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第五十一話 超地球救済戦記!断罪王Z〈ゼット〉‼断罪王Z 対 断罪王A〈アビス〉非正規雇用者をバカにする専業主婦は鉛筆の削りカスでも食ってろ
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●あらすじ
ある日突然、謎の美少女メシアによって神に等しき力、断罪王を与えられた26人の社会不適合者。
つまり、断罪王の神に等しき力で世界を支配できるのはたった一人だけなのだ!
これは神に等しき力を持つ26人の選ばられし社会不適合者達が世界でたった一人の神になり世界を支配するために殺し合うサバイバルストーリーである!
*
第五十一話 超地球救済戦記!断罪王Z〈ゼット〉‼断罪王Z 対 断罪王A〈アビス〉!いい歳した非正規雇用者をバカにする専業主婦は鉛筆の削りカスでも食ってろ!
その日、二十五人の社会不適合者の前に一人の美少女が現れこう告げた。
『二十六番目の断罪王が覚醒した瞬間、終末黙示録の封印が解かれ、この世界でたった一人の神を決める断罪王同士の戦いが始まる』と。
*
俺の名前は暴田リキ。
道を歩いていると、前を歩いている人の背中を蹴りたくなることがよくある。
俺はそのたびに自分を抑える努力をしてきたが、もう我慢できなかった。
スーパーのバイト中に買い物中の客の背中を蹴り倒したせいで俺はなぜかクビになった。
俺は泣きながらどうして自分がバイトをクビにならないといけないのか担当者に必死に訴える。
担当者はまるで俺が全部、悪いみたいなことを言って俺を店から追い出した。
なぜ、俺がこのようなひどい目に遭わなくてはならないのか?
俺はただ、自分の本能に従ってお客さんの背中を蹴り倒しただけなのに...!
たしかに人に暴力を振るうことはよくないと、両親と学校の先生は言っていた。
でもそれは、両親や学校の先生の価値観であり、俺の価値観ではない。
人に暴力を振ってはならない、それは俺以外のみんなが共有している価値観。
特に理由もなく突然、人に暴力を振りたくなる、これが俺の価値観。
つまり、みんなと違う価値観を持った俺はとても可哀想なのだ。
なのに、俺が学校や会社やバイト先で人々に暴力を振るうたびに、みんなは可哀想な俺を否定して集団社会から無理矢理、追い出した。
俺がみんなと価値観が違う、ただそれだけの理由で。
じゃあ、俺はこれからどうやって生きていけばいいのか。
みんなと価値観が違うという理由だけでなぜ、俺は飢え死にしなければならないのか?
だってそうだろ?みんなと同じ価値観を共有できない奴はバイトや会社をクビになるしかない。
それはつまり、俺は産まれたときからすでに将来、社会に適応できずに飢え死にすることが決まっていたということだ。
深夜、俺を集団社会から追い出した人間たちの言葉と未来への不安に押しつぶされそうになった俺は家を出た。
深夜の公園では美少女が不良達に絡まれていた。
不良に絡まれている美少女は恐怖で目から涙を流している。
「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
俺は不良たちに絡まれている美少女に襲い掛かる。
「きゃあああッ!」
不良たちは美少女に襲い掛かる僕を止めようとする。
「おい、お前!そんなことしたら美人の顔に傷がついちまうだろうがよ!」
「うるせぇよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
俺は不良たちの制止を振り切って美少女の顔を殴り続ける。
「あ~あ、せっかくかわいい女の子見つけたのに、これじゃあ台無しだな、帰ろうぜ」
顔面青痣だらけで白目を剝いて気絶した美少女を見た不良たちが残念そうにため息を吐くと、公園から出て行こうとする。
「待てよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
俺は怒声を放ちながら不良たちに襲い掛かる。
俺の右拳を不良達の一人が受け止める。
「なんだコイツ!お前の目当ては女じゃなかったのかよぉぉッ!」
「俺は...俺はただ暴力が振いたいだけなんだよぉぉぉぉぉッ!」
俺は左手でチョキを作ると人差し指と中指を不良の両目に突き刺す。
「うぐぅああああああああッ!痛ぇよぉッ!」
「おい、てめぇ!いくらなんでも目はルール違反だろうがよッ!」
「そうだ!卑怯だ!」
不良たちが俺に意味不明な言葉をぶつけてくる。
「うるせぇぇぇぇッ!ケンカにルールがあんのかよ!バカ野郎共がぁぁぁぁぁッ!」
俺の暴言に不良たちが一斉に襲いかかってくる。
そうだ!これが人のあるべき姿だ!本能のままに争い、奪い、憎しみ合う。
これが人の真実だ!どんな綺麗ごとて塗り固めた価値観で人々を統制したところで、人々が生まれ時に神から授けられた暴力衝動をなくすことはできない。
暴力こそが人の真実の姿なのだ!
