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風見マイカ その1
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風見マイカ その1
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
俺とヨシノが頑張って人間に戻したレオンがPGS(パブリックガーディアンズ)の霧原カイトに捕まってしまった。
どうやら、パブリックモンスターとして、数々の悪行を重ねてきたレオンには支援者がいたらしい。
そして、レオンはPGSで処刑されてしまうらしい。
まぁ、仕方がない、レオンはパブリックモンスターの力で、自分の両親や、大勢の人間を殺してしまったのだから。
しかし、それなら、俺とヨシノの努力はいったい何だったのだろうか。
俺は学生寮の自室に戻る。
隣の部屋に住んでいる竹田が、なぜか俺の部屋で鍋を食っていた。
「おまえ、どうして、ここにいるんだよ!」
「お前、俺が鍋食ってるの見てわかんねぇのか!眼科行ってこいバカ野郎!」
時計を見る限り、今はまだ、授業中のはずだ。
「お前なァ!」
「ムサシ、お前、腹、減ってるんだろ?お前も食えよ...」
竹田が台所から、まるで自分の所有物のように、俺の分のお椀とハシを持ってくる。
「ほれ、食え」
「言っとくけど、それ、俺の食器とハシだからな!いただきます!うん、おいしい」
竹田が俺のお椀に牛肉を入れてくる。
「ほれ、遠慮せずに、もっと肉、食え、肉を」
「あんがと。でも、なんだよ、いきなり、優しくしやがって...変な奴」
「俺さ、思い出したんだ、アキちゃんがパブリックモンスターになったときに...」
「なにを?」
「パブリックモンスターになった俺を、お前が人間に戻してくれたことだよ...」
「そっか」
「今日の鍋は、そのお礼だよ」
「にしても、この鍋、牛肉とか、カニとか、カキとか、すげぇ豪華だな!お前、結構、金持ってるんだな!」
「バカ野郎!この鍋の食材は全部、俺がスーパーでムァンビキしてきたんだぞォ!」
「バカはお前だ!バカ野郎!」
「パブリックブレイク現象のせいで、労働者が激減しているせいか、どのスーパーも店員の数が、少なくてな、楽勝だったよ」
「まぁ、そうなっちまうよな、『無期限・食糧配給制度』のおかげで、人類が滅びるまでの間は、お金がなくても、食べるご飯に困らないからな、そりゃ、みんな働かなくなるよな...」
「ああ、そのうち、スーパー自体も潰れるかもしれん、お前もムァンビキするなら、今の内だぞ...」
「するか、ボケェ!」
背後から聞き覚えのある声がする。
「相変わらず、君たちは仲がいいわね、そうだ!今年の文化祭で無料配布する同人誌は山神×竹田でいこう!」
「部長!」
俺の後ろにいたのは、俺と竹田が所属している部活動、『アルティメットメディアクリエイター部』の部長、風見マイカだった。
ちなみに、『アルティメットメディアクリエイター部』とは、アルティメットなメディアをクリエイターする部活動である。
わかりやすく言えば、なんでもアリの自由な部活である。
「部長!俺と竹田で、かけ算するの、やめてくれませんか!」
竹田も部長に抗議する。
「そうだァ、ごはん中に、不衛生なことをいうのはやめろォ!」
「つーか、アンタたち随分と、うまそうなもん、食ってるわよねーいいなー!私も混ぜて―!」
部長は俺の自室の台所から、まるで自分の所有物のように、食器とハシを持ってくる。
「いだきまーす!うん、おいしい!」
鍋を完食した後、俺は先輩に訪ねる。
「それで、今日はどんなご用件で?」
「うん、実はさ、町内会から、清掃のボランティアの依頼があってね、それで、アンタたちどうする?」
部長の提案を竹田が嘲笑する。
「ハッ!世界の終末が迫ってるのに、わざわざゴミ拾いするとか、町内会の奴ら、いったい何が楽しくて人生、生きてるんですかねェ!俺は不参加で!」
「じゃあ、ホントに、今年の文化祭で無料配布する同人誌は山神×竹田でいくわよ...!」「竹田ァ!ここは大人しく、部長の言う通りにしたほうがいい!俺と竹田の同人誌が、全校生徒に無料配布されたら、全校生徒がそのあまりの気持ち悪さに絶望して、パブリックモンスターになっちまうかもしれん!」
「......そうだな...‼そんじゃあ、俺と山神も参加で、そんで場所と日時と、あと、おやつはOKですか?」
「部室に、清掃ボランティアについての書類があるから、ちょっとこっち来なさい」
俺と竹田は部長と共に、『アルティメットメディアクリエイター部』の部室に入る。
部室には、副部長の、杉原ヒカリが喪服姿で、机の上に置いてある、遺影を前に号泣していた。
「部長。副部長、家族に不幸でもあったんですか...?」
「いいえ、アレをよく見なさい」
机の上に置いてある遺影にはアニメキャラクターの顔写真が映っていた。
「なんだ、心配して損した...」
「きのう、亡くなったらしいわ...」
部長がハンカチで目を押さえる。
「アンタも同類かよ...」
「山神ィ...俺、コイツら、見てると、なんだか頭、痛くなってくるんだよな...」
「お前にソレ言われたら、おしまいだよ...」
俺もなんだか、頭が痛くなってきた気がする。
次回予告 風見マイカ その2
『パブリックブレイク現象』とは。
