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4話 観光

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宿屋を出る際、ナグモさんに会ったので観光してくると言った。そしたら楽しんでおいでと言ってくれた。外に出ると早朝とはまた違った景色があった。ロクに妖の街を案内してもらう。昨日行った飲食店の他に、珍しい材料で調合する薬屋、一つ一つの反物が美しい呉服店。いくつになっても心が躍る駄菓子屋のようなお店など。目移りするものばかりだ。
しばらく歩いているとロクが横を歩いていた私を制す。
「ロク?」
「カズハ様、引き返しましょう。」
そういうとロクは私の手を掴み、反対方向へ足早に歩く。しばらく歩き、路地裏に入る。そして静かに私を隠すように壁に覆い被さる。ロクは静かに深呼吸を繰り返している。緊迫しているのが嫌というほど感じる。数秒かもしれない。でも
かなり時間が経っているように感じる。私の頭は混乱でいっぱいになり目線を横に流す。するとロクの耳がピクッと動き、そしてため息をつき、私から離れる。私は緊張の糸が切れ、その場に座り込んでしまった。
「いきなりすみませんでした。大丈夫ですか?」
そう言って手を差し出す。私が手を取ると立たせてくれた。表に出て、観光の続きをしようとロクは言ったが、私はそんな気分ではなくなってしまったので、言葉を濁してしまった。ロクは
「ここで少し待っていてください」
と言って近くのお店に入って行ってしまった。

俺はカズハ様に断りを入れ、店に入る。ここは昔からある妖力を込めることができる簪。この街は人間を歓迎する。でも、他の街はそうとも限らない。いずれは国中に広がるだろう。
さっき感じた気配、あれは確かにこの街とは異なるものだった。考えたくはないが、万が一のためにカズハ様につけてもらおう。最後の切り札を使うかはカズハ様が決めることだ。俺は、菫色の蝶の飾りがついた簪を買った。何故か会計する時、店主が気色悪い笑みを浮かべていた。俺は店を出る前に仮面を浮かせて蝶の羽に唇を落とし、力を込める。
「お待たせしてすみません」

ロクは5分ほどで戻ってきた。手には簪が握られていた。
「ロク、それは?」
私は簪を指さす。飾りがとても綺麗だった。ロクは一瞬固まり、
「カズハ様は明日から、うちで仲居をするのですよ?失礼ですが、髪を留めるものは持っているんですか?」慌てているように聞こえる。私は髪ゴムをポケットから出し、髪を縛って見せた。少し呻いて、簪を私に挿す。
「明日からずっとつけといてください。
仕事中もです!」
「わ、わかった」
「少し、俺に付き合ってもらっていいですか?」
そう言い、ロクは歩き出すのでついて行く。

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