超地球救済戦記 真ダンザイオーΩ〈オメガ〉戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!愚かな人類は身長170cm以下の無職童貞ニートの俺が滅亡させる

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梅原ノリオ その2

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梅原ノリオ その2

次の日、梅原ノリオとキヌさんが再びリンクセンター石間を訪れた。
「次の面談が案外早くて本当に助かりました...」
「それで、ノリ君の調子はどうでした?」
「昨日は家に帰ってからノリオにずっと家にいるようにちゃんと注意しておきました」
キヌさんの隣に座っているノリオ君は不服そうな顔をしていた。
「ノリオ君がなにか言いたそうですが...」
ノリオが口を開く。
「昨日の天気は快晴でした、僕は昔から青い空を見ると、どう表現していいのかわからないんですけど、なんかウズウズしちゃうんですよね」
「また鳥になって青空を自由に飛び回りたくなった?」
「ええ、何もかも脱ぎ去って、僕は自由になりたいんです。だから僕にとって服を着て歩くということは社会性とか常識という名のヨロイを身にまとって歩いているようなものなんです。つまり、僕はそういったつまらない固定観念と同調圧力に支配されているかわいそうな人たちの前で服を全部脱いで、『僕はお前らとは違うんだぞー!』って周りにアピールしたいんです」
「なるほど、君はこの社会が嫌いなんだね?」
「嫌いではないです、でも僕は今まで、お母さんとお父さんの言うことを聞いて生きてきました」
「キヌさん、ノリオ君に反抗期はありましたか?」
「うちのノリオは他のダメな子とは違いますから、親に反抗したことなんて一度もありません」
「なるほどね、ノリオ君が公務員として働く正常な社会人から、ある日、突然、みんなの前で服を脱ぐようになってしまった原因は間違いなく、ノリオ君のお母さんとお父さんの影響でしょうね」
「そんなのでたらめよ!私はノリオに一度も人前で服を脱げと命令したことはありません!」
「命令ね...。キヌさんね、そういうことじゃないんです、わかりやすく言えば、ノリオ君はパンクしちゃったんですよ」
「パンク...?」
「あなた達両親がノリオ君に完璧を求めることで、ノリオ君は両親の言うことが絶対に正しいと思うようになってしまった、そうすることでノリオ君は自分にとって何が正しいのかわからなくなってしまった。両親の教えか、それとも自分の判断、どちらが正しいのかわからなくなりパンクしてしまったノリオ君は全てを捨てる、つまり服を脱ぐことで、自分自身の葛藤から自分自身を解放しようとしたんです」
「私たち親がノリオのためを思ってしたことが、ノリオを追い詰めて露出狂にしてしまったということですか?」
「その通りです、両親の命令が絶対であると信じ続けて成長したノリオ君は自分の正しいと思うことを正しいと思うことができなくなってしまった。だからノリ君は全てを、つまり社会性と常識を象徴する衣服の着用というルールを破り、衣服を脱ぎ去ることで自由になろうとした、つまり『悩む』という行為から現実逃避しようとしたんです」
「それでは、私たち親のしたことは全部、無駄だったということですか?」
「無駄ではありませんよ、ただ、その影響でノリオ君が最終的に出した結論が大勢の人の前で服を脱いで全裸になるという判断であっただけです」
「では、ノリオはこれからいったいどうなるんですか?」
「まず、ノリオ君をあなた達から解放してあげてはどうでしょうか?」
「ノリオを解放?」
「ええ、ノリオ君にはこれかから外の代わりに室内で全裸で生活してもらったほうがいいでしょう」
「それはいったいどういう意味ですか?」
「まず、全裸で生活するノリオ君、つまり本当のノリオ君を両親が認めてあげることが大切だと俺は思います。そうすることで、ノリオ君は自分を否定せずに、今の自分自身が両親に認められている安心感を抱くことができます」
「それでは、そちらのほうでは、もうノリオを正常に戻すことができないということでしょうか?」
「正常も異常も、今のノリオ君はノリオ君のままです。ノリオ君はあなた達のゆがんだ教育方針により、露出狂になってしまった、ただ、それだけです」
「じゃあ、ノリオが外でまた服を脱ぎ始めたら、私たちはいったいどうすればいいんですか?」
「自宅でノリオ君を全裸のままで生活させる、コレにはガス抜き、つまりストレス解消の目的があります。今のノリオ君には本当の自分をだれかに理解してもらうこと、認めてもらうことが大事だと俺は思ってます。ストレスを一時的に解消する癖がつけば、ノリオ君は外で服を脱ぐのをやめるかもしれません」
「しれません...ってあなたたちの仕事はノリオのような断罪者を社会に復帰させることじゃないんですか?」
「おっしゃる通りですが、まず最初に露出狂のノリオ君をノリオ君にとっていちばん大切な、あなた達両親がちゃんと受け入れて認めてあげるのが、ノリオ君を正常にもどす近道です」
「では、今回はそちらでできることは何もないということですか?私たちはもうすでにお金をそちらに払ったんですよ!」
「わかりやすく言えば、ノリオ君には狂撃波動を脳内にぶつける必要がないということです、そして先程のアドバイスが、我々がご依頼主様にできる最大限の努力だと思っていただければ幸いです」
「それでは困ります、ノリオがまた服を脱いで近所の人々に迷惑をかけたら、いったいどうしてくれるんですか?」
「どうもこう、外出の際に、ご両親のどちらかが付き添えばいいだけの話です」
「それでも、ノリオが言うことを聞かない場合はどうすればいいんですか?」
ノリオ君がいきなり服を脱いで全裸になる。
「お母さん、これが本当の僕です...」
「ノリオ...」
「ノリオ君、今度から服を脱ぐのは自宅内だけにする、外では絶対に服を脱がない、この約束が守れるかな?」
「その約束を守れなかったらどうなるんですか?」
「断罪者収容所に入ってもらうことになる」
「断罪者収容所?」
「断罪者収容所っていうのは、わかりやすく言えば、断罪者(社会不適合者)が入る刑務所のことだ。ノリオ君がいくら足に自信があっても警察に捕まれば、断罪者収容所に入ることになってしまうよ」
「嫌だ!僕は刑務所なんかに入りたくない!」
「なら俺との約束を守ってくれるかな?」
「はい、でも、お母さんとお父さんが、『今』の僕を受け入れてくれるでしょうか?」
「キヌさん、『今』のノリオ君を受けて入れられますか?」
「夫と共に努力してみます...」
「狂撃波動をノリオ君に直撃させれば、一時的にノリオ君はまともになります、しかし、ご両親が『今』のノリオ君を受け入れることができなければ今回の件を解決することは不可能でしょう。俺はぜひ、ご両親にもノリオ君と一緒に変わってくれることを願っています」
衣服を着用したノリオ君と共に母親のキヌさんがリンクセンター石間を去った。
俺の隣で奈良見ルナがつぶやく。
「石間さん...子育てって大変なんですね...」
「ああ、だから俺は絶対に結婚なんてしないし、子どもも作らない」
「石間さんは、そのほうがいいと思いますよ」
「なんか腹立つな」
その後、ノリオ君は務めていた役所を休職した。
それから一ヶ月の間、露出狂が県内に現れることはなかった。

次回予告 伊倉アキオ その1
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