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如月 りん

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八章 崩れる日常

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次の週
いつもの時間に、琥珀の家に行く。今日は凛花さんがいないみたいで、琥珀が出てくれた。
「こんにちは、琥珀」
「今日もよろしくお願いします、綾音」
「凛花さん、どうしたの?」
「今日は、休みですよ。姪っ子さんが
熱を出してしまって、看病に行っているんです。」
「そうなんだ、なんか静かだね」
「そうですか?まぁ2人しかいませんし」
「それもそっか」
「なんか、顔赤くない?大丈夫?ちょっとごめんね。」
琥珀の額は熱かった。
「琥珀、やっぱり熱あるよ、今日は勉強なしで、ベットで休ん」
言い終わる前に琥珀がたおれてしまった。
「琥珀!琥珀!」
返事がない。とりあえず、琥珀の部屋のベットまで運び、近くのコンビニまで猛ダッシュで、冷却シートやレトルトのお粥など買って帰る。そして、結構前に凛花さんと連絡先を交換していたので、電話をかける。
「もしもし、凛花さん?実は、琥珀くんが熱を出してしまって」
「まぁ、琥珀様が!でも、ごめんなさい。こちらも、まだ帰れそうにないので。私が戻るまで看病お願いできますか?コンロや電子レンジなどの家電は使って構いませんので」
「わかりました。」
そう言い電話を切る。
琥珀の額に冷却シートを貼る。
「んっ」
小さくうめき、目を開ける

「気がついた?」
「俺の部屋?」
「そうだよ、琥珀倒れたの覚えてない?」
「覚えてない・・です」
「そっか・・私、
ゼリー買ってきたけど食べる?」
「今はいいです。」
「じゃあ冷蔵庫入れてくるね」
私は一階の冷蔵庫にゼリーを入れて戻る。部屋に戻りベットのそばに座ると、琥珀が抱きついてきた。
「琥珀?」
何も答えない
「大丈夫。私はここにいるよ」
頭を撫でながら言うと離れて横になる
ずっと両親と会えてないものね。寂しいよね。とりあえず水分と取らせる。少しずつだが飲んでくれた。
「お粥食べる?」
琥珀が頷くので、一階の電子レンジを拝借。
「たまご粥でよかった?」
器を渡すと不服そう。
「食べさせた方がいい?」
冗談で言ったつもりだが、琥珀は頷いた。風邪をひくと甘えるのは本当だな。
器を受け取り、スプーンで掬い冷まして、与える
「はい、あーん」
親鳥になった気分だ。
器を片付けに下に降りていくと外は暗くなっていた。凛花さんはまだ帰ってこない。どうしようか考えながら部屋に戻ると、琥珀が携帯にメールが入ったと言ってくれた。見ると凛花さんからで、まだ帰れそうにないので、泊まって行ってくれるかということだった。了解のメールをし、母に泊まることをメールで伝え、携帯を閉じる。
「私、今晩泊まっていくね、琥珀」
「わかりました」
「冷却シート貼り替えるね」
「ありがとうございます」
「琥珀、もう寝たら?」
「はい」
目を閉じしばらくすると寝息が聞こえてきた。電気を消す。暖房はついてるが夜中寒くないだろうか、些か不安に思いながらも、私も眠りに落ちる。翌日、目が覚めると、毛布がかけられていた。彼はまだ寝ているので、凛花さんだろうと思い、一階に降り凛花さんにお礼を言う。凛花さんに看病のお礼を言われ、これからは私が見ていますので、お帰りになられては?と言われ、ありがたく帰ることにした。
「琥珀、私帰るね。また明日」
「ありがとうございました」
会話を交わし、家を出る。
次の日いつもの時間に家を出る。
信号を渡っている時、目の前にトラックが現れ、次の瞬間私の目の前は一瞬真っ赤になりそして真っ暗になった。
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