4 / 100
4話 観光
しおりを挟む
宿屋を出る際、ナグモさんに会ったので観光してくると言った。そしたら楽しんでおいでと言ってくれた。外に出ると早朝とはまた違った景色があった。ロクに妖の街を案内してもらう。昨日行った飲食店の他に、珍しい材料で調合する薬屋、一つ一つの反物が美しい呉服店。いくつになっても心が躍る駄菓子屋のようなお店など。目移りするものばかりだ。
しばらく歩いているとロクが横を歩いていた私を制す。
「ロク?」
「カズハ様、引き返しましょう。」
そういうとロクは私の手を掴み、反対方向へ足早に歩く。しばらく歩き、路地裏に入る。そして静かに私を隠すように壁に覆い被さる。ロクは静かに深呼吸を繰り返している。緊迫しているのが嫌というほど感じる。数秒かもしれない。でも
かなり時間が経っているように感じる。私の頭は混乱でいっぱいになり目線を横に流す。するとロクの耳がピクッと動き、そしてため息をつき、私から離れる。私は緊張の糸が切れ、その場に座り込んでしまった。
「いきなりすみませんでした。大丈夫ですか?」
そう言って手を差し出す。私が手を取ると立たせてくれた。表に出て、観光の続きをしようとロクは言ったが、私はそんな気分ではなくなってしまったので、言葉を濁してしまった。ロクは
「ここで少し待っていてください」
と言って近くのお店に入って行ってしまった。
俺はカズハ様に断りを入れ、店に入る。ここは昔からある妖力を込めることができる簪。この街は人間を歓迎する。でも、他の街はそうとも限らない。いずれは国中に広がるだろう。
さっき感じた気配、あれは確かにこの街とは異なるものだった。考えたくはないが、万が一のためにカズハ様につけてもらおう。最後の切り札を使うかはカズハ様が決めることだ。俺は、菫色の蝶の飾りがついた簪を買った。何故か会計する時、店主が気色悪い笑みを浮かべていた。俺は店を出る前に仮面を浮かせて蝶の羽に唇を落とし、力を込める。
「お待たせしてすみません」
ロクは5分ほどで戻ってきた。手には簪が握られていた。
「ロク、それは?」
私は簪を指さす。飾りがとても綺麗だった。ロクは一瞬固まり、
「カズハ様は明日から、うちで仲居をするのですよ?失礼ですが、髪を留めるものは持っているんですか?」慌てているように聞こえる。私は髪ゴムをポケットから出し、髪を縛って見せた。少し呻いて、簪を私に挿す。
「明日からずっとつけといてください。
仕事中もです!」
「わ、わかった」
「少し、俺に付き合ってもらっていいですか?」
そう言い、ロクは歩き出すのでついて行く。
しばらく歩いているとロクが横を歩いていた私を制す。
「ロク?」
「カズハ様、引き返しましょう。」
そういうとロクは私の手を掴み、反対方向へ足早に歩く。しばらく歩き、路地裏に入る。そして静かに私を隠すように壁に覆い被さる。ロクは静かに深呼吸を繰り返している。緊迫しているのが嫌というほど感じる。数秒かもしれない。でも
かなり時間が経っているように感じる。私の頭は混乱でいっぱいになり目線を横に流す。するとロクの耳がピクッと動き、そしてため息をつき、私から離れる。私は緊張の糸が切れ、その場に座り込んでしまった。
「いきなりすみませんでした。大丈夫ですか?」
そう言って手を差し出す。私が手を取ると立たせてくれた。表に出て、観光の続きをしようとロクは言ったが、私はそんな気分ではなくなってしまったので、言葉を濁してしまった。ロクは
「ここで少し待っていてください」
と言って近くのお店に入って行ってしまった。
俺はカズハ様に断りを入れ、店に入る。ここは昔からある妖力を込めることができる簪。この街は人間を歓迎する。でも、他の街はそうとも限らない。いずれは国中に広がるだろう。
さっき感じた気配、あれは確かにこの街とは異なるものだった。考えたくはないが、万が一のためにカズハ様につけてもらおう。最後の切り札を使うかはカズハ様が決めることだ。俺は、菫色の蝶の飾りがついた簪を買った。何故か会計する時、店主が気色悪い笑みを浮かべていた。俺は店を出る前に仮面を浮かせて蝶の羽に唇を落とし、力を込める。
「お待たせしてすみません」
ロクは5分ほどで戻ってきた。手には簪が握られていた。
「ロク、それは?」
私は簪を指さす。飾りがとても綺麗だった。ロクは一瞬固まり、
「カズハ様は明日から、うちで仲居をするのですよ?失礼ですが、髪を留めるものは持っているんですか?」慌てているように聞こえる。私は髪ゴムをポケットから出し、髪を縛って見せた。少し呻いて、簪を私に挿す。
「明日からずっとつけといてください。
仕事中もです!」
「わ、わかった」
「少し、俺に付き合ってもらっていいですか?」
そう言い、ロクは歩き出すのでついて行く。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
薔薇と少年
白亜凛
キャラ文芸
路地裏のレストランバー『執事のシャルール』に、非日常の夜が訪れた。
夕べ、店の近くで男が刺されたという。
警察官が示すふたつのキーワードは、薔薇と少年。
常連客のなかにはその条件にマッチする少年も、夕べ薔薇を手にしていた女性もいる。
ふたりの常連客は事件と関係があるのだろうか。
アルバイトのアキラとバーのマスターの亮一のふたりは、心を揺らしながら店を開ける。
事件の全容が見えた時、日付が変わり、別の秘密が顔を出した。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
金沢ひがし茶屋街 雨天様のお茶屋敷
河野美姫
キャラ文芸
古都・金沢、加賀百万石の城下町のお茶屋街で巡り会う、不思議なご縁。
雨の神様がもてなす甘味処。
祖母を亡くしたばかりの大学生のひかりは、ひとりで金沢にある祖母の家を訪れ、祖母と何度も足を運んだひがし茶屋街で銀髪の青年と出会う。
彼は、このひがし茶屋街に棲む神様で、自身が守る屋敷にやって来た者たちの傷ついた心を癒やしているのだと言う。
心の拠り所を失くしたばかりのひかりは、意図せずにその屋敷で過ごすことになってしまいーー?
神様と双子の狐の神使、そしてひとりの女子大生が紡ぐ、ひと夏の優しい物語。
アルファポリス 2021/12/22~2022/1/21
※こちらの作品はノベマ!様・エブリスタ様でも公開中(完結済)です。
(2019年に書いた作品をブラッシュアップしています)
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
夕暮れカフェ◆ 公園通り恋物語◆
まゆら
キャラ文芸
桜ヶ丘公園通りで双子の姉妹夕陽と夕凪が営むカフェと下宿屋さざなみハイツの住人等、彼女たちを巡る人々の人間模様、恋模様。
可愛いもふもふ達も登場します!
のんびり、ゆったりとした物語。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる