて、僕は握っていた手ごと颯介を引っ張った。
「う、わ」
慌てて右手で身体を支えた颯介が「ちょっと」と何か言いたげに顔をしかめる。それさえも愛しくて、僕は左手を伸ばして、颯介の頬を撫でた。
「やっと、なまえ、よべる」
夢見心地の中、それだけなんとか口にした。途端、ナカにいる颯介が膨らんだ気がして、僕は「ふぇ?」と首を傾げた。
「あーもー……。ほんと、あなたは……」
「ぇ、あ、ああっ」
ぐい、と腰を押しつけられて、また声が上がった。
「呼んでくださいよ。好きなだけ。満足するまで」
颯介の目に宿る光がギラギラした気がして、僕はいけないことを言ってしまったのではないかと思ったけど、もう全部が遅かった。
恥ずかしいと言った僕を、颯介が「今さらですか」と笑い飛ばして、テコでも消してくれなかったからだ。
秋に入ったからか、室内でも少し肌寒くて、颯介は上を脱がそうとはしてこなかった。代わりに着せられた颯介のシャツは少し大きくて、それでいて颯介の香りが強くて、むせ返るくらいの甘さに、何も考えられなくなっていく。
「紅羽さん、もうびしょ濡れじゃないですか」
「ん……っ」
寝転がる僕から、颯介がボクサーパンツを取り払う。既に勃ち上がっていた自身から透明の糸が伸び、それを颯介が指先に絡めて舐め取った。
「そ、そんなの舐めるなっ」
「じゃあ、こっちにしましょうか?」
両足を開かれて、颯介に自身を握り込まれる。親指で先端をぬるぬると緩く擦られ、口からは「あうっ」とあられもない声が出た。
「やば……、紅羽さんの、美味そう……」
「あっ、やぁっ……、でる、からっ」
先端をくちゅくちゅと音を立てて刺激され、颯介の手が僕を快楽へと攻め立てる。でもこんなに早くイかされるのが癪で、僕は頭の下に敷いた枕を両手で掴んで、その快楽に必死に耐える。
「出してください。俺の手に」
「ぅぅんっ、や、は……っ」
耐える僕の強がりも呆気ないまま、颯介の手に真っ白な欲を出し切った。手のひらからドロドロと手首を伝うそれに恥ずかしさが込み上げる。
「って、何、舐めて……!」
颯介は手のひら、さらには手首を伝う白濁に舌を這わせると、余すことなくそれを舐め取っていく。
「何って、紅羽さんの精子ですけど」
「普通にそんなもん舐めるな! あまつさえ飲むな!」
「紅羽さんのは全部俺のなんで」
涼しい顔で言ってのけ、颯介が横に用意していたボトルを手に取った。パチンと小気味よく蓋を開けて、精子を舐め取ったばかりの手に液体を垂らしていく。
「すみません、紅羽さん」
蓋を閉める時間も惜しいのか、颯介はボトルを横に放り、ローションのついた指先を僕の後孔へ塗りつける。
「ちょっと今日はもう、余裕ないかも、です……っ」
「う、んっ」
余裕がないと言いながらも、しっかりと慣らしてくれる優しさが嬉しい。
微かな異物感に息を漏らす。まだ解されてないそこは苦しいはずなのに、僕の身体はそれすらも快楽として拾い上げる。足先が意に反してぴくりと動き、颯介の頬を蹴り上げた。
「ご、め……んぁ」
荒い息づかいの中、謝罪しようと口を開いたのに、中のしこりを擦られて甲高い声が上がった。
「ん……。大丈夫です」
颯介が右手で中を擦りながら、僕の右足首を左手で掴む。足首をきつく吸われたかと思えば、そのまま足裏を舐め上げられた。
「ひ、ぁっ、汚いっ」
かかとも緩く噛まれ、土踏まず、親指の付け根まで舌が這い、最後に親指を口に含まれた。爪と皮膚の間を柔らかい感触が伝い、指と指の間も丁寧に舐め取られてしまう。
「やあっ、そうす、けぇっ」
二本に増やされていた指が、入口を柔らかくするようにヌチヌチと緩く出し入れされる。
「紅羽さんの中、すごく吸い付いてきてますよ。俺の挿入たら食い千切られそう」
「そんな、こと、しな……っ」
親指を舐めていた舌が、人差し指、中指と移動する合間にも、颯介は窄みを解す指を増やして、僕のナカを執拗に擦り続ける。しこりを押されるたび、自分でもわかるくらいに颯介の指をきゅうきゅうと締めつけ、とめどない快楽の波に呑まれてしまう。
「そんなに俺の指、好きです? 離そうとしませんよ?」
そう軽く笑い、指先がしこりを軽く叩くような動きに変わる。
「ひ、ぁ……だめっ、いっちゃ、う」
さっきも出したばかりだというのに、身体はびくびくと痙攣し始め、僕は呆気なく腹に向かって精を飛び散らせた。肩を上下させ息を整えていると、後孔に熱が押し当てられた。
「そう、すけ」
お腹の奥の疼きを早くなんとかしてほしくて、枕を握っていた右手を伸ばす。
「は……っ、ゃく」
「紅羽さんっ」
余裕のない颯介が、それでもまだ理性を保っているのか、足首から手を離し、そのまま左手を伸ばして握り返してくれた。
十分に解されたそこは、颯介のモノを簡単に呑み込んで、僕に少しの圧迫感を与えてくる。最初こそ辛くて苦しくて、息さえも上手く出来なかったのに、今では息の仕方もわかるようになった。
「んんぅ……、ああっ」
ナカを慣らすように、入口あたりで颯介が腰を動かす。そのたびにしこりを擦られ、僕の口からは甘い声が上がる。
「紅羽さん、今日やばくないですか? そんなんじゃ、最後まで保ちませんよ?」
浅いところで出し入れしていた颯介が、少しずつ腰を押し進める。僕も息を吐き、力を出来るだけ抜いて、颯介を奥まで受け入れていく。
「ひぁぁ、んぐっ」
僕から嬌声が溢れるたび、颯介の質量が増すのがわかる。余裕がないと言っていたのに。ほんとは今すぐ僕をぐちゃぐちゃにしたいくせに。なのに、颯介は僕に負担をかけないよう、出来るだけ優しく、ゆっくり進めてくれる。
「ふふ……っ」
「紅羽さん?」
つい笑みが溢れて、僕は握っていた手ごと颯介を引っ張った。
「う、わ」
慌てて右手で身体を支えた颯介が「ちょっと」と何か言いたげに顔をしかめる。それさえも愛しくて、僕は左手を伸ばして、颯介の頬を撫でた。
「やっと、なまえ、よべる」
夢見心地の中、それだけなんとか口にした。途端、ナカにいる颯介が膨らんだ気がして、僕は「ふぇ?」と首を傾げた。
「あーもー……。ほんと、あなたは……」
「ぇ、あ、ああっ」
ぐい、と腰を押しつけられて、また声が上がった。
「呼んでくださいよ。好きなだけ。満足するまで」
颯介の目に宿る光がギラギラした気がして、僕はいけないことを言ってしまったのではないかと思ったけど、もう全部が遅かった。
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