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朗報と驚愕
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「いやぁ、大荷物になっちゃったな……次は?」
「情報屋のカンドロの所だ。……あの子の事聞くんだろう?」
「あぁ、そうだよ。ついでにこの重い荷物を下ろさなきゃな!」
マヤとトクラは買い出しを終え、最後の目的を果たしに行こうとしていた。
『情報屋のカンドロ』は老いた女ではあるが、王家の事までも知っていると聞く。マヤ達とは親交があるため、二人はルカの事を聞こうとしていた。
「……おや、名無しのマヤじゃないか」
暖かく燃えている火のそばに座り、手を火に近づけている女。
長く長く伸びた赤髪、全てを見透かしそれらを面白がるような真紅の瞳。座っている椅子の左右にある二つの真鍮製の斜めに伸びた棒に髪を絡ませている。
「久しぶり、カンドロ。まだ髪を切ってないのかい?」
「生まれてこのかた切ったことはないわ。それで今日は?」
「あぁ、奥でいいかい」
棒に絡んだ見事な赤髪をほどき、そのまま引きずりながら奥の焼け焦げたような色をしたドアに向かって進んでいくカンドロ。
「……それで、どうした? なんか拾ったらしいね」
「ははっ、流石情報屋、耳が早い。そうさ、拾い物について聞きたいんだ」
「ふーん。あんたがそんな母親っぽくなるたぁね」
かかかっと気持ちのいい笑いを見せる。
「ふん、からかうのはやめてくれ。……例の王女だよ」
「トクラ、連れて帰りな。熱があるよ」
「冗談はほどほどにしてくれ。……本当だ」
「…………」
「……カンドロ、何か知ってるかい?」
「あぁ……なぁマヤ、あんたちゃんとその子を隠したかい?」
きょろきょろと周りを落ち着かなげに見るカンドロ。まるで何かを知っているかのように────。
「っ何かあったのかいっ!?」
「違うんだよ──今朝私も用があって森に行ったんだ、その時綺麗な金髪の子がいてね、気のせいかと思って会いはしなかったが……」
「っ、何時だ!?」
「し、七時ぐらいじゃないかね」
「っ私らが買い出しに出たすぐ後っ……あの子目が覚めたのか!?」
「目が覚めたってどう言うことだい?」
すぐに興味深げな表情に戻るカンドロだが──その目には緊張も含まれているようにトクラは感じた。
「……あぁ、それはグラッサージア一族に人間が触れた時の副作用さ。真に信用されたらもう大丈夫」
「な、ならいいが……」
「そういえば気になっていたんだが、妾腹の子って何のことだい? シレーグナ様は正妻の子だろ? 妾腹の子はニーアリアン様じゃないのかい」
「──はぁぁ!?」
そう、マヤとトクラはほとんど王家事情を知らなかった。突然やってきたシレーグナから『自分は妾腹だ』と聞かされただけであって、それ以外は全く──というぐらい、何も知らなかったのである。
「ニーアリアン様が妾腹だってことは知ってるだろ」
「あ、あぁ……」
「シレーグナ様は正妻腹で、ニーアリアン様は妾腹。正確にいえば王妃の元侍女との子だね」
「元侍女……なるほど」
「だからシレーグナ様は妾腹の子じゃないんだ」
「な、るほど……」
「じゃあなんであの子はそんなこと……あ、侯爵に騙されたのか!」
「おい、侯爵……?」
どんなところよりも、どんな時よりも、氷よりも冷たくて重い空気が漂った。カンドロの表情は恐怖に満ちており、マヤとトクラの顔は疑問が沢山という言葉が顔に書かれていた。
「侯爵はついさっき、逮捕されたと聞いたよ? ただその前に、兵が沢山出ていったが」
「──っ、兵……!?」
眠り姫は、グラッサージアの鼻面を撫でる。
その配偶者は、彼女に気づかない。
「情報屋のカンドロの所だ。……あの子の事聞くんだろう?」
「あぁ、そうだよ。ついでにこの重い荷物を下ろさなきゃな!」
マヤとトクラは買い出しを終え、最後の目的を果たしに行こうとしていた。
『情報屋のカンドロ』は老いた女ではあるが、王家の事までも知っていると聞く。マヤ達とは親交があるため、二人はルカの事を聞こうとしていた。
「……おや、名無しのマヤじゃないか」
暖かく燃えている火のそばに座り、手を火に近づけている女。
長く長く伸びた赤髪、全てを見透かしそれらを面白がるような真紅の瞳。座っている椅子の左右にある二つの真鍮製の斜めに伸びた棒に髪を絡ませている。
「久しぶり、カンドロ。まだ髪を切ってないのかい?」
「生まれてこのかた切ったことはないわ。それで今日は?」
「あぁ、奥でいいかい」
棒に絡んだ見事な赤髪をほどき、そのまま引きずりながら奥の焼け焦げたような色をしたドアに向かって進んでいくカンドロ。
「……それで、どうした? なんか拾ったらしいね」
「ははっ、流石情報屋、耳が早い。そうさ、拾い物について聞きたいんだ」
「ふーん。あんたがそんな母親っぽくなるたぁね」
かかかっと気持ちのいい笑いを見せる。
「ふん、からかうのはやめてくれ。……例の王女だよ」
「トクラ、連れて帰りな。熱があるよ」
「冗談はほどほどにしてくれ。……本当だ」
「…………」
「……カンドロ、何か知ってるかい?」
「あぁ……なぁマヤ、あんたちゃんとその子を隠したかい?」
きょろきょろと周りを落ち着かなげに見るカンドロ。まるで何かを知っているかのように────。
「っ何かあったのかいっ!?」
「違うんだよ──今朝私も用があって森に行ったんだ、その時綺麗な金髪の子がいてね、気のせいかと思って会いはしなかったが……」
「っ、何時だ!?」
「し、七時ぐらいじゃないかね」
「っ私らが買い出しに出たすぐ後っ……あの子目が覚めたのか!?」
「目が覚めたってどう言うことだい?」
すぐに興味深げな表情に戻るカンドロだが──その目には緊張も含まれているようにトクラは感じた。
「……あぁ、それはグラッサージア一族に人間が触れた時の副作用さ。真に信用されたらもう大丈夫」
「な、ならいいが……」
「そういえば気になっていたんだが、妾腹の子って何のことだい? シレーグナ様は正妻の子だろ? 妾腹の子はニーアリアン様じゃないのかい」
「──はぁぁ!?」
そう、マヤとトクラはほとんど王家事情を知らなかった。突然やってきたシレーグナから『自分は妾腹だ』と聞かされただけであって、それ以外は全く──というぐらい、何も知らなかったのである。
「ニーアリアン様が妾腹だってことは知ってるだろ」
「あ、あぁ……」
「シレーグナ様は正妻腹で、ニーアリアン様は妾腹。正確にいえば王妃の元侍女との子だね」
「元侍女……なるほど」
「だからシレーグナ様は妾腹の子じゃないんだ」
「な、るほど……」
「じゃあなんであの子はそんなこと……あ、侯爵に騙されたのか!」
「おい、侯爵……?」
どんなところよりも、どんな時よりも、氷よりも冷たくて重い空気が漂った。カンドロの表情は恐怖に満ちており、マヤとトクラの顔は疑問が沢山という言葉が顔に書かれていた。
「侯爵はついさっき、逮捕されたと聞いたよ? ただその前に、兵が沢山出ていったが」
「──っ、兵……!?」
眠り姫は、グラッサージアの鼻面を撫でる。
その配偶者は、彼女に気づかない。
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