「おいお前ら!よく聞いとけよ!俺の価値観は間違ってないんだよ!暴力は神がこの世界に生まれてきた人間達に唯一平等に与えた才能なんだよ!」
不良たちは俺の持論を無視して、四方八方から俺を殴ったり蹴ったりしてくる。
「そうだ!俺達は今、最高に人間らしい生き方をしているんだ!暴力最高!」
地面に蹴り倒された俺は地面の砂をつかむと、周囲の不良たちの顔に向かって振りまく。
そして一瞬の隙をついて不良たちの一人の首を絞める。
「お、お前!卑怯だぞ!俺を人質にするつもりだな!」
「そんなわけねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
俺は不良の首を絞める手に思いっきり力を入れる。
数秒後、俺に首を絞められた不良が全身を弛緩させ、地面に仰向けに倒れる。
「コ、コイツ!こ、殺しやがった!」
「言っただろ!ケンカにルールはねぇってよぉッ!やるんなら命がけ...だろ?」
「こ、こいつをみんなで取り押さえるぞ!そんで警察を呼んじまえば俺たちの勝ちだ!」
不良たちのリーダーと思しき男の言葉に従って、周りの不良たちが俺に襲い掛かる。
俺は両手で不良二人の首をわしづかみにすると、両手に思いっきり力を込める。
深夜の公園に首の骨が折れる音が鳴り響く。
新たに増えた犠牲者に周りの不良たちが動きを止める。
「いいこと教えてやるよ!警察が来るまでにお前たちは全員俺に殺されるんだよぉッ!」
俺の驚異的な握力に恐れをなした不良たちが一斉に公園から逃げていく。
公園に倒れている奴らから財布を奪うと俺は全速力で走りながら不良を追いかける。
「俺の暴力はまだ終わっちゃいねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
俺は走りながら悲鳴を上げながら逃げる不良たちに向かって怒鳴る。
「おいよぉ!お前たちがなんでこの世界に生まれてきたのか知ってるかぁぁぁぁぁッ!」
俺は一番足の遅い不良の背中に飛び蹴りを直撃させる。
そして、そいつの耳元で大声で怒鳴る。
「お前たちがこの世界に生まれてきたのはなァッ!今日、俺に暴力で殺されるためだぁぁぁぁッ!」
よく見ると、俺の飛び蹴りで転倒した不良の頭部から流れた血液をコンクリートの地面に赤いシミを作っている。
「あと三人...あと三人だァァァァァァッ!」
パトカーのサイレンの鳴る音が深夜の街路に響き渡る。
パトカーのサイレンの音に急に正気に戻った俺は臆病な自分に情けなさを感じつつも、家に帰ることにした。
「おめでとうございます、あなたは地球の意思に終末を司る二十六番目の断罪王に選ばれました」
深夜の道を歩いているとパーカーを着たつばの長い帽子をかぶった美少女が話しかけてきた。
「なんだお前!」
「私の名はメシア。これをどうぞ」
メシアが俺に一冊の本を手渡してくる。
「その週末黙示録を読めば、あなたは神に等しき力持つ存在、断罪王になれます。でも、この世界にはあなたのほかにも断罪王の力を持った人間があと二十五人もいます」
「せっかく神様になっても、同じ力を持った神があと二十五人もいたら、全然おもしろくねぇよ!」
「その通りです、もしあなたがこの世界で本当の意味で神になり、この世界を支配したいと望むのであれば、あなたは残り二十五体の断罪王を殺さなくてはなりません」
「なるほど、俺以外の断罪王を全員、殺さないと、俺はこの世界で本物の神様にはなれないってことだな」
「その通りです、ではまたどこかでお会いしましょう。断罪王Z〈ゼット〉」
メシアはそう言い終えると近くのコンビニに停めてある自転車に乗ってどこかへ行ってしまった。
