妖の街で出会ったのは狐の少年でした

如月 りん

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49話 ぬくもり

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「・・・、!」
仮眠のつもりが思いっきり寝てしまった。
部屋を見ると布団は畳まれていてカズハ様はいなかった。まさか病み上がりで仕事に行ったのか!?
・・・でもミズキ様あたりに止められそう
なんだかすごく世界が回って見える。
めまいか?
そういえば昔体調が良くない時、父が仕事そっちのけで俺の看病してくれてたな。
辛いのに懐かしさを感じでしまう。
立ちあがったら悪化してよろめいて畳にぶつかると思った、瞬間誰かに呼ばれた気がした。

布団をたたみ終わると使いの方が朝食を持って来てくれた。聞くと急な欠席になってもいいように変わりの使いが数人待機しているらしい。普段はナグモさんの仕事の補佐をしているとのこと。朝食をいただき、着物を着て仕事に行くと
「何してるの!?熱が下がったからって病み上がりなんだから部屋に戻りなさい。
今日はそんなにお客様がいないから1日休養。
せ、ん、ぱ、い、め、い、れ、い」
ものすごくミズキさんに怒られた。
しぶしぶ部屋に戻るとロクが起きていた。
声をかけようとしてやめた。よく見ると、青い顔をしていた。いや、青白い?そんなことを思っていると体制が崩れたのか倒れた。
「ロク!」
体が動いていた。ロクが畳に打ちつける前に抱き止めることができた。
(よ、よかった~。間に合って。私って反射神経
いいんだな~。)
でも、どうしよう。
「ちゃんと休んでいるか様子を見にきたんた
けど・・・お邪魔だった?」
タイミングがいいのか悪いのか微妙だが
「違います!誤解ですミズキさん!助けてくだ
さい」
なんとか事情を説明し、ロクを横にすることができた。しかし
「なぜ膝枕ですか?」
「だって、畳だと頭痛いでしょ?カズハの布団に横にしてもいいんだけど、ロクが羞恥心感じそうでしょ?」 
それもそう、なのか?
ミズキさんは仕事に戻っていった。
私の看病で疲れがでたのかな。
・・・疲れ?
ロクは私が仲居をしている間なにをしている。
私に付き合ってくれてるけど、それは
仕事の延長。
誕生日、趣味、将来の夢、好きなものすら知ら
ない。
あたりまえのように誰よりも近くにいてくれた。
距離は近いけど心はお互い壁を隔てているようで。
使いのことを何も知らない私が主でいいのだろうか

学校でも引き取られた家でも煙たがられていた。
心を巣食う闇は日に日に増え、周りを遮断して
生きていた。でも今は違う。元の世界じゃないけど
こんなにもあたたかい人たちに出会えた。
「"沢山の人達に見守られて、
一途に誰かを想える子に成長してほしい"
母さんがよく言っていた言葉だよ。
まぁ、父さんはのびのびと育ってくれたら
他は気にしないが。
流石に気が早いか。なぁ、ーーー」
父さん、母さん、俺は2人の希望通りの道を歩めているでしょうか。
目が覚めると90度傾いた世界になっていた。
頭の位置が少し高い気がする。
それになんか柔らかくて・・・柔らかい!?
起き上がると、同時に現状を理解した。
「あ、気がついた?」
「す、すみません。カズハ様!
俺はなんてことを・・・」
「もう、大丈夫なの?」
覗き込むように聞いてきた。
「あ、はい」
絶対しどろもどろになっただろうな
「ロク」
「はい?」 
「いつもありがとう。これからもよろしくね」
「ええ、カズハ様」
貴方が望む限り俺は貴方に仕えましょう。



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