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まくら その2
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まくら その2
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
部長に支離滅裂な理由で組体操を強要されていた俺たちのもとに、突然、訪れた秋田さん。
秋田さんの娘は、アイドルグループ『おえおうさせ隊』に所属していたが、あることをきっかけに精神的に不安定になり、なぞの呪文・『おえおうおえおうおえおうおえおうおえおうおえおうおえおう...』を連呼するようになってしまう。
秋田さんは上記の理由を、娘が、芸能事務所AFデクレーションの社長、欠本ユートに枕営業を強要されたせいだと、俺たちに訴える。
ジャンケンに負けてしまった俺と竹田は、欠本ユートの悪事の証拠をつかむために、芸能事務所AFデクレーションに潜入することになってしまう。
そして、俺は、部長・ヨシノ・副部長のメイクにより、美少女アイドル、氏根駄ムァリコ(山神ムサシ)にされ、人として何か大事なものを失ってしまう。
何か大切なものを失ってしまったかのような、寂寞感にさいなまれながらも、俺はAFデクレーション潜入の際に避けては通れない、面接時に披露するアイドルソングの練習を始める。
そのアイドルソングの名は、『SAY&GO!FLY HIGH!上下左右からムァリコ‼~むぁりちゃんさびしかったんだもんそっかそっかならわいがあいてになるで~』。
部長にヘリウムガスを過剰吸引された俺は上記のバカみたいなタイトルの曲の練習を始める。
そして、欠本ユートが運営する芸能事務所AFデクレーション潜入当日。
女装した俺と、ビジュアル的な問題でメイクと女装すら不可能であると全会一致で女性陣に判断されたスーツ姿の竹田は、AFデクレーションのビルの前に立っていた。
「おい、竹田、やっぱりこのままバックれようぜ...」
ヨシノと副部長に取り押さえられ、部長にヘリウムガスを過剰吸引された、俺のアヒル声に竹田がなぜか頬を朱に染めて、うつむく。
「おい、山神...その格好で、そういうことを言うのはやめてくれないか...?」
どうやら、想像以上にクオリティ高いと評判の俺の女装姿とアヒル声に竹田は興奮しているようだ。
俺は何も見なかった聞かなかったことにして、AFデクレーションの中に入る。
芸能事務所AFデクレーションの面接とは、つまり、オーディションのことである。
面接会場である、無駄に広い一室には、アイドルの卵である美少女と、そのマネージャーたちが勢ぞろいしていた。
竹田が携帯を録画モードにして、スーツの胸ポケットに入れる。
俺は竹田の盗撮行為を見て見ぬふりをして、あたりを見回す。
オーディション会場に用意された長机とパイプ椅子には、芸能事務所のスタッフと思しき人物たちと、欠本ユートと思われる男が座っていた。
一見、秋田さんの言っていたような悪人には見えない、欠本ユートの姿に、俺は欠本ユートが余計キライになった。
オーディションが始まる。
アイドルの卵たちが次々に、女性にモテない男性に夢を見させるような歌を歌って踊る。
しかし、俺は知っている、上記のような歌を歌って踊るアイドルの卵たちが一番嫌悪している存在こそが、女性にモテない男性であることを。
この仕組みに気付けない、もしくは気付いているにもかかわらず、自らの心を偽っているアイドルファン達の心理状態を察すると俺はなぜか胸が痛くなった。
とうとう、俺の番が始まった。
俺は前日、部長と副部長とヨシノと竹田に嘲笑されながらも、練習に励んだ曲・『SAY&GO!FLY HIGH!上下左右からムァリコ‼~むぁりちゃんさびしかったんだもんそっかそっかならわいがあいてになるで~』を歌って踊る。
前日の地獄のような練習のストレスで血反吐を吐いた甲斐あって、俺は特にミスもせずに、歌って踊りきった。
謎の達成感に、俺は死にたくなった。
そして竹田が満面の笑みでうれし泣きしながら拍手する姿を見て、また死にたくなった。
そしてオーディションの結果発表が始まった。
氏根駄ムァリコ(山神ムサシ)は、芸能事務所AFデクレーションの面接に合格してしまった。
そして、俺のほかに下記↓のアイドル・アイドルグループが面接に合格した。
『エスカレーター逆走し隊』
『勃起佐賀69』
『ティラノアヤ』
『黒乳首』
とりあえず、芸能事務所AFデクレーションにはなんとか潜入できそうだ。
そしてそれは、美少女アイドル・氏根駄ムァリコ(山神ムサシ)のデビューを意味していた。
まさに地獄である。
次回予告 まくら その3
