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4章 ファイナルライブ

243話 一刻

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「茉里さん!」
反射で伸ばした手をとめる。
(確か、揺すったらダメなんだっけ)

肩を叩きながら呼びかける。
「茉里さん」
「う、・・・ん」
一応、反応はできているけどまずいことには変わりない。

タオルを畳んで枕がわりにして
ゆっくりと体を傾ける。
(冷やすのが一番なんだけど、 
何もないしな)

茉里さんの体は触ると熱を帯びている。

僕の体はもう汗は流れず触ると
ヒリヒリと痛む。
ドアは相変わらず閉まったまま。
第2にも行ってみたが何もない。
手も足も脱力感でおぼつかない。
シャツも重いし、スカートを仰いで
風を送ることすら億劫。

(あれから何分経った?
まだ昼休みかな)

体育館のホールを開ける音が聞こえた
気がした。安心と限界で倒れる。

目が回って、吐きそう。
「暑いなー。」
「がんばれ、日直」
「こんな暑さの中、体育なんて
死んじゃう」

楽しそうな声が大きくなり足音も
近づいて、鍵の開く音がした。
「さーて、ボールの籠を、え!?
女子!?何やってんの!!」
(よかった、気づいてくれた)

「ねぇ、奥にもう1人いる!
君、大丈夫?!」
「俺、先生呼んでくる!!」
肩を強く揺すられる。
余計気持ち悪くなるからやめてほしい。
目を閉じ、次に起きた時は白い天井
だった。

昼休み開始、直後。
「雪希、遅いね」
「特に連絡来てないな」
類はスマホを操作している。
生徒指導室には扇風機しかない。
窓に吊ってある風鈴も風がないから
音がなく気持ち的にも暑い。

「みんなで見るって決めたのに」
「まぁお弁当は食べちゃおうよ。」
「せっかく冷やし中華作ったのに」
私の文句に類は苦笑した。

スープポットにタレ、
1段目に麺、2段目に具材。荷物は
増えたが、仕方ない。

「蓮は?」
「知らない」
「ふーん」
スマホの連絡を横目で確認しながら
具を食べる。

冷やし中華を食べ終えると、
イヤホンをはめて音楽を流す。

1分くらい聞いてふと思い出した。
「ねぇ、類。そういえば楓さんから
何かあった?」
「え、いや、別に・・・あ、でも
お盆の時に手紙届いたよ」
「そっか」
(変に焦ってたのは別にいっか)

適当にスマホをいじり、昼休み終了が
近づく。
教室に戻ろうと席を立つと遠くから
救急車のサイレンが聞こえる。
(暑いから誰か熱中症で倒れたのかな)

と呑気に考えていると、その音は
どんどん近くなりすぐにピタッと
やんで、窓の外に救急車が見えた。

「え、うちの生徒!?」
類と顔を見合わせると今度は廊下が
騒がしい。
「2人とも、雪希が!茉里が!」
ドタバタと慌ただしく、乱暴にドアを
開けた蓮。

昇降口に行くと、もう救急車が出始める
ところだった。
「隣のクラスが5時間目体育で
授業前の準備で体育倉庫に行ったら
2人が倒れてたって」

さっきまで騒がしかったのがしんと
ミュートになったみたいに一瞬
聞こえなくなった。

またガヤガヤと少しずつ聞こえてきて
予鈴がなる。
誰か言ったわけじゃない。ほぼ同時に
各々次の授業を受ける場所に向かう。
授業中も心配でもちろん全て
聞き流していた。

放課後、3人で様子を見に行ったが
その間に目覚めることはなかった。

僕は目を開け、呆然とする頭で
思い出したのは
「っ、茉里さんは・・・」

重い体、時間をかけて首を動かすと
隣のベットに茉里さんがいた。
まだ目覚めていない。
それでも倉庫よりずっと顔色がいい。
(よかった)

看護師さんから運ばれて、丸一日
経っていると言われて驚いた。
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