「断罪王Z〈ゼット〉?二十六番目の断罪王...?ああ、そういうことか、二十六ってアルファベット二十六文字のことか!じゃあ、俺が最後の断罪王ってことなのか?でもどういう基準で俺が断罪王に選ばれたのかさっぱりわからん」
三台のパトカーが俺の前で止まる。
警官が俺に怒鳴る。
「お前、公園で暴れていた奴らの一人だな!」
「ふざけんな!俺は公園にも行ってねぇし、だれにも暴力なんか振ってねぇよ!」
「じゃあ、そのズボンのポケットのふくらみはなんだ!公園で発見された遺体の衣服やバッグからは財布が見つからなかった!」
「俺は財布なんか盗んでねぇよ!」
「嘘ついてんじゃねぇと!じゃあ、なんでお前そんなに傷だらけなんだ!とにかくポケットの中を見せてみろ!」
まずい、ポケット中の財布を見られたら俺は警察に捕まってしまう。
俺が警察に人殺しだと知られれば、俺は今まで見たいに自由に他人に大好きな暴力を加えることができなくなってしまう。
メシアの言葉が脳裏をよぎる。
『その週末黙示録を読めば、あなたは神に等しき力持つ存在、断罪王になれます』
断罪王に...断罪王Z〈ゼット〉になるしかないのか!
俺は試しに手に持っている終末黙示録を開く。
それが神々の戦いの始まりを意味していることも知らずに。
わかりやすくいえばこの世界の全てが俺の脳内に流れ込み、全身に浸透していく。
俺は自分でも不思議に思えるくらい、なんの疑問も抱かずに、断罪王変神の呪文の言葉に口から発していた。
「シンゴォォォォォォォォーッ!」
俺の衣服は粉々に破れ、筋肉が膨張し、皮膚を鋼鉄の装甲が覆い、全身が巨大化する。
銀色のボディが特徴的な断罪王Zに変神した俺の足元で警察官が地面に尻もちをついて驚愕している。
そして、終末を司る二十六番目の断罪王が覚醒した瞬間、各地で断罪王同士の戦いが発生した。
そして俺の目の前にも朱色のボディが特徴的な断罪王が現れ、パトカーと警察官を踏みつぶす。
「断罪王がもう一人?」
「そんなに驚くなよ、お前もメシアから聞いてるだろ?最後の二十六番目の断罪王が終末目録を開いた時、終末黙示録の封印が解除されて、二十六体の断罪王同士の戦いが始まることを」
「実は俺、その最後の...二十六番目の断罪王なんだよ」
「なるほど、ならメシアがあえて説明しないのにも納得がいくな。俺は深淵を司る断罪王...断罪王A〈アビス〉だ」
断罪王A〈アビス〉が俺に殴り掛かってくる。
「おい!いきなりなにすんだてめぇ!」
「お前も俺と同じで、この世界でたった一人の神になりたいんだろ!だったら戦うしかねぇだろぉッ!」
「俺は...別に神になりたいわけじゃない...!俺はただ、暴力が許されないこの世界で自由に楽しく他人に暴力を振るいたいだけなんだァァァァァッ!」
断罪王Zに変神した俺は断罪王A〈アビス〉の頭を拳で何度も殴る。
断罪王A〈アビス〉の蹴りが断罪王Zの腹部に直撃し、断罪王Zの全身が市街地に倒れ込む。
「なるほど...神なんて興味ねぇってか?おまえ!ぶっ壊れてんなァッ!」
断罪王Zが立ち上がる、市街地からは悲鳴が聞こえる。
「痛ってぇなァァァッ!でも!そうだ!これだァァァァッ!もっと!もっと!もっと!もっと!もっと!暴力を楽しもうぜぇぇぇぇッ!」
断罪王Zと断罪王A〈アビス〉の拳が激突する。
激突した拳から放たれた衝撃波が市街地を爆炎に包む。
戦いはまだ始まったばかりである。
次回予告 第五十二話 断罪王Z 対 断罪王B〈ブラスト〉!いい歳したアルバイトをバカにする専業主婦は白飯に消しカスでもぶっかけて食ってろ!
