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七章 冒険編
百五十九 ロニエの癒しかただよね
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『良いですか? ロニエ。今からロニエには私が教えられるありとあらゆる技能を教えます。辛いことも有るでしょう。辞めたくなることも必ずあります。フフフ。ロニエは不器用ですからね』
『母様酷いです~。それは私はイリア姉様程優れては居ませんが、そこまでいうことは無いじゃないですか!』
それはまだ、私、天野ロニエがロニエ・ノースカロライナであった頃の記憶。
私の大好きだった優しく厳しい母様との記憶。
私がちょうど五歳の誕生日を迎えた時でした。
呪いの体調不良から他の兄様や姉様達と遊べなかった私に母様が言いました。
テレサ母様はイリア姉様にも度々手ほどきをしていたので少し茶化されてしまいました。
姉様は昔から何だって出来ました、一度で全て出来てしまうのです。でも私はそれを何度も何度も繰り返してようやく出来るようになるのです。
「フフフ。それではダメダメですよ。ロニエ。まったっくもってダメダメです」
「母様~。ではどうすれば良いのですか! ロニエはこれでも一生懸命作っています!」
そうして始まった、母様の教えはそこまで厳しいものでもありませんでした。いつもニコニコ優しく母様は教えてくれました。
でも、こうして私が母様を真似てどんなに一生懸命やっても「それではダメダメですよ」とニコニコしながら言うのです。鬼畜にも程があります
ロニエは......コホン。私は一生懸命一つ一つ丁寧に作っているのにひど過ぎます。
「良いですか? ロニエ。全てはロニエが将来出会うかもしれない運命の人の為にやるのです」
母様は言います。
「会える可能性は限り無く低いです。私は出会えませんでしたし。それでもですよ。ロニエの運命の人の前でロニエはそうして失敗するのですか? そうして一生懸命だけで満足してしまうのですか?
完璧を超えるのです。全てを極めるのです。そして......ロニエが運命の人と出会ったとき私が教えた事を全て使って落としてしまいなさい。絶対に逃がしては為りません。絶対ですよ」
「母様......怖いですよ」
やけに、力の篭った言葉に少し私は後ろに下がります。
でも想像してしまいます。
顔も性格すら分からない何処かにいる運命の殿方を。私の料理で一喜一憂してくれるそんな場面を。
「ロニエはこれから、そのかたの為に努力するのです。その時失敗しないためにーー」
「はい母様」
■■■■■■
「.......ロニエ。ねぇ。ロニエ聞いてる?」
「! はい。ロニエですよ。ヒカル様のロニエですよ」
「う、うん。知ってるよ。それより今から二人だけでデートしよう」
ヒカル様が唐突に言い出すのは何時もの事ですが、今回はヒカル様らしくありません。
今はセレナが出産した直後で、普通ならセレナの近くに居ようとするはずです。どうしたのでしょうか?
「はい。喜んでお供します」
まあ、ヒカル様が何を考えてもそれはロニエには関係ありません。
ロニエはただヒカル様と共に行くだけです。それがヒカル様の望みなのですから。
ヒカルの望みを叶えて差し上げたい今も昔もロニエに取って大切なのはそれだけです。
「ほらロニエ。手、繋ごう。恋人繋ぎね」
そういってヒカル様がロニエに手を指し述べてくれました。ロニエは迷い無くその手をとります。
さて取ったのは言いですが恋人繋ぎとは何でしょうか?
