上 下
221 / 391

山下テツヤ その6

しおりを挟む
山下テツヤ その6

先輩のために桜原カエデを殺すことを決心した俺は、校内でも成績優秀・素行不良で有名な科学部部長の野村に爆弾の制作を依頼した。
俺と先輩の目の前で起きた非現実的な現象を聞いた野村は、爆笑すると同時に自らをカエデ爆破実行日に同行させることを条件に、爆弾制作の依頼を受けてくれた。
「にしても、山下、さっき聞いた話が本当ならお前、ホントバカだよな」
「どの辺の話ですか?さっきの話において該当するバカが多すぎて一つに絞り切れない」「だから、部室の床下におっさん埋めた話、それは別に僕に話さなくてもよかったんじゃないか?僕が警察にバラしたら、どうするつもりなんだ?」
「俺はただ、野村に協力してもらうために、ちゃんと事実を包み隠さず話すべきだと思っただけだ」
「なるほど、誠意ってやつか、実にくだらん。あと、西村アサリなる女とヤった話、アレも話す必要あったか?正直、ちょっとイラついたし、なんかイラついた俺自身にもイらついた」
「それも、だから...その...誠意ってやつだよ...」
「勝手に僕の言葉を引用するな、あと僕は一応お前の先輩だ、せめて、名前を呼ぶときは『さん』をつけろ、はい!いち!にぃ!『さん』!」
そう、野村は校内でもトップクラスに背が低い、だから俺もつい、野村を呼び捨てで呼んでしまったのだ。
「野村...さん...」
「ということで山下研究員、僕は腹が減った、コンビニでなにか適当に食えるもん買ってきてくれ」
「もうすぐ、給食の時間じゃあ...」
「あのなァ山下研究員、俺はバイトして自費で給食費を払っているんだ、給食を食うか食わないかの選択肢は俺にある、アンダースタンド?」
「アンダースタンド、野村研究員、今からコンビニに買出しに行ってきます!」
「いい返事だ」
俺は野村に敬礼をして、そのまま、科学部の部室を出た。
まったく、俺はいつから、研究員になったのか...。
俺がこの高校に入学した当時から、野村は有名人だった。
背が低くて、頭が良くて、素行が悪い。
授業をサボり、校舎の電気を一斉に停電状態にさせ、野村の顔をみた女子生徒が数人が救急車で運ばれ、野村が科学部の部長になってから、近隣の山が爆発音が数回聞こえ、その数日後に近所の暴走族のバイクが一斉に爆発して、暴走族のメンバーが全員亡き人になってしまった、などなど。
まさに、校内一頭が切れる狂人である。
入学当時、部活動見学の際に野村は俺に語った。
『語らねばなるまい、あの暴走族達の末路のことを...あの暴走族たちは俺よりIQが低いくせに、深夜の川でドジョウを密漁した帰りに俺をバイクで囲んで暴行の後に、当時所持していた金銭を根こそぎ奪いやがった...だから粛正した、ちなみにドジョウは水槽に一週間ぐらい入れておくと泥を吐くぞ、この時大事なのはせっかく吐いた泥をドジョウが体内に入れてしまわないようにだな、しょっちゅう水換えをしなくちゃならん』
暴走族も深夜の密漁者も共に逮捕されてしまえ、と俺は思った。
まぁ、前者はすでに亡き者と化してしまったわけだが。
俺はコンビニで野村と自分の分の昼飯を買って、一度、超能力研究部の部室に戻った。
部室内で先輩は、また、おっぱじめていた。
テーブルには血の付いたカッターナイフ。
先輩の右手首からは軽い出血。
先輩が部室内の壁に書いたと思われる大量の断罪者(社会不適合者))特有の意味不明なイラスト↓。
『鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤
鬤鬤■■■■■■■■■鬤鬤■■■■■■■■■鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■
鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤
鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤
鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤
鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤
鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤■鬤鬤鬤鬤鬤
鬤鬤■■■■■■■■■鬤鬤■■■■■■■■■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤
鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤■鬤鬤鬤鬤鬤
鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤
鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤
鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤
鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■鬤
鬤鬤■■■■■■■■■鬤鬤■■■■■■■■■鬤鬤■鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤■
鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤』
一瞬気が狂いそうになって叫びだしてしまいそうになったが、よく考えれば、俺も先輩も、もうすでに気が狂っているのだから、なんともないぜ。
俺は一度、深呼吸をして、冷静になる。
先輩は部室のクッションで仰向けに寝た状態で天井を見ながら、小学校低学年が好きそうな替え歌を放心状態のまま歌っている。
俺はその横で、黙々と、黙々と昼食を摂る。
昼食を食い終えた俺は、なにもかも見なかったことにして野村の待つ科学部に戻る。
科学部の部室に戻った俺は、机に野村の昼食が入ったコンビニ袋をおいて、近くにあった椅子に腰を下ろす。
「遅い」
「ちょっと超能力研究部の部室に行ってまして...」
「なんだ、また例の先輩と不純異性交遊に励んでいたのか」
「いえ、なんか放心状態のまま天井を見ながら歌を歌ってました」
「ほう、それは重症だな」
アンタにそれを言われたらおしまいだと俺は思った。

次回予告 山下テツヤ その7
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

美咲の初体験

廣瀬純一
ファンタジー
男女の体が入れ替わってしまった美咲と拓也のお話です。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...