ある日突然、謎の美少女メシアによって神に等しき力、断罪王を与えられた26人の社会不適合者。
つまり、断罪王の神に等しき力で世界を支配できるのはたった一人だけなのだ!
これは神に等しき力を持つ26人の選ばられし社会不適合者達が世界でたった一人の神になり世界を支配するために殺し合うサバイバルストーリーである!
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『二十六番目の断罪王が覚醒した瞬間、終末黙示録の封印が解かれ、この世界でたった一人の神を決める断罪王同士の戦いが始まる』と。
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道を歩いていると、前を歩いている人の背中を蹴りたくなることがよくある。
俺はそのたびに自分を抑える努力をしてきたが、もう我慢できなかった。
スーパーのバイト中に買い物中の客の背中を蹴り倒したせいで俺はなぜかクビになった。
俺は泣きながらどうして自分がバイトをクビにならないといけないのか担当者に必死に訴える。
担当者はまるで俺が全部、悪いみたいなことを言って俺を店から追い出した。
なぜ、俺がこのようなひどい目に遭わなくてはならないのか?
俺はただ、自分の本能に従ってお客さんの背中を蹴り倒しただけなのに...!
たしかに人に暴力を振るうことはよくないと、両親と学校の先生は言っていた。
でもそれは、両親や学校の先生の価値観であり、俺の価値観ではない。
人に暴力を振ってはならない、それは俺以外のみんなが共有している価値観。
特に理由もなく突然、人に暴力を振りたくなる、これが俺の価値観。
つまり、みんなと違う価値観を持った俺はとても可哀想なのだ。
なのに、俺が学校や会社やバイト先で人々に暴力を振るうたびに、みんなは可哀想な俺を否定して集団社会から無理矢理、追い出した。
俺がみんなと価値観が違う、ただそれだけの理由で。
じゃあ、俺はこれからどうやって生きていけばいいのか。
みんなと価値観が違うという理由だけでなぜ、俺は飢え死にしなければならないのか?
だってそうだろ?みんなと同じ価値観を共有できない奴はバイトや会社をクビになるしかない。
それはつまり、俺は産まれたときからすでに将来、社会に適応できずに飢え死にすることが決まっていたということだ。
深夜、俺を集団社会から追い出した人間たちの言葉と未来への不安に押しつぶされそうになった俺は家を出た。
深夜の公園では美少女が不良達に絡まれていた。
不良に絡まれている美少女は恐怖で目から涙を流している。
「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
俺は不良たちに絡まれている美少女に襲い掛かる。
「きゃあああッ!」
不良たちは美少女に襲い掛かる僕を止めようとする。
「おい、お前!そんなことしたら美人の顔に傷がついちまうだろうがよ!」
「うるせぇよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
俺は不良たちの制止を振り切って美少女の顔を殴り続ける。
「あ~あ、せっかくかわいい女の子見つけたのに、これじゃあ台無しだな、帰ろうぜ」
顔面青痣だらけで白目を剝いて気絶した美少女を見た不良たちが残念そうにため息を吐くと、公園から出て行こうとする。
「待てよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
俺は怒声を放ちながら不良たちに襲い掛かる。
俺の右拳を不良達の一人が受け止める。
「なんだコイツ!お前の目当ては女じゃなかったのかよぉぉッ!」
「俺は...俺はただ暴力が振いたいだけなんだよぉぉぉぉぉッ!」
俺は左手でチョキを作ると人差し指と中指を不良の両目に突き刺す。
「うぐぅああああああああッ!痛ぇよぉッ!」
「おい、てめぇ!いくらなんでも目はルール違反だろうがよッ!」
「そうだ!卑怯だ!」
不良たちが俺に意味不明な言葉をぶつけてくる。
「うるせぇぇぇぇッ!ケンカにルールがあんのかよ!バカ野郎共がぁぁぁぁぁッ!」
俺の暴言に不良たちが一斉に襲いかかってくる。
そうだ!これが人のあるべき姿だ!本能のままに争い、奪い、憎しみ合う。
これが人の真実だ!どんな綺麗ごとて塗り固めた価値観で人々を統制したところで、人々が生まれ時に神から授けられた暴力衝動をなくすことはできない。
暴力こそが人の真実の姿なのだ!