全くわかりません。
そう思っているとヒカル様がロニエの指にヒカル様の指を交互に絡ませて手を繋ぎました。
これが恋人繋ぎなのでしょう。
「どう? ロニエ」
「そうですね」
ヒカル様と手を繋ぐのは何時も無意識の中でやっていて意識したことはありませんでしたが、この繋ぎ方は普段自分の指しか当たらない所にヒカル様の指の感触があるので、何だかむず痒くそしてほんのり心臓が高鳴ります。
「ヒカル様の指がロニエの指に絡まって気持ちいです」
「でしょ? 何かあれだね。ロニエに俺の普通なら触れない場所を触ってもらってる......あれ? 何故か恋人繋ぎってエッチだ」
ヒカル様が一人で何かの真理に至ったようです。それをロニエに話してほしいです。どんな事が分かったんでしょうか? ヒカル様の気付いた事を知りたいのです。ヒカル様の考えを全て......いえいえ。これは駄目な奴ですね。
もう、ロニエはそれは卒業しました。ヒカル様と同じになるのでは無く、ロニエはロニエとしてヒカル様と同じ時を進むことを決めたのですから。
「じゃあ、いこっか。セレナ。何かあったらすぐ呼んでね」
「逆よ。ダーリン。危ないと思ったらすぐ私を呼ぶのよ? 良いわね?」
「良くないけど、セレナを頼るときは迷い無く頼るよ。だからセレナも俺を頼るんだよ?」
ヒカル様は相変わらずカッコイイです。まさかの「俺を頼れ」発言をしてました。
頼ってしまいたくなります。男らしい。カッコイイ。やっぱりロニエはヒカル様が好きです。
ヒカル様とセレナの話の腰を折らない程度にヒカル様に抱き着き、顔をヒカル様のお腹に埋めます。
ヒカル様の心地好い暖かさと毎日の運動の成果かそれなりに引き締まった筋肉、そしてなりよりヒカル様の脳が蕩けてしまうほど良い匂いを嗅ぎます。
「ふふん。そうね。分かったわ。ほら早く行きなさい。ロニエが待って居るわよ」
「うん。そうするよ。今度セレナともデートするからね。もちろんヒムートもってヒムートは?」
ヒカル様が疑問を抱いています。ヒカル様の疑問はロニエが答えます。
「ヒムートさんは、赤子を連れて先ほど、ここを出て行きましたよ。母乳が出にくいセレナの変わりにミルクを作りに行ったのでしょう」
「何でよ! せめて私に許可をとりなさいよ! ダーリンにって言うから渡したのよ。ヒムートに渡したわけじゃないわ!」
「セレナ......頼むから。じっとしてて。ヒムートなら大丈夫でしょ?」
腰を上げかけたセレナにヒカル様が辛そうに懇願しています。.......ロニエは失敗してしまいした。ヒカル様にこの顔をさせたく有りませんでした。
これでは何のためにセレナ母様から学んだのかわかりません。
全てはヒカル様の為だと言うのに.......
「分かったわ。ダーリン。大丈夫よ。動かないわ。ダーリンが良いっていうまでここで待わ」
「セレナ。有りがとう。行ってくるね」
「ふふん。気をつけるのよダーリン」
こうしてロニエとヒカル様は二人でセントラルの町並みを見て回ることになりました。
外に出てしばらくは人混みに揉まれそうになったりもしましたがそこは、ノートンさんが良くしてくれました。
一度、人目から消えてしまえば、ヒカル様もロニエもそこまで顔はしられていませんので比較的に自由に散策を楽しめました。
しかし、セントラルの町並みはセレナの黒い茨が所々に生え繁り、何より、空の魔物の王グランドドラゴンの襲来によって瓦礫の街と化してしまっています。
人も街も傷つき、何よりヒカル様を傷付けた礼は必ず返します。
グランドドラゴンが唐突にわざわざヒカル様を襲ってくるわけがありません。
誰か人の意思を感じます。
「ロニエ.......ロニエ」
「はい。ロニエですよ。ヒカル様のロニエですよ」
少し思考に専念し過ぎてしまいました。ヒカル様のお声を聞き逃してしまいました。残念です。折角ヒカル様がお声をかけて下さったと言うのに、『ダメダメ』ですね。
ロニエはヒカル様の為に全てを捧げるのです。ヒカル様が愛おしくて愛おしくて狂ってしまいそうになります。
もっと抱きしめて貰いたい。もっと頭を撫でて貰いたい。もっとヒカル様を感じたい。ヒカル様が好きです。ああヒカル様。ヒカル様はどうしてヒカル様なのですか? ロニエはどうしてロニエなのでしょう。もっともっとヒカル様の妻として相応しい人にならなければ行けません。
「愛しています。ヒカル様.......ロニエはヒカル様を愛しています」
「嬉しいよ。ロニエにそういって貰えるのはそう思って貰えるのは。嬉しいよ。でもさロニエ。何でさっきから笑ってくれないの? 俺と一緒にデートするの楽しくない?」
「!!」
楽しくない.......ヒカル様に言われて気付いてしまいます。ロニエは全く楽しくありません。ヒカル様が何より好きなヒカル様と共に歩いて居るのに.......
