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異国からの脅威 その4
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異国からの脅威 その4
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
『K国』が軍事利用しているパブリックモンスターの1人、ファヨムは朝食にサムゲタンを食っていた竹田を人質に取り、俺に自害を強要する。
しかし、俺と疾風の断罪剣士である部長の連携攻撃によって、ファヨムの作戦は失敗する。
俺のパブリックブレイカーの直撃を受けた影響で、普通の人間に戻り、能力を失ったファヨムは負け惜しみとばかりに、俺の断罪剣が持つ力、パブリックモンスターを人間に戻す力が、将来、世界そのものを敵に回すに違いないと言い残し、拳銃で自らの頭部を撃ち死亡した。
その後、ファヨムの遺体は通報により駆け付けてきたPGSの隊員達に回収された。
俺たちの国に潜入した『K国』のパブリックモンスターは残り、3人。
俺の存在そのものが世界にとって危険であるという、ファヨムの言葉がいつになっても俺の頭から離れなかった。
それはそれとして。
アルティメットメディアクリエイター部の部室では、学園祭の際に生徒や客に提供される『おにぎり』の試食会が行われていた。
部長が手袋もつけずに、素手で握ったおにぎりが俺と竹田の前に並べられる。
食中毒、待ったなしだ。
おそらく、俺と同じく、目の前のおにぎりを食うことで己の身に発生するリスクを、ある程度、察した竹田が横目で俺をにらみつける。
竹田の目が言外に言っている、先にお前が食って毒見をしろと。
俺は頭を降って言外に武田に伝える、まだ死ぬわけにはいかないと。
俺と竹田の反応に痺れを切らした部長が俺たちにキレる。
「二人とも、とっとと食いなさいよ!安心しなさい、おにぎりの具に変なの入れてないから!」
素手で握られた上に、中身の具が事前に説明されない、このおにぎりは、もはや具がなんであれ体内に摂取するにふさわしい食品と言えるのか、俺には疑問だった。
俺の横に座っている竹田が急に両目をつぶって、呪文を唱え始める。
「竹田君、なんでいきなり呪文唱え始めるの?」
「本当にすいません、なんか急に頭がおかしくなって、ごはんが食べられなくなってしまいました...」
「ウソついてんじゃないわよ!頭おかしいやつは自分のこと、頭おかしいって言わないのよ‼」
俺はひたすら、部長が素手で握った、おにぎりとにらめっこを続けている。
「ほら、山神君、はやく、おにぎり食べなさいよ!ツナマヨだから安心しなさい!」
「いや、僕はもういいです...」
「『もう』って、なによ!アンタ、まだ食べてないでしょ?」
「はっきり言って、食べてみたくなるビジュアルじゃないんですよね...」
「ハァ?アンタ、ケンカ売ってんの?」
そう、俺と竹田の目の前に並べられた皿に乗っている『黒い四角形の物体』はおにぎりとう名前の付いた別の何かだった。
俺は恐るおそる部長に質問する。
「部長、これはもう、おにぎりというより、ただのブラックボックスでは?」
「なにがブラックボックスよ!人の料理を不気味扱いしてんじゃないわよ!四角いおにぎり、画期的な発明でしょ?おい竹田ァ!呪文詠唱中断してなに笑ってんだ‼ぶっ殺すわよ!」
部長は目に涙を浮かべながらブラックボックスと化したおにぎりの有用性を俺たちに訴える。
さすがに泣かれては困るので俺は一口だけ、ブラックボックスをかじる。
俺の勇気ある決断に、竹田が思わず叫ぶ。
「山神ィィィィィィィィィィィィィィィッ‼」
部長の不安と期待に満ちた目が、俺を見つめる。
「う、うん、食えないことはない...たぶん」
まぁ、見た目と素手で握られた点に目をつぶれば、普通においしかった、普通に。
あとは食中毒にならないことを祈りつつ、自分の免疫力の高さを信じよう。
「山神...生前はあんまり面と向かって言えなかったけど、いい奴だった...」
「竹田ァ!勝手に人を殺すな、つーか、お前も食えよブラックボックス、俺も食ったんだからさ」
「じゃあ、食うぞ?ブラックボックス、いいな、食うぞ?食っていいんだな?ブラックボックス?」
「さっきから、ずっと食えって言ってんでしょ!」
ブラックボックスを完食した竹田。
「うん、おいしい」
そう言った竹田の顔は無表情だった。