「おいお前ら!よく聞いとけよ!俺の価値観は間違ってないんだよ!暴力は神がこの世界に生まれてきた人間達に唯一平等に与えた才能なんだよ!」
不良たちは俺の持論を無視して、四方八方から俺を殴ったり蹴ったりしてくる。
「そうだ!俺達は今、最高に人間らしい生き方をしているんだ!暴力最高!」
地面に蹴り倒された俺は地面の砂をつかむと、周囲の不良たちの顔に向かって振りまく。
そして一瞬の隙をついて不良たちの一人の首を絞める。
「お、お前!卑怯だぞ!俺を人質にするつもりだな!」
「そんなわけねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
俺は不良の首を絞める手に思いっきり力を入れる。
数秒後、俺に首を絞められた不良が全身を弛緩させ、地面に仰向けに倒れる。
「コ、コイツ!こ、殺しやがった!」
「言っただろ!ケンカにルールはねぇってよぉッ!やるんなら命がけ...だろ?」
「こ、こいつをみんなで取り押さえるぞ!そんで警察を呼んじまえば俺たちの勝ちだ!」
不良たちのリーダーと思しき男の言葉に従って、周りの不良たちが俺に襲い掛かる。
俺は両手で不良二人の首をわしづかみにすると、両手に思いっきり力を込める。
深夜の公園に首の骨が折れる音が鳴り響く。
新たに増えた犠牲者に周りの不良たちが動きを止める。
「いいこと教えてやるよ!警察が来るまでにお前たちは全員俺に殺されるんだよぉッ!」
俺の驚異的な握力に恐れをなした不良たちが一斉に公園から逃げていく。
公園に倒れている奴らから財布を奪うと俺は全速力で走りながら不良を追いかける。
「俺の暴力はまだ終わっちゃいねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
俺は走りながら悲鳴を上げながら逃げる不良たちに向かって怒鳴る。
「おいよぉ!お前たちがなんでこの世界に生まれてきたのか知ってるかぁぁぁぁぁッ!」
俺は一番足の遅い不良の背中に飛び蹴りを直撃させる。
そして、そいつの耳元で大声で怒鳴る。
「お前たちがこの世界に生まれてきたのはなァッ!今日、俺に暴力で殺されるためだぁぁぁぁッ!」
よく見ると、俺の飛び蹴りで転倒した不良の頭部から流れた血液をコンクリートの地面に赤いシミを作っている。
「あと三人...あと三人だァァァァァァッ!」
パトカーのサイレンの鳴る音が深夜の街路に響き渡る。
パトカーのサイレンの音に急に正気に戻った俺は臆病な自分に情けなさを感じつつも、家に帰ることにした。
「おめでとうございます、あなたは地球の意思に終末を司る二十六番目の断罪王に選ばれました」
深夜の道を歩いているとパーカーを着たつばの長い帽子をかぶった美少女が話しかけてきた。
「なんだお前!」
「私の名はメシア。これをどうぞ」
メシアが俺に一冊の本を手渡してくる。
「その週末黙示録を読めば、あなたは神に等しき力持つ存在、断罪王になれます。でも、この世界にはあなたのほかにも断罪王の力を持った人間があと二十五人もいます」
「せっかく神様になっても、同じ力を持った神があと二十五人もいたら、全然おもしろくねぇよ!」
「その通りです、もしあなたがこの世界で本当の意味で神になり、この世界を支配したいと望むのであれば、あなたは残り二十五体の断罪王を殺さなくてはなりません」
「なるほど、俺以外の断罪王を全員、殺さないと、俺はこの世界で本物の神様にはなれないってことだな」
「その通りです、ではまたどこかでお会いしましょう。断罪王Z〈ゼット〉」