「ロニエ.......俺はさ。ロニエとこうして目的無くただブラブラと歩き回るそれだけさっきから心臓バクバクしてるよーー」
「ヒカル様.......ロニエを愛していますか? ロニエはヒカル様に愛して貰えてますか?」
「ん? うん。もちろんだよ」
ロニエは失敗しました。それはヒカルの信頼を裏切るという最悪な失敗です。
ロニエが楽しめない理由は一つしかありません。それは、
「ロニエ!」
急に、ヒカル様に名を呼ばれました。ヒカル様に名を呼ばれたのならロニエは必ずこういいます。
「はいロニエですよ。ヒカル様のロニエロニエですよ」
こう言えばヒカル様はとても喜びます。ロニエもこのやり取りは気に入っています。でもヒカル様の顔に笑顔が咲くことはありませんでした。
「ロニエは俺のじゃなくて良いよ。それがロニエの枷になるならもう要らない。信じてよ。ロニエ。ロニエは俺の理想じゃなくても良いんだよ。俺の理想の言葉を話さくても良いんだよ」
「意味がわかりません。ロニエはヒカル様を信じています」
先程からヒカル様と会話が噛み合いません。ヒカル様の真意がわかりません。
ヒカル様は繋いだ手を離してロニエの胸の前に指し伸ばします。その手をロニエは取ろうとしてヒカル様に首を振られました。
「出され手を取らなくても良い。呼んでも来なくても良い。何より俺の期待に答える必要なんて無い!」
「.......意味がわかりません。ロニエにはヒカル様の言いたい事の意味がわかりません」
「..............ロニエ。ぶっちゃけると、俺はロニエが落ち込んでるから励まそうとしてるだけだよ。だからこうして、産まれた子供やセレナすらほってロニエとデートしてるんだよ。どうしたらロニエは元気になってくれる? 何時もみたいに堂々と俺の手を握り俺の横に立ち、俺の腕に抱かれてくれる?」
ヒカル様が観念した言うようにロニエに真意を教えてくれます。
それでわかりました。ようやくわかりました。ちょっと涙が出そうになります。
「フフ.......フフフ」
「わ、笑うの? 酷いよ。そりゃあ励まそうとしている相手にどうすれば良いか聞くのは格好悪いけど.......」
涙よりも先に笑いが止まらなくなりました。
ヒカル様はずっとロニエの事しか考えていなかったのです。ロニエは確かに落ち込んでいます。ヒカル様の子を死なせてしまったのですから。
「ヒカル様。あいも変わらずおばか様ですね。バカル様です」
「そこまで.......言うの?」
「ええ言いますよ。バカル様。ロニエ確かに落ち込んでいます。ヒカル様と共に歩いていても上の空になる程とても落ち込んでいます。ええ落ち込んでいますよ。大失敗しましたから」
確かに落ち込んでいました。ロニエは落ち込んでいました。
でも。でもです。ヒカル様。
「ヒカル様はロニエの機嫌の直す方法が有ることを知っているではありませんか」
「知らないよ!? どうすれば良いの? 何でもするよ」
知らないはずありません。落ち込んでいるロニエにすぐに気がつくのにそれを簡単に戻せるのにその方法に辿り着けないヒカル様が愛おしくて堪りません。
ロニエはヒカル様の差し出された手を取らずにヒカル様に抱き着きます。力一杯抱き着きます。ロニエの大好きなヒカル様に。
「ヒカル様がロニエの事を慰めてくれればロニエはコロチョロッと立ち直れます」
「!」
どうやらヒカル様も気付いたようです。
「ヒカル様。ロニエを癒してくれますか?」
「うん。ロニエ、何時もと逆だね。良いよ。ロニエ。ロニエの好きなだけしてあげる。ロニエも快楽にーー」