こうして、アルティメットメディアクリエイター部の文化祭の出し物は、おにぎりカフェになった。
次回予告 文化祭 その1
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
『K国』が軍事利用しているパブリックモンスターの1人、ファヨムは朝食にサムゲタンを食っていた竹田を人質に取り、俺に自害を強要する。
しかし、俺と疾風の断罪剣士である部長の連携攻撃によって、ファヨムの作戦は失敗する。
俺のパブリックブレイカーの直撃を受けた影響で、普通の人間に戻り、能力を失ったファヨムは負け惜しみとばかりに、俺の断罪剣が持つ力、パブリックモンスターを人間に戻す力が、将来、世界そのものを敵に回すに違いないと言い残し、拳銃で自らの頭部を撃ち死亡した。
その後、ファヨムの遺体は通報により駆け付けてきたPGSの隊員達に回収された。
俺たちの国に潜入した『K国』のパブリックモンスターは残り、3人。
俺の存在そのものが世界にとって危険であるという、ファヨムの言葉がいつになっても俺の頭から離れなかった。
それはそれとして。
アルティメットメディアクリエイター部の部室では、学園祭の際に生徒や客に提供される『おにぎり』の試食会が行われていた。
部長が手袋もつけずに、素手で握ったおにぎりが俺と竹田の前に並べられる。
食中毒、待ったなしだ。
おそらく、俺と同じく、目の前のおにぎりを食うことで己の身に発生するリスクを、ある程度、察した竹田が横目で俺をにらみつける。
竹田の目が言外に言っている、先にお前が食って毒見をしろと。
俺は頭を降って言外に武田に伝える、まだ死ぬわけにはいかないと。
俺と竹田の反応に痺れを切らした部長が俺たちにキレる。
「二人とも、とっとと食いなさいよ!安心しなさい、おにぎりの具に変なの入れてないから!」
素手で握られた上に、中身の具が事前に説明されない、このおにぎりは、もはや具がなんであれ体内に摂取するにふさわしい食品と言えるのか、俺には疑問だった。
俺の横に座っている竹田が急に両目をつぶって、呪文を唱え始める。
「竹田君、なんでいきなり呪文唱え始めるの?」
「本当にすいません、なんか急に頭がおかしくなって、ごはんが食べられなくなってしまいました...」
「ウソついてんじゃないわよ!頭おかしいやつは自分のこと、頭おかしいって言わないのよ‼」
俺はひたすら、部長が素手で握った、おにぎりとにらめっこを続けている。
「ほら、山神君、はやく、おにぎり食べなさいよ!ツナマヨだから安心しなさい!」
「いや、僕はもういいです...」
「『もう』って、なによ!アンタ、まだ食べてないでしょ?」
「はっきり言って、食べてみたくなるビジュアルじゃないんですよね...」
「ハァ?アンタ、ケンカ売ってんの?」
そう、俺と竹田の目の前に並べられた皿に乗っている『黒い四角形の物体』はおにぎりとう名前の付いた別の何かだった。
俺は恐るおそる部長に質問する。
「部長、これはもう、おにぎりというより、ただのブラックボックスでは?」
「なにがブラックボックスよ!人の料理を不気味扱いしてんじゃないわよ!四角いおにぎり、画期的な発明でしょ?おい竹田ァ!呪文詠唱中断してなに笑ってんだ‼ぶっ殺すわよ!」
部長は目に涙を浮かべながらブラックボックスと化したおにぎりの有用性を俺たちに訴える。
さすがに泣かれては困るので俺は一口だけ、ブラックボックスをかじる。
俺の勇気ある決断に、竹田が思わず叫ぶ。
「山神ィィィィィィィィィィィィィィィッ‼」
部長の不安と期待に満ちた目が、俺を見つめる。
「う、うん、食えないことはない...たぶん」
まぁ、見た目と素手で握られた点に目をつぶれば、普通においしかった、普通に。
あとは食中毒にならないことを祈りつつ、自分の免疫力の高さを信じよう。
「山神...生前はあんまり面と向かって言えなかったけど、いい奴だった...」
「竹田ァ!勝手に人を殺すな、つーか、お前も食えよブラックボックス、俺も食ったんだからさ」
「じゃあ、食うぞ?ブラックボックス、いいな、食うぞ?食っていいんだな?ブラックボックス?」
「さっきから、ずっと食えって言ってんでしょ!」
ブラックボックスを完食した竹田。
「うん、おいしい」
そう言った竹田の顔は無表情だった。
こうして、アルティメットメディアクリエイター部の文化祭の出し物は、おにぎりカフェになった。
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