メシアはそう言い終えると近くのコンビニに停めてある自転車に乗ってどこかへ行ってしまった。
「断罪王Z〈ゼット〉?二十六番目の断罪王...?ああ、そういうことか、二十六ってアルファベット二十六文字のことか!じゃあ、俺が最後の断罪王ってことなのか?でもどういう基準で俺が断罪王に選ばれたのかさっぱりわからん」
三台のパトカーが俺の前で止まる。
警官が俺に怒鳴る。
「お前、公園で暴れていた奴らの一人だな!」
「ふざけんな!俺は公園にも行ってねぇし、だれにも暴力なんか振ってねぇよ!」
「じゃあ、そのズボンのポケットのふくらみはなんだ!公園で発見された遺体の衣服やバッグからは財布が見つからなかった!」
「俺は財布なんか盗んでねぇよ!」
「嘘ついてんじゃねぇと!じゃあ、なんでお前そんなに傷だらけなんだ!とにかくポケットの中を見せてみろ!」
まずい、ポケット中の財布を見られたら俺は警察に捕まってしまう。
俺が警察に人殺しだと知られれば、俺は今まで見たいに自由に他人に大好きな暴力を加えることができなくなってしまう。
メシアの言葉が脳裏をよぎる。
『その週末黙示録を読めば、あなたは神に等しき力持つ存在、断罪王になれます』
断罪王に...断罪王Z〈ゼット〉になるしかないのか!
俺は試しに手に持っている終末黙示録を開く。
それが神々の戦いの始まりを意味していることも知らずに。
わかりやすくいえばこの世界の全てが俺の脳内に流れ込み、全身に浸透していく。
俺は自分でも不思議に思えるくらい、なんの疑問も抱かずに、断罪王変神の呪文の言葉に口から発していた。
「シンゴォォォォォォォォーッ!」
俺の衣服は粉々に破れ、筋肉が膨張し、皮膚を鋼鉄の装甲が覆い、全身が巨大化する。
銀色のボディが特徴的な断罪王Zに変神した俺の足元で警察官が地面に尻もちをついて驚愕している。
そして、終末を司る二十六番目の断罪王が覚醒した瞬間、各地で断罪王同士の戦いが発生した。
そして俺の目の前にも朱色のボディが特徴的な断罪王が現れ、パトカーと警察官を踏みつぶす。
「断罪王がもう一人?」
「そんなに驚くなよ、お前もメシアから聞いてるだろ?最後の二十六番目の断罪王が終末目録を開いた時、終末黙示録の封印が解除されて、二十六体の断罪王同士の戦いが始まることを」
「実は俺、その最後の...二十六番目の断罪王なんだよ」
「なるほど、ならメシアがあえて説明しないのにも納得がいくな。俺は深淵を司る断罪王...断罪王A〈アビス〉だ」
断罪王A〈アビス〉が俺に殴り掛かってくる。
「おい!いきなりなにすんだてめぇ!」
「お前も俺と同じで、この世界でたった一人の神になりたいんだろ!だったら戦うしかねぇだろぉッ!」
「俺は...別に神になりたいわけじゃない...!俺はただ、暴力が許されないこの世界で自由に楽しく他人に暴力を振るいたいだけなんだァァァァァッ!」
断罪王Zに変神した俺は断罪王A〈アビス〉の頭を拳で何度も殴る。
断罪王A〈アビス〉の蹴りが断罪王Zの腹部に直撃し、断罪王Zの全身が市街地に倒れ込む。
「なるほど...神なんて興味ねぇってか?おまえ!ぶっ壊れてんなァッ!」
断罪王Zが立ち上がる、市街地からは悲鳴が聞こえる。
「痛ってぇなァァァッ!でも!そうだ!これだァァァァッ!もっと!もっと!もっと!もっと!もっと!暴力を楽しもうぜぇぇぇぇッ!」
断罪王Zと断罪王A〈アビス〉の拳が激突する。
激突した拳から放たれた衝撃波が市街地を爆炎に包む。
戦いはまだ始まったばかりである。
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