「下品ですよ。ロニエはヒカル様の愛に溺れるだけです。ヒカル様.......ロニエはヒカル様のロニエです。そしてヒカル様は」
「うん。ロニエの光だよ。さあ行こっか」
「はい」
ヒカル様がロニエの首と膝裏に腕を当てて抱き上げてくれます。
ヒカル様との距離が近づいてそのまま唇を奪って貰えました。
体を全てヒカル様のものにしてくれました。
ロニエに取ってこんなにも幸せな事は他にありません。
『母様酷いです~。それは私はイリア姉様程優れては居ませんが、そこまでいうことは無いじゃないですか!』
それはまだ、私、天野ロニエがロニエ・ノースカロライナであった頃の記憶。
私の大好きだった優しく厳しい母様との記憶。
私がちょうど五歳の誕生日を迎えた時でした。
呪いの体調不良から他の兄様や姉様達と遊べなかった私に母様が言いました。
テレサ母様はイリア姉様にも度々手ほどきをしていたので少し茶化されてしまいました。
姉様は昔から何だって出来ました、一度で全て出来てしまうのです。でも私はそれを何度も何度も繰り返してようやく出来るようになるのです。
「フフフ。それではダメダメですよ。ロニエ。まったっくもってダメダメです」
「母様~。ではどうすれば良いのですか! ロニエはこれでも一生懸命作っています!」
そうして始まった、母様の教えはそこまで厳しいものでもありませんでした。いつもニコニコ優しく母様は教えてくれました。
でも、こうして私が母様を真似てどんなに一生懸命やっても「それではダメダメですよ」とニコニコしながら言うのです。鬼畜にも程があります
ロニエは......コホン。私は一生懸命一つ一つ丁寧に作っているのにひど過ぎます。
「良いですか? ロニエ。全てはロニエが将来出会うかもしれない運命の人の為にやるのです」
母様は言います。
「会える可能性は限り無く低いです。私は出会えませんでしたし。それでもですよ。ロニエの運命の人の前でロニエはそうして失敗するのですか? そうして一生懸命だけで満足してしまうのですか?
完璧を超えるのです。全てを極めるのです。そして......ロニエが運命の人と出会ったとき私が教えた事を全て使って落としてしまいなさい。絶対に逃がしては為りません。絶対ですよ」
「母様......怖いですよ」
やけに、力の篭った言葉に少し私は後ろに下がります。
でも想像してしまいます。
顔も性格すら分からない何処かにいる運命の殿方を。私の料理で一喜一憂してくれるそんな場面を。
「ロニエはこれから、そのかたの為に努力するのです。その時失敗しないためにーー」
「はい母様」
■■■■■■
「.......ロニエ。ねぇ。ロニエ聞いてる?」
「! はい。ロニエですよ。ヒカル様のロニエですよ」
「う、うん。知ってるよ。それより今から二人だけでデートしよう」
ヒカル様が唐突に言い出すのは何時もの事ですが、今回はヒカル様らしくありません。
今はセレナが出産した直後で、普通ならセレナの近くに居ようとするはずです。どうしたのでしょうか?
「はい。喜んでお供します」
まあ、ヒカル様が何を考えてもそれはロニエには関係ありません。
ロニエはただヒカル様と共に行くだけです。それがヒカル様の望みなのですから。
ヒカルの望みを叶えて差し上げたい今も昔もロニエに取って大切なのはそれだけです。
「ほらロニエ。手、繋ごう。恋人繋ぎね」
そういってヒカル様がロニエに手を指し述べてくれました。ロニエは迷い無くその手をとります。
さて取ったのは言いですが恋人繋ぎとは何でしょうか?