ストレスの積み重ねによって、普通の社会人がある日、突然、発狂して怪物や異能者になってしまう現象の事である。
政府は、このパブリックブレイク現象で怪物もしくは、異能者になってしまった人間を、『パブリックモンスター』と命名した。
俺とヨシノが頑張って人間に戻したレオンがPGS(パブリックガーディアンズ)の霧原カイトに捕まってしまった。
どうやら、パブリックモンスターとして、数々の悪行を重ねてきたレオンには支援者がいたらしい。
そして、レオンはPGSで処刑されてしまうらしい。
まぁ、仕方がない、レオンはパブリックモンスターの力で、自分の両親や、大勢の人間を殺してしまったのだから。
しかし、それなら、俺とヨシノの努力はいったい何だったのだろうか。
俺は学生寮の自室に戻る。
隣の部屋に住んでいる竹田が、なぜか俺の部屋で鍋を食っていた。
「おまえ、どうして、ここにいるんだよ!」
「お前、俺が鍋食ってるの見てわかんねぇのか!眼科行ってこいバカ野郎!」
時計を見る限り、今はまだ、授業中のはずだ。
「お前なァ!」
「ムサシ、お前、腹、減ってるんだろ?お前も食えよ...」
竹田が台所から、まるで自分の所有物のように、俺の分のお椀とハシを持ってくる。
「ほれ、食え」
「言っとくけど、それ、俺の食器とハシだからな!いただきます!うん、おいしい」
竹田が俺のお椀に牛肉を入れてくる。
「ほれ、遠慮せずに、もっと肉、食え、肉を」
「あんがと。でも、なんだよ、いきなり、優しくしやがって...変な奴」
「俺さ、思い出したんだ、アキちゃんがパブリックモンスターになったときに...」
「なにを?」
「パブリックモンスターになった俺を、お前が人間に戻してくれたことだよ...」
「そっか」
「今日の鍋は、そのお礼だよ」
「にしても、この鍋、牛肉とか、カニとか、カキとか、すげぇ豪華だな!お前、結構、金持ってるんだな!」
「バカ野郎!この鍋の食材は全部、俺がスーパーでムァンビキしてきたんだぞォ!」
「バカはお前だ!バカ野郎!」
「パブリックブレイク現象のせいで、労働者が激減しているせいか、どのスーパーも店員の数が、少なくてな、楽勝だったよ」
「まぁ、そうなっちまうよな、『無期限・食糧配給制度』のおかげで、人類が滅びるまでの間は、お金がなくても、食べるご飯に困らないからな、そりゃ、みんな働かなくなるよな...」
「ああ、そのうち、スーパー自体も潰れるかもしれん、お前もムァンビキするなら、今の内だぞ...」
「するか、ボケェ!」
背後から聞き覚えのある声がする。
「相変わらず、君たちは仲がいいわね、そうだ!今年の文化祭で無料配布する同人誌は山神×竹田でいこう!」
「部長!」
俺の後ろにいたのは、俺と竹田が所属している部活動、『アルティメットメディアクリエイター部』の部長、風見マイカだった。
ちなみに、『アルティメットメディアクリエイター部』とは、アルティメットなメディアをクリエイターする部活動である。
わかりやすく言えば、なんでもアリの自由な部活である。
「部長!俺と竹田で、かけ算するの、やめてくれませんか!」
竹田も部長に抗議する。
「そうだァ、ごはん中に、不衛生なことをいうのはやめろォ!」
「つーか、アンタたち随分と、うまそうなもん、食ってるわよねーいいなー!私も混ぜて―!」
部長は俺の自室の台所から、まるで自分の所有物のように、食器とハシを持ってくる。
「いだきまーす!うん、おいしい!」
鍋を完食した後、俺は先輩に訪ねる。
「それで、今日はどんなご用件で?」
「うん、実はさ、町内会から、清掃のボランティアの依頼があってね、それで、アンタたちどうする?」
部長の提案を竹田が嘲笑する。
「ハッ!世界の終末が迫ってるのに、わざわざゴミ拾いするとか、町内会の奴ら、いったい何が楽しくて人生、生きてるんですかねェ!俺は不参加で!」
「じゃあ、ホントに、今年の文化祭で無料配布する同人誌は山神×竹田でいくわよ...!」「竹田ァ!ここは大人しく、部長の言う通りにしたほうがいい!俺と竹田の同人誌が、全校生徒に無料配布されたら、全校生徒がそのあまりの気持ち悪さに絶望して、パブリックモンスターになっちまうかもしれん!」
「......そうだな...‼そんじゃあ、俺と山神も参加で、そんで場所と日時と、あと、おやつはOKですか?」
「部室に、清掃ボランティアについての書類があるから、ちょっとこっち来なさい」
俺と竹田は部長と共に、『アルティメットメディアクリエイター部』の部室に入る。
部室には、副部長の、杉原ヒカリが喪服姿で、机の上に置いてある、遺影を前に号泣していた。
「部長。副部長、家族に不幸でもあったんですか...?」
「いいえ、アレをよく見なさい」
机の上に置いてある遺影にはアニメキャラクターの顔写真が映っていた。
「なんだ、心配して損した...」
「きのう、亡くなったらしいわ...」
部長がハンカチで目を押さえる。
「アンタも同類かよ...」
「山神ィ...俺、コイツら、見てると、なんだか頭、痛くなってくるんだよな...」
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俺もなんだか、頭が痛くなってきた気がする。
次回予告 風見マイカ その2
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