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
部長に支離滅裂な理由で組体操を強要されていた俺たちのもとに、突然、訪れた秋田さん。
秋田さんの娘は、アイドルグループ『おえおうさせ隊』に所属していたが、あることをきっかけに精神的に不安定になり、なぞの呪文・『おえおうおえおうおえおうおえおうおえおうおえおうおえおう...』を連呼するようになってしまう。
秋田さんは上記の理由を、娘が、芸能事務所AFデクレーションの社長、欠本ユートに枕営業を強要されたせいだと、俺たちに訴える。
ジャンケンに負けてしまった俺と竹田は、欠本ユートの悪事の証拠をつかむために、芸能事務所AFデクレーションに潜入することになってしまう。
そして、俺は、部長・ヨシノ・副部長のメイクにより、美少女アイドル、氏根駄ムァリコ(山神ムサシ)にされ、人として何か大事なものを失ってしまう。
何か大切なものを失ってしまったかのような、寂寞感にさいなまれながらも、俺はAFデクレーション潜入の際に避けては通れない、面接時に披露するアイドルソングの練習を始める。
そのアイドルソングの名は、『SAY&GO!FLY HIGH!上下左右からムァリコ‼~むぁりちゃんさびしかったんだもんそっかそっかならわいがあいてになるで~』。
部長にヘリウムガスを過剰吸引された俺は上記のバカみたいなタイトルの曲の練習を始める。
そして、欠本ユートが運営する芸能事務所AFデクレーション潜入当日。
女装した俺と、ビジュアル的な問題でメイクと女装すら不可能であると全会一致で女性陣に判断されたスーツ姿の竹田は、AFデクレーションのビルの前に立っていた。
「おい、竹田、やっぱりこのままバックれようぜ...」
ヨシノと副部長に取り押さえられ、部長にヘリウムガスを過剰吸引された、俺のアヒル声に竹田がなぜか頬を朱に染めて、うつむく。
「おい、山神...その格好で、そういうことを言うのはやめてくれないか...?」
どうやら、想像以上にクオリティ高いと評判の俺の女装姿とアヒル声に竹田は興奮しているようだ。
俺は何も見なかった聞かなかったことにして、AFデクレーションの中に入る。
芸能事務所AFデクレーションの面接とは、つまり、オーディションのことである。
面接会場である、無駄に広い一室には、アイドルの卵である美少女と、そのマネージャーたちが勢ぞろいしていた。
竹田が携帯を録画モードにして、スーツの胸ポケットに入れる。
俺は竹田の盗撮行為を見て見ぬふりをして、あたりを見回す。
オーディション会場に用意された長机とパイプ椅子には、芸能事務所のスタッフと思しき人物たちと、欠本ユートと思われる男が座っていた。
一見、秋田さんの言っていたような悪人には見えない、欠本ユートの姿に、俺は欠本ユートが余計キライになった。
オーディションが始まる。
アイドルの卵たちが次々に、女性にモテない男性に夢を見させるような歌を歌って踊る。
しかし、俺は知っている、上記のような歌を歌って踊るアイドルの卵たちが一番嫌悪している存在こそが、女性にモテない男性であることを。
この仕組みに気付けない、もしくは気付いているにもかかわらず、自らの心を偽っているアイドルファン達の心理状態を察すると俺はなぜか胸が痛くなった。
とうとう、俺の番が始まった。
俺は前日、部長と副部長とヨシノと竹田に嘲笑されながらも、練習に励んだ曲・『SAY&GO!FLY HIGH!上下左右からムァリコ‼~むぁりちゃんさびしかったんだもんそっかそっかならわいがあいてになるで~』を歌って踊る。
前日の地獄のような練習のストレスで血反吐を吐いた甲斐あって、俺は特にミスもせずに、歌って踊りきった。
謎の達成感に、俺は死にたくなった。
そして竹田が満面の笑みでうれし泣きしながら拍手する姿を見て、また死にたくなった。
そしてオーディションの結果発表が始まった。
氏根駄ムァリコ(山神ムサシ)は、芸能事務所AFデクレーションの面接に合格してしまった。
そして、俺のほかに下記↓のアイドル・アイドルグループが面接に合格した。
『エスカレーター逆走し隊』
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とりあえず、芸能事務所AFデクレーションにはなんとか潜入できそうだ。
そしてそれは、美少女アイドル・氏根駄ムァリコ(山神ムサシ)のデビューを意味していた。
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次回予告 まくら その3
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