全くわかりません。
そう思っているとヒカル様がロニエの指にヒカル様の指を交互に絡ませて手を繋ぎました。
これが恋人繋ぎなのでしょう。
「どう? ロニエ」
「そうですね」
ヒカル様と手を繋ぐのは何時も無意識の中でやっていて意識したことはありませんでしたが、この繋ぎ方は普段自分の指しか当たらない所にヒカル様の指の感触があるので、何だかむず痒くそしてほんのり心臓が高鳴ります。
「ヒカル様の指がロニエの指に絡まって気持ちいです」
「でしょ? 何かあれだね。ロニエに俺の普通なら触れない場所を触ってもらってる......あれ? 何故か恋人繋ぎってエッチだ」
ヒカル様が一人で何かの真理に至ったようです。それをロニエに話してほしいです。どんな事が分かったんでしょうか? ヒカル様の気付いた事を知りたいのです。ヒカル様の考えを全て......いえいえ。これは駄目な奴ですね。
もう、ロニエはそれは卒業しました。ヒカル様と同じになるのでは無く、ロニエはロニエとしてヒカル様と同じ時を進むことを決めたのですから。
「じゃあ、いこっか。セレナ。何かあったらすぐ呼んでね」
「逆よ。ダーリン。危ないと思ったらすぐ私を呼ぶのよ? 良いわね?」
「良くないけど、セレナを頼るときは迷い無く頼るよ。だからセレナも俺を頼るんだよ?」
ヒカル様は相変わらずカッコイイです。まさかの「俺を頼れ」発言をしてました。
頼ってしまいたくなります。男らしい。カッコイイ。やっぱりロニエはヒカル様が好きです。
ヒカル様とセレナの話の腰を折らない程度にヒカル様に抱き着き、顔をヒカル様のお腹に埋めます。
ヒカル様の心地好い暖かさと毎日の運動の成果かそれなりに引き締まった筋肉、そしてなりよりヒカル様の脳が蕩けてしまうほど良い匂いを嗅ぎます。
「ふふん。そうね。分かったわ。ほら早く行きなさい。ロニエが待って居るわよ」
「うん。そうするよ。今度セレナともデートするからね。もちろんヒムートもってヒムートは?」
ヒカル様が疑問を抱いています。ヒカル様の疑問はロニエが答えます。
「ヒムートさんは、赤子を連れて先ほど、ここを出て行きましたよ。母乳が出にくいセレナの変わりにミルクを作りに行ったのでしょう」
「何でよ! せめて私に許可をとりなさいよ! ダーリンにって言うから渡したのよ。ヒムートに渡したわけじゃないわ!」
「セレナ......頼むから。じっとしてて。ヒムートなら大丈夫でしょ?」
腰を上げかけたセレナにヒカル様が辛そうに懇願しています。.......ロニエは失敗してしまいした。ヒカル様にこの顔をさせたく有りませんでした。
これでは何のためにセレナ母様から学んだのかわかりません。
全てはヒカル様の為だと言うのに.......
「分かったわ。ダーリン。大丈夫よ。動かないわ。ダーリンが良いっていうまでここで待わ」
「セレナ。有りがとう。行ってくるね」
「ふふん。気をつけるのよダーリン」
こうしてロニエとヒカル様は二人でセントラルの町並みを見て回ることになりました。
外に出てしばらくは人混みに揉まれそうになったりもしましたがそこは、ノートンさんが良くしてくれました。
一度、人目から消えてしまえば、ヒカル様もロニエもそこまで顔はしられていませんので比較的に自由に散策を楽しめました。
しかし、セントラルの町並みはセレナの黒い茨が所々に生え繁り、何より、空の魔物の王グランドドラゴンの襲来によって瓦礫の街と化してしまっています。
人も街も傷つき、何よりヒカル様を傷付けた礼は必ず返します。
グランドドラゴンが唐突にわざわざヒカル様を襲ってくるわけがありません。
誰か人の意思を感じます。
「ロニエ.......ロニエ」
「はい。ロニエですよ。ヒカル様のロニエですよ」
少し思考に専念し過ぎてしまいました。ヒカル様のお声を聞き逃してしまいました。残念です。折角ヒカル様がお声をかけて下さったと言うのに、『ダメダメ』ですね。
ロニエはヒカル様の為に全てを捧げるのです。ヒカル様が愛おしくて愛おしくて狂ってしまいそうになります。
もっと抱きしめて貰いたい。もっと頭を撫でて貰いたい。もっとヒカル様を感じたい。ヒカル様が好きです。ああヒカル様。ヒカル様はどうしてヒカル様なのですか? ロニエはどうしてロニエなのでしょう。もっともっとヒカル様の妻として相応しい人にならなければ行けません。
「愛しています。ヒカル様.......ロニエはヒカル様を愛しています」
「嬉しいよ。ロニエにそういって貰えるのはそう思って貰えるのは。嬉しいよ。でもさロニエ。何でさっきから笑ってくれないの? 俺と一緒にデートするの楽しくない?」
「!!」
楽しくない.......ヒカル様に言われて気付いてしまいます。ロニエは全く楽しくありません。ヒカル様が何より好きなヒカル様と共に歩いて居るのに.......
「ロニエ.......俺はさ。ロニエとこうして目的無くただブラブラと歩き回るそれだけさっきから心臓バクバクしてるよーー」
「ヒカル様.......ロニエを愛していますか? ロニエはヒカル様に愛して貰えてますか?」
「ん? うん。もちろんだよ」
ロニエは失敗しました。それはヒカルの信頼を裏切るという最悪な失敗です。
ロニエが楽しめない理由は一つしかありません。それは、
「ロニエ!」
急に、ヒカル様に名を呼ばれました。ヒカル様に名を呼ばれたのならロニエは必ずこういいます。
「はいロニエですよ。ヒカル様のロニエロニエですよ」
こう言えばヒカル様はとても喜びます。ロニエもこのやり取りは気に入っています。でもヒカル様の顔に笑顔が咲くことはありませんでした。
「ロニエは俺のじゃなくて良いよ。それがロニエの枷になるならもう要らない。信じてよ。ロニエ。ロニエは俺の理想じゃなくても良いんだよ。俺の理想の言葉を話さくても良いんだよ」
「意味がわかりません。ロニエはヒカル様を信じています」
先程からヒカル様と会話が噛み合いません。ヒカル様の真意がわかりません。
ヒカル様は繋いだ手を離してロニエの胸の前に指し伸ばします。その手をロニエは取ろうとしてヒカル様に首を振られました。
「出され手を取らなくても良い。呼んでも来なくても良い。何より俺の期待に答える必要なんて無い!」
「.......意味がわかりません。ロニエにはヒカル様の言いたい事の意味がわかりません」
「..............ロニエ。ぶっちゃけると、俺はロニエが落ち込んでるから励まそうとしてるだけだよ。だからこうして、産まれた子供やセレナすらほってロニエとデートしてるんだよ。どうしたらロニエは元気になってくれる? 何時もみたいに堂々と俺の手を握り俺の横に立ち、俺の腕に抱かれてくれる?」
ヒカル様が観念した言うようにロニエに真意を教えてくれます。
それでわかりました。ようやくわかりました。ちょっと涙が出そうになります。
「フフ.......フフフ」
「わ、笑うの? 酷いよ。そりゃあ励まそうとしている相手にどうすれば良いか聞くのは格好悪いけど.......」
涙よりも先に笑いが止まらなくなりました。
ヒカル様はずっとロニエの事しか考えていなかったのです。ロニエは確かに落ち込んでいます。ヒカル様の子を死なせてしまったのですから。
「ヒカル様。あいも変わらずおばか様ですね。バカル様です」
「そこまで.......言うの?」
「ええ言いますよ。バカル様。ロニエ確かに落ち込んでいます。ヒカル様と共に歩いていても上の空になる程とても落ち込んでいます。ええ落ち込んでいますよ。大失敗しましたから」
確かに落ち込んでいました。ロニエは落ち込んでいました。
でも。でもです。ヒカル様。
「ヒカル様はロニエの機嫌の直す方法が有ることを知っているではありませんか」
「知らないよ!? どうすれば良いの? 何でもするよ」
知らないはずありません。落ち込んでいるロニエにすぐに気がつくのにそれを簡単に戻せるのにその方法に辿り着けないヒカル様が愛おしくて堪りません。
ロニエはヒカル様の差し出された手を取らずにヒカル様に抱き着きます。力一杯抱き着きます。ロニエの大好きなヒカル様に。
「ヒカル様がロニエの事を慰めてくれればロニエはコロチョロッと立ち直れます」
「!」
どうやらヒカル様も気付いたようです。
「ヒカル様。ロニエを癒してくれますか?」
「うん。ロニエ、何時もと逆だね。良いよ。ロニエ。ロニエの好きなだけしてあげる。ロニエも快楽にーー」
「下品ですよ。ロニエはヒカル様の愛に溺れるだけです。ヒカル様.......ロニエはヒカル様のロニエです。そしてヒカル様は」
「うん。ロニエの光だよ。さあ行こっか」
「はい」
ヒカル様がロニエの首と膝裏に腕を当てて抱き上げてくれます。
ヒカル様との距離が近づいてそのまま唇を奪って貰えました。
体を全てヒカル様のものにしてくれました。
ロニエに取ってこんなにも幸せな事は他にありません。
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